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第7話(目の泉にて)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

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(『七神創話』第7話 PC版へ)




 一体誰なの!?

 私の後ろで私を押さえこんでいる奴……!


 なすすべもなく捕まったまま、少し時が経つ。


 さっきまで立ちこめていた白い煙が段々と薄くなって消えていった。

 すると村人たちの姿が見えてくる。


 セナも楓ちゃんも……皆 倒れて眠っていた。

 スモークで見えなかった……一体何、これは?


 私の口と手を押さえていた相手の手が緩んだ。


 振り返ってみる。


 そこに居たのは、黒い布を全身に纏った人。

 見える部分は、足の先と、顔の目の部分のみ。


「あ、あなたは……」


「何よ、まだわかんない?」


と、その人は纏っていた黒い布を脱いだ。


 意外な人物が現れた。



「マフィア!」



 指をさして叫んだ。

 口をあんぐりさせて、ギョッとして見る。


 紛れもない。

 ノイゼ村で別れた七神の一人、マフィア。

 その人だったのだ!


「な、何でココに……?」


「良かった、間に合って。今、皆には眠ってもらっているの。“雲雀(ひばり)”でね」


「“雲雀”……?」


「私の技の一つなの。一定時間、眠らすだけ」


 ああそうか。

 

 マフィアが……。

 セナの“鎌鼬(かまいたち)”みたいに、自分の技で助けてくれたんだ。

 それで私が一緒に眠ってしまわないように、私の口を塞いで……。


 なるほどね。

 マフィアは黒い布で顔半分を覆っていたし、眠らずに済んだわけか。

 いきなりで、びっくりしちゃった。


「あなたたちが行ってしまった後、ミキータやマザーが『行きなさい』って言ってくれたの。自分達で店は守れるからって……だから決心して、追いかけてきたんだけど……」


 ミキータやマザーが……。


「……これは一体、何事なの?」


と、マフィアは周囲を見渡して言った。


 セナや楓ちゃん、村人達が倒れている。


「たぶん……あのレイの側に居た、女の人の術か何かだと思う」


と、私はマフィアに事情を詳しく説明した。


 レイが来て、村人達を斬殺した事。

 できる限り詳しく。

 マフィアは、それを一つ一つ飲み込んでいった。


「なるほど……“邪尾刀”ね……。厄介な物を作り出したわね、奴ら。でも、どうして そんな刀で四神鏡の あるなしが わかるのかしら」


「さあ……そこまでは。とにかく、手当てで手も頭の中も いっぱい いっぱいだったし」


「ふーむ。さて、どうしたものか……」


とマフィアは懸命に考え込む。


 あのレイの側に居た女の人。


『今夜は月が綺麗よ、救世主』と言い残した。


 一体どういう意味だろうと思ってはいたけど、きっとこの事だったんだ。


 皆を操って、私を殺そうとして……たぶん、そういう事だ。


 あ、ちょっと待って?


『今夜は月が綺麗よ』……?


 そうよ、さっきは月が出ていなかった。


 月が出た途端に皆が変わっちゃったんだもの!


 という事は、月が出ていない間は大丈夫って事なんじゃ。


 今は月がキラキラと輝いて出ているけれど、皆は眠っている。

 マフィアの技の方が強力のようね。


「そうね……それしかないかも」


と、マフィアが一人で何事か呟いた。


「何?」


「“目の泉”へ行きましょう。あそこの水は、どんな病も たちまち治ると言われているの。病……とは少し違うかも、だけど。もしかしたら……」


「へえ、そうなんだ。ちょうどいいじゃん! 始めから そこに行くつもりだったんだから。さっそく行こうよ!」


「ええ……そうね。でも、本当に効くのかしら……ただの噂だし……。“雲雀”の効力は、あと24時間くらいだけど、きれた途端にまた、襲いかかってくるのかしら」


「いいじゃん、とにかく行こう! 何もしないよりは ずっといいよ。ダメだったらダメで、また その時に考えよ!」


と、脳天気な私を見てマフィアは少し笑っていた。呆れたように。


「これはカケね」


 マフィアはウィンクした。




 村人達をこのまま、ぬかるんだ地面の上に放ったらかしにするわけにもいかないので、とりあえず皆を元居た大きな建物へと運んだ。


 セナを寝かせた後、寝顔を見て呟いた。


「……行ってくるから。絶対助けてみせるから」


 ふいに涙が こみ上げてくるのを我慢して、その場から離れた。


 実はさっき、セナに首を絞められそうになった時。

 ……このまま死んでもいいかな、なんて一瞬思ったんだ。


 セナは優しいけど、もしかしたら厄介者だって思っているのかもしれない。

 足を引っ張るくらいなら いっそ……と思った。


 でも次に、セナが言った事を思い出した。

 この村の人達に捕まった時、牢屋で。


『俺らには する事があるんだ。どうしても俺らを処刑なんかするって言うんなら……俺は黙っちゃいねえぞ』


って。


 正真正銘、本気で言ってくれた。

 それが嬉しかった。


 する事……私が救世主かどうか、確かめる事。

 レイの野望を阻止する事。

 それが、私の今の する事なんだ。


 だから、こんな事で負けてらんない。

 私は進む人間になるんだ。


 決意新たに歩く足。


 迷いなんて無かった。





 目の泉まで徒歩だったが気持ちの焦りもあったし、だいぶ予想より早く着けた。


“無人の砂漠”を走り、途中 砂に足をとられながらも何とか走った。


 何か、走ってばっかり。

 でも、疲れなんて気にならなかった。

 だって事が事だから、さ。


「あれよ、勇気。光ってる」


とマフィアが指した方を見ると。


 こんな砂漠に ぽっかりと泉が あったのだ。


 下から水が湧き出ているんでしょうけど。


 ……にしたって、奇妙な光景ね。

 草とかは一本も生えていないのに。


 月の光に照らされて輝く泉。

 コレがマザーの言ってた“目の泉”だ。


「白虎が封印された……って、この底に沈んででもいるのかなぁ」


と、地に手をついて上から かがんで泉を見た。


 その時。


「!」


 水面には私の顔ではなく。

 全く違う、長い髪の女の人の顔が映った。


「お化けぇ!」


 私は驚き慌てふためいて、後ろ向きに這うように逃げた。


 するとどうだろう。

 泉の水面が輝き出し、ブクブクと音を立てた。


 そして私とマフィアが あんぐりとそれを見ていると。

 何と泉から さっき映っていた髪の長い女の人がユルリと出現したのだ。


 一体、どうやって立っているのか?


 ……いや、立っているって問題じゃない。

 人間の姿をしているけど、この人は幽霊だ。


 ……たぶん。


 美人で、長いストレートの髪が腰まであり、上で ちょこんと髪飾りをつけている。

 白い着物を着ている。

 肌は青白い。

 そして気の強そうな瞳で真っ直ぐ私を見た。


「救世主よ、初めまして」


と、口を開いた。


「ココに来た事を歓迎する。我が名は氷上(ひかみ)。500年前、白虎をココへ封印した者である」


「あなたが!」


 私は少し近づいてよく見た。


 確かに幽霊のようだけれど……。

 あまり怖くなくなった。

 だって私に はっきりと語りかけてるんだもの。

 その存在感は すごい。


「ココには元々、泉など無かった。私が封印した後、勝手に湧いた泉だ。……私がこの地を封印の場としたのは、人気(ひとけ)が少ないからだった」


 白虎を封印した500年前の救世主……か。


 私と同じように、違う世界から来たという事ね。

 もしかしたら、私と同じ世界から来た人なのかも。

 ひょっとしたら、私の世界の昔の人かなぁ?


 しかし私の疑問など よそに。

 氷上は淡々と語る口を止めなかった。


「見えないが、泉の奥底に石碑がある。ちょうど泉が隠しているから封印を解く法など簡単には わからないだろうが……今、四神獣の一つ、青龍を復活させようとしている者がいる。青龍の封印の場所は、ココよりずっと東のベルト大陸よりも もう少し東へ行った、小さな島だ。無人島で、霧が深く、入った者は2度と帰って来られないという」


 おおお……!

 何て親切な人!?

 大ヒントを教えてもらっちゃったぁ。


「その島の名前は?」


「名は無い。誰も普通の人間は行った事も無い。千年ほど前に私と同じように救世主が来て封印したはずだが。詳しい事は私は知らぬ。だが……あの方なら知っておられるはずだ」


「あの方?」


「この世界全体を管理している、天神(あまがみ)殿だ。私も あの方に聞いたのだ。救世主よ、七神を集めたら、天神の居る神殿へ赴け。そして青龍の封印方法を学び、実行せよ。今の お前の使命だ。いや……きっと、天神からの使いが そのうちやって来るはずだ。とにかく、今は七神を集める事。それが先決だ」


 七神……七人の精霊の神。


 セナとマフィアの他に、あと五人だ。


 それが世界の何処かに居る……。


「でも……私が七神の残り五人を捜すよりも先に、レイ……達が探している四神鏡を集めてしまったら……」


 青龍が復活。

 そしたら何が、どうなるの?


「……救世主。お前はまだ この世界の事が よくわかっていないらしいな」


「だってノーヒントで こっちの世界に来ちゃったし」


 ゲームじゃ、説明書やオープニングといった、ちゃんと先に筋書きがあったりするのに。


 何かこう、プロローグみたいなのがあってさぁ……。


 魔王の復活!

 この世は暗黒の世になってしまっていた。

 しかしその時、剣と盾を持った少年が魔王を倒すために立ち上がる!


 少年は父親の形見であるムーンストーンを持って冒険へ。

 ムーンストーンから産み出た妖精に導かれ、少年は仲間と共に大陸を……。


 ……おっと いけない。

 何か別のストーリーを作っちゃっていた。


 つまり。

 冒険には、ちゃんとした理由があるって事よ。


 この話の場合。

 魔王が復活して世の中が暗黒の世界になっちゃったから少年は勇者を目指して旅立つんだもんね。


 なのに私の場合は どうよ?

 いっきなり こっちに来てさぁ。

 七神だとか四神鏡だとか青龍だとか……。


 訳わかんないもん。

 まるで夢の中みたいじゃないの。


「ゲーム感覚でいてもらうのは困る」


と、氷上は変えない表情で また話し出した。


 結構しゃべるわね。

 幽霊もどきなのに。


「この世界は、お前の居た世界とは異なる、お前にとって『異世界』だ。いきなりで ついていけないかもしれないが、でも ココでも元の世界と同じ、人は傷つき、悲しみ、苦しんでいる。そして恐ろしいのが、四神獣……もとい『青龍の復活』なのだ」


「どうなるの?」


と、ゴクリと唾を飲み込む。


「青龍の復活の波動は、この世界全体を包み込み、おとなしい魔物は凶暴化し、人間の人格さえもそれに変えてしまう」


「え……?」


「青龍だけではない。四神獣の復活の際は皆そうなる。魔物も人間も互いを攻撃し合うようになり、死んでいった者達を喰い合い、結局 最後は世界上の者 全てが滅ぶ。四神獣の復活とは即ち、世界滅亡を意味する。それを阻止すべく復活の兆しが見えた時、救世主が呼ばれるのだ」





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