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第42話(真黒の村)・3


 沈黙。


 光に照らされた顔と。


 背後で炎の揺らめきに添って動く女性の大きくなった影。


 私はゴクリと息を呑んだ。


 すると、女性は突如 笑顔に なった。


 んん!?


「初めまして。私、ソピアっていうの。よろしくね!」


と、私にオイデ オイデと手招きした。


「まあ こっちに来なさいな。何も取って食おうなんてしないんだからさ。あれっ、ひょっとして濡れてるの? ははあ、さては さっきの音! 湖に落ちたんでしょ!」


と、言われ。


 私は ひとまず隣へと腰かけた。


 ソピアと名乗った女性の口は、まだまだ止まらず。


「ごめんなさいねえ。ココには何にも なくて。火も起こせやしないのよ。灯り程度しかね。ま、あったかいから大丈夫よね。ところで あなた見かけない顔。名前は? ココへは どうして?」


 明るい顔で、ニコニコと笑う。


 私は頬を掻きながらも答えを探した。


「ええと、私は松波 勇気で……実は、コレコレシカジカ」


 そうしたら。


 急に声を張り上げ興奮し出した彼女。


 ソピアさん。


「救世主!? あの千年に一度やって来るっていう!?」


 私をジイッと見つめた。て、照れる。


「えっ、じゃあ今! 七神 捜し やってるってわけなんだ! わああっ、勇気ちゃん、すごい! あなたが あの伝説の救世主だなんてっ! 感謝 感激アメアラレよね! うわあ、どうしよう!? サインちょうだい! ああ でも、書くものが ないわ! 何て事なのぉ〜!」


 ソピアさんは……立ってチョコマカと動き回り。


 ガッデム! と頭を抱え。


 キラン! っと目を光らせ。


 ガシッ! っと私の手を両手で掴んだ。


 動作の多い人だった。


 落ち着かないかなあ……。


「せめて……せめて握手だけでも……!」


と、息を荒げて握った手をブルブルと震わせている。


 私は勢いに圧倒されて「はいィィィィッ!」と。


 言いながら顔が青ざめていた。


 掴んでいた手をいったん離すと、今度は握手へと切り替える。


 しっかりと手を握られ。


 ブンブンと上下に振られて私は頭がクラクラと めまいを起こしそうだった。


「くうぅ……! 涙が出るゼ……!」とソピアさんは言って、やっと手を離してくれた。


「ありがとう。ごめんね、あまりの嬉しさで、つい……ね。くふ……うふふふふ」


 私は少し背筋に冷たいものが通った。


 隣に居るのは危険なんじゃないだろうか。


 アニメショップに通いつめる ちょっとオタクな人とかと同じ電波を感じる。


 気のせいなんだろうか。


「ふう。怖がらせちゃって ごめんなさいね。私、すぐ熱くなっちゃうから……村の子と小さい頃、オニゴッコとか するじゃない? 私がオニに なると、皆 嫌な顔するのよね。で、やっぱり違う遊びしようって事に なったりで。かくれんぼ、高オニ、色オニ、警ドロ、ポコペン、田んぼ、あやとり、折り紙、ケンケンパ、縄跳び、ゴム跳び、だるまさんが転んだ、花いちもんめ、かごめかごめ、ドッチボール、トランプ、カルタ、花札、ドンジャラ、五目並べ……えーっと えーっと……」


「いや、もう それ以上は」


「そう、そうね。とまあ、違う遊びしてもよ? 私がオニに なったり順番が回ってきたりすると、何故か その場の空気が変わったりするのよね。何故かしら……って考えてみると」


 ソピアさんは腕を組みつつ難しそうな顔をしていた。


「たぶん、私が あまりにも真剣に なりすぎるんじゃないかと……」


 まだ難しい顔をしている。


「そんなに?」


 私が聞くと。


 はあ〜……と深あーく ため息をついた。


「色々と思い出すわ。オニに なって、追いかけるじゃない? 追いかけられた子で泣き出す子が居たしね……それに縄跳びなんて夜まで延々と跳び続けたわ。最高 記録、前跳びで2万3692回……でも あれは長老が止めたからよね。本当は もっと伸びたはず」


 ……すごい。


「折り紙は紙が もうボロボロに なったっけね。ドッチボールはケガ人が出るし。カルタも。警ドロでも、お前は警察官に向いている、って大人に褒められたっけ……って、あれ? 何の話をしてたっけ?」


「すぐ熱くなっちゃうって話じゃなかったっけ」


「そうそう。そうなのよ」


 しかし まあ、居る居る。

 そういう人も。

 周りとの温度差が激しい人。


 運動会とか、イベントもので結構 居そう。


 あんまり熱すぎると、周りの人は かえって困ったり……ね。


 ……でも。今の話を想像してみると、笑える。


 追いかけられた子の気持ち。


 怖かったんだろうなあ……。


 物すごい形相でオニが追いかけてきたらと思うと。


 それに、ボロボロに なった折り紙も かわいそう。


 いや、そこまで遊んでくれて折り紙としての使命を果たせたんだから いいのかな?


「それにしても旅か……いいねえ」


と、フッ……と顔を曇らせたソピアさん。


 私は やっとこさ聞きたい事を聞いた。


「どうして、あなたは こんな所に居るの?」


 ソピアさんの豪速球のような話で聞けなかった質問を今やっと。


 はあ。


 ……でも。


 ソピアさんは相変わらず下を向いたまま。


 あれれ?


 元気は何処へ行ってしまったんだろうか……?


 私が出方を待っていると。


 やがて顔を上げて口を開いた。


「お願い、勇気さん……ヒナタを」


「え!?」


 思いも よらない人物の名前が出て驚く。


 ソピアさんは私の手を また強く握って懇願した。


「ヒナタを……ヒナタを救って!」




 容赦なく熱を放射して燃える太陽。


 日の光に焼けつく乾いた地面。


 ココだけ、亜空間なんじゃないかって思ってしまう とても不気味で異質的世界。


 その存在。


 イルサ民族 廃村。


 すっかり廃墟と化した村の外れに。


 手入れの ない風化されつつある崩れかけた茶色い土造りの家が ある。


 外壁に、くっきりと残された人と木の影。


 影の通りに細い木が かつて そこに立っていて。


 そばで誰かが立っていたんだろう……。


 影の ついた壁の下に、供えられたばかりの花束と。


 一人の少年が居る――


 少年……ヒナタが屈み込み。


 手を合わせていた。


 彼は毎日ココに来て、こうやって拝んでいるのだ。


 そう……自分の母親を。


「その影が あなたの お母さん?」


 ヒナタはハッとして振り返った。


 居たのは、私達。


 私、セナ、マフィア、カイトとメノウちゃんに、蛍と紫くん。


 ヒナタは私達が近づいていた事に全く気がつかず。


 ずっと屈んで熱心に前しか見ていなかったみたいだった。


 朝に村で見送ったはずの私達。


 ――救世主一行を見て、少し安堵して返事をした。


「……そうだ」


 ヒナタは視線を落とし。


 壁の方を向いた……悲しそうに。



「行きましょう。私達と一緒に」



 私は一歩前に出て、片手を出して誘う。


「何故……?」


 当然の如く そう聞いてくるヒナタ。


 でも振り返ったりしなかった。


 私は ひと呼吸だけ置いて、再度 語りかける。



「だって あなたは光神だから」




《第43話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 ポコペンで相手をつつき過ぎるというのは どうでしょう。よい刺激に……(無理?)


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)↓

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-107.html

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 ありがとう ございました。



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