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第49話(最後の七神)・4


 夜になって。


 私以外の皆は布団の上に並んで雑魚寝だった。


 私は眠れなくて。


 起きて外へと出かける。


 昔から眠れない夜はよく散歩していた。


 成長してもこれはずっと変わらないのかなあ私。


 建物を出て。


 少しの気分だけで一方向を目指した……。


「ん?」


 海の方へ向かって真っ直ぐ。


 それから、波打ち際に沿って歩いていたらだ。


 崖の方で騒がしい音が聞こえてきた。


 ドカン、ドカンと。


 何だろうと思ってそちらへ。


 ジャングルみたいになった森林を通って。


 奥にある崖のそばへと近づいていった。


 崖の下には、見覚えのある人物が。


 ゲインだった。


 鎧も他に防具もつけてなくて。


 剣だけが傍らに置いてあった。


 本人は何してるのかと言うと。


 大きな岩を見つけてしがみつき。


 持ち上げて砕いたりしている。


 ひょっとして。


「修行してるの? ゲイン。こんな所で」


 私が声をかけるとゲインはすぐに気がついてくれた。


「よう」


 汗を拭きながら休憩に入ったみたいだった。


「まあ座れよ」


 崖にもたれて。


 私とゲインは並んで座った。


 ゲインは話をするのが好きで楽しいらしく。


 ネタがいっぱいで尽きない。


 島で獲れた魚とか。


 天候のせいで遭難した事とか。


 何とリカルさんとの馴れ初め話まで。


 リカルさんとは、ココの崖で出会ったんだそうだ。


 崖の下で足をくじいて動けなくなっていたリカルさんを。


 家までおんぶして送っていったのがキッカケ。


 次の日から。


 ゲインがココでよく修行をしているとリカルさんが現れて。


 そのままトントン拍子に結婚までいっちゃったんだそうだ。


 いいなあ、2人を見ていると幸せ全開オーラが眩しすぎるよ。


 もうっ。


 そんな事を思っていた訳だけれど。


 ふと疑問が沸き起こった。


 今後の事。


 ゲインは、どうするのだろうか……。


「ゲイン。ゲインは、これからどうするの? リカルさんを置いて、私達と……行くの?」


 嫌な役目だなあと知りながらも。


 聞かなくちゃダメだった。


 とても大事な事だから。


 ゲインはしばらく無言だった。


 その間、砂ボコリをたてた風がサッと私の横を吹き抜ける。


 居心地の悪さを取っ払いたかった。


 ゲインに動きがあった。


 自分の胸元から、一枚の紙切れを取り出し。


 私に渡した。


「……?」


 奇妙で。


 ずっとだんまりなゲインに これまでとは違う感を感じた。


 私は渡された紙切れを広げてみて。


 あ、と声に漏らした。


 内容が――。



『 ―― 第四章“十二神鏡”――


 精霊の力をもって生まれし人間

 即ち七人は

 必ず鏡を持って

 転生す


 これを七神鏡と呼び

 四神獣封印の際

 用ゐる


 救世主

 七神の力を集め

 一枚の鏡を造る


 吸収した鏡

 救世主とともに

 四神獣を満たす道具となる


 さて

 四神獣も

 一つずつ鏡を持つ


 其の鏡

 自らで水に溶け

 風に さらされ

 土に腐り

 火で燃えたり


 つまりは

 人間の体内に侵入し

 元の形を築き始め

 一枚の鏡と成る


 よって

 四枚の鏡

 存在す


 四枚で力は最大となりて

 四神獣の体を復活させる力と成りたり


 なほ、其の鏡を所有する者の体

 寿命 尽きるまで死することなく


 永遠の力

 手に入れたるが鏡

 失えば即死す


 合はせて

 十二神鏡である 』



 ……


 こんな。

 これは。


“七神創話伝”だ!


 私は紙切れを持つ手をブルブルと震わせて。


 ゲインを大きく見開いた目で見た。


 ゲインは少し眉尻を下げながら。


 ちゃんと説明してくれた。


「俺が七神の一人である事は、ばあちゃんから教えてもらった。それで、ばあちゃんからそれを聞いて書きとめて、大事にココにしまっておいたんだ。肌身離さず――」


と、ゲインは自分の胸元を叩いてみせた。


「いつ救世主が来ても、俺が七神だと証明できるように。力を貸せるように。俺はあんたらが来るのをずっと……待っていた」


 月に照らされたゲインの青光る顔は。


 純真だと思った。


 嘘偽りのない、本当の――意志。


 それが固く。


 根づいているんだ。


 曲がらない、一貫した信念なんだろう……。


 話は続いた。


「その語りを見る限り、この世界を救う救世主は俺達七神の……それぞれが持つ『鏡』が必要となってくるんじゃないか、と思われる。いや、まだわからないが……俺の鏡は今、手元にはなくて隠してあるが、それを持ってあんたらと一緒に四神獣の復活を防ぐために行かねばならない……覚悟の上だ。もちろん、リカルを連れてはいけない、置いていく。何より……」


 少し言いにくそうに頭を掻いた。


 照れている?


「もし生きて帰ってきた時に……帰って来れる場所がほしい」


 それで話は終わりになった。


 ゲイン……。


 私は胸が(ほの)かに熱くなる。


 自分や……セナの事を思った。


 セナの帰って来る場所。


 もし、もし私がそれならば――と。


 セナや皆に、安らぎを与える存在になりたいと。


 それが、私の願いになる。



 ……願いよ、叶えて……



 両の手を組み合わせた時。


 右手にはめていた指輪が。


 突然赤く光り出した。


「!」


「何だ!?」


 そして大きな地面からの叫び……地響きが発生する。


 ゴゴゴゴゴ、と。


「きゃあ!」


「動かずジッとしてるんだ!」


 ゲインに言われ。


 うずくまって時がすぎるのを待った。


 とても長い時間。


 地震は、そのうちに治まってくれた。


 同時に赤い光も。


「何だったの、今の……」


 わからない。


 でも。


 すごく……嫌な予感がしてそれは取り巻き。


 私を決して離さなかった。


 大地が揺れ動き出す。


 ……まさか青龍?



 まるでそれは脈動のように。



《第50話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 ゲインは違う名前でした。3段階を経て今の名前に。そしておっさん。平均年齢上がりますなぁ。はっはっはっ。


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)↓

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-116.html

 そして出来ましたらパソコンの方は以下のランキング「投票」をポチッとして頂けますと こんがりハートフルジャパン。


 ありがとうございました。



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