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第13話(魔の根源)・2


「おい男。こんな島に住んでやがるのか? 奥に、何かあるのか?」


と、ガーベルと呼ばれた方の男が聞いた。


 レイは「別に」と どうでもいいような返事をする。


 そしてレイはズカズカと堂々。

 男達を無視して去ろうと進み出た。


 サリナが慌ててレイを追う。


 男達は「お」と一歩ずつ下がった。


 レイがサリナをも無視して歩き出した時。

 サリナが何かを思い出したように叫んだ。


「待って下さい! 思い出しました! ココの辺りって……天神様が住んでらっしゃる場所があるって、聞いた事があります! もしやココでは!? だとしたら……あなたが天神様ですか!? それとも関係者の方!? どちらでもいい、お願いです、その力で! 助けて下さい!」


 サリナがレイを制した。


 それを聞いて反応したのは男達の方だった。


「おい……聞いたか。この島に天神が?」


「ひょっとしたら。天神とやらを襲っちまえば、世界を手に できるとか??」


 ……。


 ……レイはピクリ、と反応する。


(天神様を襲う、だと……?)


 聞き捨てならない。

 レイの顔が強張る。


(バカ女め。話をややこしくしやがって)


と、舌打ちした。


 それを見た男の一人が、ニヤニヤしながらレイに言った。


「おい兄ちゃんよ。そうだなぁ、その女をこっちに渡せば、このまま俺らはココを出て行くぜ」


「俺は女とは関係無い。好きに すればいいが……信用できないな。お前ら、島で暴れるつもりなんじゃないか、どうせ」


 レイはケンカを売った。


 そして男達は それを買った。


「ひでえなぁ、信用してくれなくて。ホント、ひでえ、なあ!」


と、男がレイに向けて、大きな刀を振り落とす!


 しかしレイは軽く避けた。


「邪魔だ。下がっていろ」


 レイは仕方無く。

 サリナを横へと突き飛ばす。


(全く……成りゆきとはいえ面倒臭い。ココは一気に魔法でカタをつけるか)


と考えながら。


 レイは男達の攻撃をヒョイヒョイと避けていく。


 男達に隙ができた時。

 レイはドでかい魔法を使おうと手を男達の方に向けた。


 しかしレイは天神の神子の言葉を思い出したのだ。


『決して使わないように』……と。


「ちっ……!」


と、またもや舌打ち。


 と同時に。

 レイは見事なバック転で間合いをとった。


(でも、神子様。今使わないで、いつ使うんですか!)


と、心の中だけで叫ぶ。


 男達の攻撃が続いた。


 最初は軽く避けていたレイだが。

 魔力を使うか使わないかで迷っているうちに隙が できてきた。


 男達は段々とコンビプレーが慣れてきたようで。

 さらにレイを苦しめていった。


 そしてついに、男の投げた縄がレイの足をとらえ。


 レイは転んでしまう。


 そこをすかさず男2人は蹴りの嵐で……。


(神子様……! 天神様……!)


と、祈りながら体に くる衝撃に必死で堪える。


 やがて身がボロボロになったレイ。

 蹴りまくってスッキリした男達はサリナの手を掴み、


「行くぞ。天神退治だ。へへへ」


と森へ進んで行こうとしていた。


 レイは、必死で立ち上がろうと重い体を起こす。


 顔を上げると、男達の去り際。

 サリナは手を掴まれて引っ張って行かれようとしている。


「ハ……ルカ……」



 ……まただ。

 何故あの女がハルカに見えるんだ……。



 レイは目をこすり、


「待て!」


と叫んだ。


 男達が振り返る。

「ああ?」という顔つきでレイを見た。


「……そいつを置いていけ。この島から出るんだ!」


と……怒りの形相で睨みつけた。


「まだ懲りねえのか。生意気なツラしやがって」


と、男達は2人とも。


 一斉にレイに殴りかかろうとした。


 レイの鼓動が高くなる。


 そして体中の血が騒ぎ出す。


 次の瞬間、レイは無意識のうちに、



「“飛礫(つぶて)”!」



と唱えた。


 すると、川原の無数の小石が宙に浮き上がり。


 高速のスピードで男達に ぶつかっていった。


「ぎゃああ!」


「うわあああ!」


 石は、弾丸ほどの威力を発揮し男達の体を突き抜けた。


 あまりに数が多すぎたために体の肉が飛び散り……。

 2人は無残に撃ち抜かれて。


 千切れた肉片と共に そこら辺へと転がった。


「!」


 ……しかし その石は。

 男達だけでなくサリナの体も貫いてしまった。


 血が……飛び散った。


 レイはハッと我に返る。


「な……何だ……!? 今のこの……この力は……俺は いつの間に……」


 自分の両手を見る。

 汗でベットリとなった手の平を。


 サリナは……バタリと倒れる。

 貫かれたのは、2・3発。

 それでも致命傷である……。


 もう虫の息で あった。


 レイの見ている自分の手が、やがてガクガクと大きく震え出してきた。


「そんな……そんなバカな。いつの間に俺はこんな力を……技を!」


 最初小さかった震えは ひどく大げさに大きくなっていった。


 神子の言った言葉の意味――

 絶対に使うなと言ったのは。

 この技、この力で人を皆殺しにしてしまう可能性が あったからだというのか!?



「あ……天神の側近の方……」


と、うつ伏せに倒れ込んでいたサリナが言った。


 苦しそうにレイを呼んだ。


 レイは、呆然とサリナを見下ろすだけ。

 サリナはレイに何かを伝えようと必死に口をパクパクと動かしている。


「あなたの力は恐ろしい……助けてくれと頼んでおきながらだけ……ど……その……ち、ちから、は」


 片目を失い、もう片方の目でレイを見ていた。


「普通じゃない……もう2度と使わな……い……で……」


 石が貫いたため。

 左足と片腕と片目が千切れてしまっていた。

 出血が後から後からドクドクと止まらずに。


 もう助からないのは わかっていた。


「あたし……奴隷に なんてなりたく……な……かった……の……に……」


 サリナは目を閉じた……


 眠るように……静かに息を引き取った。


 2人の男の肉片がバラ撒かれ。

 一人の少女が息絶えたこの場所で一人。


 レイは衝動に かられた。


「うっ……があああああ!」


 頭を抱え、へたり込んだ。

 ガックリと膝をつき、下を見る。

 髪に付いていた男達の血がポタリポタリと地面に落ちた……。

 真っ赤に染まった石……。


(人を殺した……! 3人、も……!)


 半ば自暴自棄。

 レイは自分を何処までも責め続けた。


「俺の この力は……


 何 な ん だ ァァァッ!」


 ……


 黒い鳥が一斉に森から はばたく。


 天に向かって叫んだ救いの声は空中に響き。

 遠くまで駆け走った。




 ……その足で神殿へと帰ったレイ。

 神殿の前には神子が、待っていたかのように立っていた。


「神子様」


 ヨレヨレになった重い足取りで、神子の前に。


 神子の顔は無表情。


 固く厳しく重々しい いつもの顔が、今は やけに怖かった。


「神子様……俺……俺……」


と、今にも泣き出しそうな……絞り出した声を出した。


「力を使いましたね」


と、神子はピシャリと言った。


 レイは俯いた。


「そしてやはり、人間を殺してしまった……だから言ったのに。力は使うなと……レイ、お前のその力は『闇神』の力だ」


「『闇神』……?」


 真っ白な頭の中に、言葉がグルグルと回り出す。


「お前は精霊使い……七神のうち、闇の精霊を司る者。即ち闇神。産まれた時から、お前の体の中には鏡が埋め込まれているはずだ。昔、天神殿が埋め込ませ力を使えなくした。それなのに お前は闇の力を呼び戻してしまった……」


「何故……? 俺は そんなに、危険なのですか……?」


「ああ。七神の中でも一番危険な存在。闇、とは即ち“死”を招く。本当なら……その力には気が つかずに、一生を過ごして欲しかった」


 神子はレイの目の前に歩み出た。

 そしてレイの頬に触れた。


 レイの目から とめどなく涙が流れ出た。

 涙を流すのは……久しいと。


「俺は こんな力は要らない……人を殺す力なんて要らない」


と、その目で神子を見て、訴えた。


 運命。


 そんな言葉が、何処かで。


「俺は天神様を守る力が欲しかっただけ。それなのに、何故ですか。どうして こんな事態に」


 神子に しがみつくように。


 膝をついた。

 そして神子の両腕を掴む。

 汗が。

 怒りが。

 悲しさが。


 震える。



 怖、い。



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