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◆七神創話【携帯版かも】  作者: あゆみかん熟もも


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第57話(接近戦)・1


※シリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。

 同意した上で お読みください。


※じっくり小説らしく味わいたいパソコン派な方はコチラ↓

http://ncode.syosetu.com/n9922c/57.html

(『七神創話』第57話 PC版へ)




 一人で食べるお弁当。


 誰も来ない授業参観。


 運動会、卒業式。


 ……話しかけられても無視されて。


 陰でクスクス笑われる。


 足を引っかけられた事もあった。


 転んだ事もあった。


 トイレに閉じ込められた事だって。


 その上から、水をかけられた事も。


 色んな事を思ったよ。


 死にたいとか、世界が滅べばいいとか。


 店にかまけて来られないお兄ちゃんなんて嫌いとか。


 ……お母さんと手を繋いで楽しそうに笑うあの子が羨ましくて。


 恨んだ事もあったと思う。


 そういう“裏”の部分は。


 いつも心の奥隅にしまい込まれていた。


“表”の“良い私”がいつも私を支配していた。


 どんなに苦しくても、人前では笑って。


 今わかったね。


 笑う数が増えるたび。


 奥隅の“裏の部分”が大きくなっていったって事。


 私は、無理をしていた。


 し過ぎてた。


 ……




 私は光頭刃を片手に、空へと舞い上がった。


 空は自由に自分の意思で飛べた。


 天神様がそうできるようにして下さったからだ。


 後は飛び上がる度胸。


 ……そんなもの。


 今さら気にもかけない。


 自分の目の前に居る、この置かれた自分の状況を思えば。


 たいして怖くもなかった。


 青龍。


 奴も空中を飛んでいる。


 ……くねりながら、止まる事はない。


 気流にでもなびいているのか。


 ちっともジッとしていなかった。


 私はまだ距離にして青龍から遠くに居るも。


 高さが大体同じ位置あたりまで浮く。


 するとだ。


 私の背後から、セナやマフィア達も浮き上がってきていた。


 さっきまで島の地面に足を着いていた訳だけれど。


 もう地面はない。


 重力は感じるから逆さまになってしまうなんて事はないのだけれど。


 少しでも気を緩めたら海に落ちてしまいそうな不安定感がある。


 空を飛ぶ、ってアレかなあ。気の持ちようなもの?


(『私』は……)


 離れていた青龍を遠目に見てはいるが。


『私』が小さくて表情までがとても見えない。


 とにかくあそこまで近づかなくちゃ。


 私は空の中を進んでいった。


 みるみる、『目標物』が近づいてきて。


 ……やがて、もう一人の『私』の姿が。


 ハッキリと確かめられる程度にまで近寄っていった。


 先行く私の背後から、セナ達も追いかけて。


 私一人だけが青龍の背まで進み。


 私は『私』と正面から向き合う形となった……。


 ……。


 暫く、見つめ合う。


 薄気味悪くて鳥肌が立ちそうだった。


 だって自分と全く姿形が同じといっていいほど。


 そっくりな人物が目の前に居るんだからさ。


「その武器で私を倒すの?」


「!」


 私の前に居る人物は、口を開いて何を言うのかと思えば。


 私が片手にぶらさげている光頭刃を指さした。


「……そう」


 私が頷き返すよりも早く。


 相手は先に受け入れてしまっていた。


 仕方なしにと冷えた目で私を見ている。


 私に少しだけれど動揺が走った。


 すぐにそれを振り払い、私は言った。


「青龍を倒すのを邪魔するのなら、私があなたを倒すわ」


 剣の先を相手に向けて言った。


 迷ってはいけないと何度でも繰り返す。


「そうね……」


『私』はそう言うと。


 両手を自分の前に出した。


 ……何か落ちてくるものを受け取ろうという仕草で。


 大きく息を吸っている。


 そうすると光に包まれた細長い物が。


 突き出した両の手の上に浮かんできていた。


 あれは……。


「剣……」


 それは光頭刃じゃない。


 ただの、細長い、剣と思わしき形だけの物だった。


 柄があり鍔があり。


 光輝いているけれど剣先までしっかりと伸びている。


 刃渡り50センチはあるのだろうか。


『私』は片手にそれを持つ。


「その神の何とやらをこれで果たして受け止められるのかしらね……まっ、試してみるけど?」


と、『私』は冗談っぽく笑っていた。


 私より目が吊り上がって見えるのだけれど。


 気のせいかなあ?


 ……なんちゃって。


「勇気。青龍の事は俺らに任しとけ。……お前はあいつを、頼む」


 セナが言っていた。


 私は後ろを振り向かず。


 唾を飲み込みながらコクリと頷いた。


 わかっている。


 セナ達には、『私』を相手に戦うなんてきっとしづらい。


 ……ううん、できないって事。


 あれだけ私にそっくりだからね。


 戦うのは私だけで充分だ。


 私は不死身の体だし。


『私』も、青龍の背から独立して。


 私と空中で向き合った。


 ……青龍は、周りでうねりながら泳いでいる。


 無関心を装いながらか、近く遠くと。


「来なさいよ」


 私から(けしか)けた。


 私は剣を横に高く持って、目線を刃に合わせる。


「それじゃ」


『私』も、ゆっくりと時間をかけて黄金に光る剣を横に持った。


 そして一回だけ。


 ピョンと軽くジャンプしたかと思ったらだ。


 タタタタタッ。


 まるで地面がそこにあるかのように。


 素早く速球に走ってやって来た―― そして!


 キインッ!


 金属と金属のぶつかり合う音。


 間一髪というか。


 私はあっという間に接近されたのを。


 何とか剣で受け止める。


 クロスになった私と『私』のお互いの剣。


 ……相手はグイグイ押しつけてきていた。


「なあに? びっくりした顔しちゃって。来いっていうから来てやったのに」


 にいっと余裕で口元が笑っていた。


 私はといえば押さえつけられて必死だった。


「くっ……!」


 全身の体重をかけて私の上に乗っかっているみたいで、重い。


 剣がもしや折れやしないわよねと心配になってくる。


 でも私の剣は神の剣で、最強なはずだ。


 ……折れてたまるかと信じている。


「まさかまだこれが遊び(ゲーム)だなんて思ってないでしょうね? ここまで来といて。甘えっ子の勇気ちゃん?」


 私の顔に顔を近づけて私を挑発している。


 歯を食いしばって耐えている私に対し。


 息一つも乱れていないさまが憎らしいったらない。


「キレてくんないかなぁ……いつかみたいに無意識に暴れまくってさ。でないと手ごたえなさそうでちっとも面白くないんだけどお……」


と、『私』は……横目で青龍の方を見て何かを考えていた。




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