第11話(人形の館)・1
※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。
同意した上で お読みください。
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(『七神創話』第11話 PC版へ)
「ったく。戻って来る……って言ったろ。何で俺の後 追って来たんだよ」
……だなんて。
絶対、セナは言うと思っていたのに。
セナは、私達が後を追っかけて来た事を責めなかった。
ただ、いつも通り愛想よくしているだけ。
セナは あの“時の門番”でレイの過去を見て。
何を思ったんだろう。
私には あれだけじゃ、ちっとも わからない。
ヒントと言えば? ……
レイはセナと別れた後。
天神という人の所へ行って、そこで仕えて?
……ある日誰かとケンカして出て行った……ような、それだけ。
セナに聞いてみたかった。
でも、聞けない。
だってこれは2人の問題だし。
……部外者の私が入っては いけないような、そんな気がした。
もちろんマフィアも。
特にマフィアったら、気が強いし結構ズベッと物を言うタイプだ。
きっと この事を言ったら。
即セナに尋ね倒すに違いない。
そんな事になって、もし万が一3人の関係を崩す事になってしまうのは嫌だ。
……まだまだこれから先、旅の道のりは遠いっていうんだからさ。
私は このまま黙っておこうと思う。
レイの過去もセナのそれも、私は何も見なかった。そういう事にする。
あの金髪の少女も……。
「あっ、見えたよ! あれがコンサイド大陸だ!」
「えっ!?」
ぼお〜っと、この客船のオープンテラスで。
ゆっくりと午後のひとときを楽しんでいた私達。
テーブルに突っ伏していた私をマフィアが揺さぶった。
マフィアの視線を追うと、確かに遠く うっすらと向こうに陸が見え出していた。
あれが私達の目的地、コンサイド大陸に違いない。
「……あのバルーン、何……?」
と、私がマフィアに尋ねる。
陸の上空にチラリと。
……ココの距離から計算しても。
とても大きいようなバルーンがフワフワと。
……空を泳いでいた。
風に、揺れている。
「百貨店だよ、お嬢ちゃん」
たまたま そばを通りがかった船員さんが教えてくれた。
どうやら積荷を運んでいる途中。
「港から出るとノジタ国っていってなぁ、大陸の3分の1をも占める王国……大国があるんだ。商業の盛んな所で、あのバルーンは国一番の百貨店『ル・アーゼ』の広告用バルーンだ。ま、お前さん方も武器防具を揃えるなら、試しに行ってみな」
へえー。百貨店かあ。
ココの世界にもあるのね。
日曜とか祝日になると混んじゃったりとか。
イベントがあると値段が安くなったりとか。
そういうのもあるのかな。
「ライホーン村の村長から もらった補助金もあるし。ちょっと行ってみるか?」
と、セナが言い出した。
もちろん、私もマフィアも賛成。
これからレイや その刺客達とも。
ビシバシ戦う事になるだろうしねー。
コンサイド大陸に第一歩を踏み出した。
思えば長い道のりだった。
“時の門番”からライホーン村へ帰って来て。
村長さんや村人達に別れの挨拶をした後、再び村を出た。
そして荷馬車に乗っけてもらいながら。
マイラ港町から大陸行きの定期船へ。
……結構な日にちが かかった。
船は やっとこさ次の目的地へ着く。
コンサイド大陸はラジェータ大陸の東南あたりにある。
何でも、温泉が湧いたために始め弱小だったノジタ村は。
稼ぎに稼いでノジタ国へと急成長したんだとか。
王様が城に住んでいて。
その王様は商業を大切にし国は大いに発展しているという。
チラホラとあった村や町を吸収して。
今や大陸の3分の1にも広がった。
……なんていう話を、港に居た洋服屋が話してくれた。
そこでも買い物をし、軽く食事をとりながら。
私達はノジタ国へ入った。
関所で簡単な身体検査をした後でね。
港も活気 溢れていたけれど。
こっちはもっと活気づいていた。
ちゃんと整備されたピンクの煉瓦道。
所どころ木とかが植えてある。
道の両端までズラリと店・店・店が並んでいる。
そして人・人・人だった。
進みたいのに。
なかなか滞っていて進めず。
私はマフィアを見失わないように しっかり後ろをついて行った。
こんな所で迷子になってたらシャレにならなーい。
数時間後。
せっかく……百貨店『ル・アーゼ』の前まで来たっていうのに。
私達は……そこへ入る気を失くす。
……だって。
比べられないほど。
ココもまた混みあっているんだもの……。
おばさん達の戦場の場だよ……。
「どーするぅ……? 何か、大変そうだよ」
と、私が困り果てる。
2人とも こりゃダメだ他を行こう、とお手上げ状態。
「はいはーい。押さないで下さーい」
ワイワイガヤガヤ。
「すみませーん。タオルとかって、何処に ありますかぁ?」
「これ、カード払いでお願いします」
「プレゼント用に包んで下さい」
ワイワイガヤガヤ。
「ただ今、全品5%引きでーす!」
ワイワイガヤガヤ。
「きゃ、買うわ買うわ。そのキナコ餅」
「このマフラーとの色違い ありませんこと?」
「サイズが合わないんですけどー」
ワイワイガヤガヤ。
「はーい。すみませーん! 押さないで押さないで! 順番にお願いしまーす!」
息が詰まりそうで苦しい感じだ。
店員さん達も頑張っているけれど、ありゃ相当キツイわな。
私達は『ル・アーゼ』を諦めて。
道中の店で欲しい物を買う事にした。
夕方近くなって道いっぱいに近いほどの人混みが、少し減ってきた。
私達はホッと胸を撫で下ろす。
とにかく、買い物 買い物。
「考えてたんだけど。武器いるか?」
セナが聞いた。
私はウーン、と腕を組んで考える。
マフィアが先に答えた。
「薬は十分にあるし。食料も水もちょっと買い足せば大丈夫……武器、か。私のムチはまだ新しいからいいし。セナは? いらないの?」
「俺は軽装主義だから。荷物もココ(縮小自在ポケット)に入れてるし。風の力で弓とか作れるし……必要ねえな、俺は。……じゃ、勇気は?」
私は まだウウーン、と唸っていた。
「武器、持ちたい、かな」
私もあんまり重いのは嫌だけど、と付け加えた。
「んじゃ、勇気の物 何か見に行こう」
そうして、私達は順調に買い物をこなして行った。
まさに こなす……そんな感じ。
買い物に費やす労力が通常より何倍にも感じた。
……行く前に、もう見るだけで疲れてくるな……。
んにゃ、まだ若いっ!
無理矢理テンションを上げた。
ある古い武器屋に入って。
私は女性用のアーミーナイフを買った。
柄に龍の絵が彫ってある。
これから青龍を相手にしていくんだもの。
ちょうどいいよね。
私はそのナイフをスカートと腰の間に挟んで。
上の服に隠れて見えないようにした。
いざっていう時のための武器。
料理にも使えるかもしれない。
んふふふふ。
買い物って楽しい。
買うつもりは無くても、見るだけでも結構楽しい。
変わった物が多いからなぁ。
……混んでなければもっといいんだけれどね。
「お嬢サン。風船ヲ、ドウゾ」
と、言われ振り返ると、ピエロが居て私に赤い風船をくれた。
「わあ、ありがとう」
私は大喜びで風船をもらう。
チラっと横を見ると、小さな古ぼけた造りの建物があった。
見た目、ドールハウスみたい。
木造りで、色んな柄が彫られている。
どうやら店のようだ。
入り口の上を見ると、『人形の館』としっかり書いてあった。
じゃあ、やっぱりドールハウスなのね。
って事はこのピエロさん、客寄せしてるんだ。
店の前で。
「面白そう。入ってみよっと!」
と私はセナとマフィアを呼び。
一足お先にそのドールハウスの中へ。
中には色んな西洋人形、日本人形?、からくり人形、くるみ割り人形。
……などなどが、並んでいた。
店内の照明が ちょっと暗めな具合がいい。
人形の存在感がアピールされている感じがする。
私は人形を見ながら、奥へ奥へと入って行った。
すると、行き止まりになってしまった。
行き止まりに、特別大きい人形が置いてあった。
「人形……?」
にしては……と。
私は目の前の人形に他とは別の、違和感を感じた。
椅子に座って、西洋風のドレスを着て。
白い大きな帽子を被っている。
そのせいで顔は下を向いてよく見えない。
手足はダランとしている。
黒い髪が少し長い。
赤い靴を履いている。
人形だと思ったけれど、よく見たら人間の子供じゃないのかなぁ……?
「どうした? 勇気」
と、セナとマフィアが後から来た。
「この人形だけ、まるで本物みたい。本当に作り物なのかな?」
と、私が指さす。
マフィアが近づいて行って、下から顔を覗き込んでみた。
「作り物……にしては、精巧に出来すぎてる。目の膜とかも。でも、死体ならこんな状態なわけがないわ。腐ってもいないし、臭いも無い。やっぱり人形よ、これ」
そう言いながら手を持って離すと、ブランと力無く下がった。
「脈も無ければ心臓も動いてないし。まばたき一つしていない。息もしてない。人間じゃないわ、完璧」
と、マフィアが その人形をくまなく調べ、結論を出した。
「そう……かぁ。じゃ、気のせいね」
私はポリポリと頭を掻く。
そうよね……こんな所で他の人形に紛れて。
死体なんて置いとくわけがない。
私の思い過ごしだったみたいね。
私達3人は店を出た。
私を先頭に、真っ先に店を出た。
すると。
誰かにドンと思いきり ぶつかってしまい。
後ろにスっ転んだ。
「大丈夫!? 勇気!」
マフィアが慌てて駆け寄る。
「だ、大丈夫。ちょっと腰打ったけど」
と私が腰をさすっていると。
腰にさしておいたはずのナイフが無くなっている事に気がついた。