第48話(ミルカ村騒動)・3
私は先を行こうとするカイトの後に続こうと。
走り出そうとした。
その時だ。
「待てぃやあああああ……」
汚い声がした。
倒れたはずのおじいさんだった。
猫背になって立ち上がっていたものの。
左右に体を揺らしている。
両肩を盛り上げて。
関節に折った先の両手の平はダラリと重力のかかる方に向けて。
酔っ払いみたいだ。
いや。
ゾンビかもしれない?
とにかく、気持ちが悪かった。
「お、おじいさん?」
その目は死んでいる。
「げひいい……」
人間じゃなかった。
「血を……血をくれええ……赤い、赤い……」
数歩私とカイトは引き下がる。
途端にだ。
おじいさんはピタリと動作を停止した。
「お前さん、はよう逃げなせえ……この村は皆、血に飢えておる……獣」
え?
「“小波”!」
カイトの一声でまた先ほどと同じ攻撃がおじいさんに向けられる。
ドカドカと水の塊を受けたおじいさんは。
倒れてまたまた動かなくなった。
「キリがない。行くぞ、勇気!」
「う、うん……」
今度こそ、走り出した。
おじいさんが後々どうなったか、もう知らない。
走りながら。
おじいさんの言った事が頭の中をグルグル回る。
獣、と。
(“七神創話伝”にもあった……獣。けもの――)
忘れそうで忘れていなかった単語。
妙に頭に引っかかる。
人間と成ることのできなかった者、存在す。
これが獣なり――
四神獣。
彼らが、そう――。
でも、どうして?
胸を。
胸を締めつける。
人ではないと、もしも言われて――。
「あれは……マフィア達だ!」
カイトの大声に顔を上げた。
カイトの肩越しに走っていた前を見るとだ。
「勇気ー!」
「救世主!」
家屋や枯れ木などに挟まれた土の地面を並んで駆けて来る。
先頭にはマフィア、と。
それから。
意外だった人物がいた。
意外すぎて信じられなかった。
私の事を救世主と呼んだ人物……達。
2人の女の子だ。
「ア……」
そう。
いつか、私が自分の世界へ帰った時に。
お世話になった、アジャラとパパラ!
「アジャラ! パパラ!」
私は足の速度を上げて。
やっと合流する。
しばらくゼーゼーと息を整える事に必死だったりする。
ヒザに手をつきながら。
「ど、どうして……」
アジャラ。
肩で切り揃えられた真っ直ぐな髪。
白い七分袖シャツを上に着て。
サスペンダーを付けた短いズボンを履いている少年風だが。
可愛く年の近い女の子だ。
手には変なデザインの杖。
パパラの方は、金髪に近い毛質のパーマ髪で。
スポーツウェアみたいな服を着ている。
ショルダーのバッグを肩からいつも。
……提げているのかな。
タレた目で、軽いノリで関西弁を話した。
同じく年は近いだろうと思う。
2人とも、天神様の使いだ。
私がこっちの世界に帰って来る時に協力してくれたんだった。
「ご報告に参りました。無事でよかったです」
「ほんまやでー。間に合って何より。今、村のモンは皆。催眠波で眠ってもろてんねん。用心のためやけどな。はよこの村出るでえ。吸血人間の巣くう村」
!
私は、最後のパパラが言った事に敏感になった。
吸血……人間。
「この村の人達が……?」
パパラの顔を見る。
パパラは当然、といった顔をしていた。
「そやで。一部じゃ有名や。実際何人も血を抜かれ発見された旅人がいたりすんねん。血を欲して止まない体質を持った、可哀想な集団や。それも運命。しゃーないんやけどな」
さっきのおじいさんを思い出された。
『はよう逃げなせえ……この村は皆、血に飢えておる……獣』と。
本性を現しながら、理性は残っていたのかそう告げて。
普通の人間じゃない体とまともな人間である頭を抱えていた。
彼らが獣だと。
人に成りきれなかったなら、別物だと……?
考えると、切ない。
おじいさんは……生きているのだろうか。
攻撃してしまったけれど。
「報告って?」
私は気を取り直して聞いた。
今度はアジャラが答える。
「落ち着いて聞いて下さい」
ゆっくりと、私に言った。
「南ラシーヌ国が壊滅致しました」
――!
私は青ざめた。
めまいが、全身を襲う。
「大丈夫、勇気」
ヒナタが呼びかける。
しかし声は遠くだ。
聞き取りにくくなっていきそうだった。
アジャラは続ける。
「炎神……ハルカの手によってです。数は大国で初の時よりも減っていたとはいえ、お見事ともいうべき有様でした。戦火恐ろしく、言葉には言い表せません。それより――」
緊迫感が漂い。
誰も何も口にする事を拒まれた今。
事実の報告は。
あまりにも残忍でどうしようもない。
「これで2つ目の四神鏡を手中に収めたハルカは、あと2枚を躍起になってさらにまた探し出そうと奔走するでしょう……闇神の代わりに。そう、闇神はもうすぐに」
闇神とは、レイの事だ……彼が何?
「レイは じきに、復活するでしょう」
空気が張りつめる。
ピンと張った、氷のようだ。
軽く突いただけでヒビを作ってしまいそうな。
脆くも怖い緊張が走る。
全員が、固唾を呑んだ。
《第49話へ続く》
【あとがき(PC版より)】
カイトって賢かったんだよね。忘れてた(汗)。
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