第13話(魔の根源)・1
※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。
同意した上で お読みください。
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(『七神創話』第13話 PC版へ)
メノウちゃん、カイト、マフィア、セナ、鶲、そして私。
その場に居た6人は全員。
鶲の背後の神々しい光に驚いて目を伏せた。
一体、この光は何なのか。
人影があった。
レイ?
それとも。
……さくらとかいう手下の援護とか?
いや、鶲も驚いているみたいだし、違うだろう。
だとしたら一体……。
「天神の……付き人……天神の神子か!」
と、鶲が叫んだ。
天神!?
もしかして前。
目の泉で氷上さんが言っていた、あの……!?
確か、そのうち天神の使いが来るだろうって。
言っていた覚えがある。
それが この人なの!?
……とは言っても。
あまりに眩しくて見られないんですけれど。
「光り過ぎなんだよ、クソババァ」
と、鶲が悪態をついた。
……天神の神子って、高い身分では?
……それをクソババァって……。
鶲の愚痴を受け入れたかのように。
光は段々おさまり人の形が見えてきた。
姿を現す。
40〜50代くらいでカールがかった白髪。
何処か厳しさを持つ ふっくらとした女の人だ。
白い布を身に纏い、空に浮かんでいる。
見た目、普通のおばちゃんにも見える。
「初めまして救世主。風神、木神、水神 ……それから闇神の使いの者よ」
神子は奇妙な事を言った。
「あ、あの。闇神の使いの者……って?」
「僕の事だよ。救世主」
私の疑問に即座に鶲が答えた。
へ?
え? え?
……要領が よく わかんないんですけれど。
「レイが…… 闇 神 だ とでもいうのか!?」
セナが大きな声を出す。
……一番 反応を示したのはセナだ。
後のメンバーは、事の成りゆきを見守っている。
鶲をもう一度見ると。
彼は神子をうざったいように見た。
「バラしてくれてどうも。でも まあ いいけど。いつかバレるし。その力がレイの一生を台無しにしてくれたみたいなもんなんだけどね。それじゃあ神子サン、天神に言っといてよ。あなたがレイに闇神の鏡を転生してくれたおかげで、今のレイがありますよってね」
皮肉っぽく笑った。
「レイは最初、あんたらを信じてたのに」
少し、真剣な顔になった。
「裏切ったよね」
鶲……?
いつもと、雰囲気が違う。
レイの過去をベラベラと話し始めた。……
時は6年前に遡る。
レイが まだ12の時だ。
監獄を出所し、セナと別れた すぐ後の事。
レイは その足で、天神の居る神殿へと向かった。
神殿に行くのは、た易い事では ない。
数々の困難が あった。
まず、神殿の場所。
そして四神獣ほどではないにしろ。
世にも恐ろしい人獣魔物。
厚いベールにでも包まれたように深く濃い霧。
また、近づくにつれ気温の変化が著しく。
時には灼熱、時には冷凍世界。
まだまだあるが。
とりあえず普通の人間が行ける所では なかった。
レイには元々少し魔力が あった。
監獄に居て彼はコッソリと鍛錬を積んでいた。
その成果あって。
魔力は膨らみコントロールが可能になっていったのだった。
魔力を自由に使い。
何とか無事に神殿に辿り着く事が出来た。
辿り着いた神殿の周りだけが、それまでの地獄が嘘かのように楽園に思えた。
木々が生い茂り、小鳥が可愛らしく さえずっている。
ココだけが……楽園。
レイがココに来た理由。
――好奇心、そして決心。
天神という存在と魅力に、引力のように引っ張られた。
スケールの大きい事が大好きだった幼きレイ。
監獄に入所する前。
盗賊団のボスによく せかして教えてもらったのが“七神創話伝”だった。
レイは この話がとても大好きで。
そして自分も いつかは。
世界を創ったという天神に仕えて一生を過ごしてみたいと夢思うように なっていった。
その気持ちは、消えるどころか大きく膨らんでいく。
生まれながらに持つ、魔力と共に……。
神殿に辿り着いたレイをまず迎えたのは、天神の神子。
天神の付き人である神子はレイを受け入れた。
ただし天神と会う事は絶対に許されなかった。
レイは別に それでも よく。
……いつか、ココに居れば会えると、信じる事にした。
自分は天神に認めてもらえる日が やがて来る、と。
自信がタップリと あった。
過信。そうだろう。
レイは何も怖くは なかった。……
レイは持ち前の頭脳と力で。
神子から与えられた雑務を難なく こなしていく。
そして暇があれば、魔力を磨く。
力をつけていく。
自分を鍛える。
いつかきっと役に立たせる。
天神様をお助けする。
そう、純粋に信じて。
…………時は過ぎた。
ある日。
座禅を組み精神統一をはかるレイ。
自分は空気と一体だ、息つく音など聞こえない。
周りの音も耳に入って来ない……と。
気を集中させていた。
こうやって気をコントロールする。
……すると誰かが近づく気配が した。
天神の神子だった。
「その力は、決して使わないように」
と、変な事を。
「……わかりました」
レイは返事をした。
神子は それだけを言うと。
クルリと元来た方へ向き直り帰って行った。
それだけを言うために、わざわざ? と。
(きっと……むやみに使うなという意味だ。時と場所と、状況で使い分けろと仰っているんだろう……)
使わないのに、使えるように修行する。
おかしな話だったがレイは さほど気にしては いなかった。
(見てろ。コントロールできれば、問題は無い)
もうココに来て一年になる。
もうだいぶ力をコントロールできるようには なった。
ああ早く、天神様に会いたい。
会って……そして……。
自分も、天神と同じ高みの位置へ。
さて。
また数日後。
レイが仕事を終え。
空いた時間をまた修行のために使おうと神殿の前に広がる森へ行った時の事。
森の奥の水深浅い川の そばの川原で。
レイは顔を洗っていた。
すると川上から、パシャパシャと騒がしい音がした。
見ると誰かが こっちへ向かって駆けてくる。
時々転びそうに なりながら、慌てた様子で やって来た。
それは若い少女だった。
ボロボロに なった みすぼらしい衣服の。
川の中を走ったり、つまずきそうに なりながらも。
レイの元に辿り着いた。
「何だ どうした? 追われてるのか?」
と、レイは少女の肩を掴んだ。
少女はガックリと項垂れ、レイに もたれかかるようにして その場に へたり込んだ。
はあはあと息を切らし。
……レイを見上げた。
瞬間、レイは釘を刺されたかようにギクリとした。
少女の髪は金髪。
……なのは わかっている。
それより、それと……目が赤色の瞳。
似ている。
「ハル……」
「え?」
「いや、何でもない」
レイは視線を逸らした。
少女は気にせず、レイに しがみつく。
「あたし、男達に追われてるんです。奴隷船が難破して……あ、あたし、奴隷として他国に売られる所だったんです! 道中、嵐に遭って。生きて この島に漂着できたは いいけど、迷ってたら船の男達とバッタリ。あいつらも あたしと同じみたいで、漂着して……見つかって追いかけられてるんです! 戻ったら何されるか……あ、あたしを、助けて下さい、どうか!」
と、一気に事情を説明する少女の名は、サリナといった。
「……俺は他人なんかと付き合っている暇は無い」
レイは眉間に皺を寄せた。
迷惑だ、そのように。
「そ、そんな。お願いです! 助けて下さい!」
アレコレと粘るサリナ。
……やがてサリナの来た方向から。
ゴツイ男が2人近づいてきていた。
あっという間に追いつかれた。
「見つけたぞ」
「おいガーベル。奴隷なんだから、殺すな。大事な金ヅルだ」
2人の男がレイとサリナを挟みうちにした。
一人は縄を、もう一人は大きな刀を構えた。
見るからに悪人面の男達を見てレイは心中、
(醜い……)
と思った。
そして汚い。
この女もと。
サリナはレイに しがみついたままだった。
ガクガクと全身が震えている。




