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第42話(真黒の村)・2


 私達がヒナタの家に泊まる代わりに村長の家でヒナタは泊まる事にして。


 同じく木造りの、よく似た構造のヒナタの家の一階で。


 私達は床に並び、毛布だけを借りて雑魚寝する事に した。


 寒くはないし、これで充分。


 荷物を室内の端に固めて置き。


 私の横にマフィア、蛍、メノウちゃんと女子グループ。


 少し離れて男子グループだ。


 それぞれ分かれて休んでいた。


 寝る前に、これからの事を相談している。


「……で、どうする?」


と、まず話を切り出してきたのはセナ。


 床に うつ伏せに転がってヒジをつきながら。


「どうするも こうするも。明日、村を出て行くしかないんだぜ。たった一晩で光神だの何だのって、謎が解けると思うか?」


「そんな事 言ったってさカイト。別に私達は謎を解きに来たわけじゃないんだから。光神さえ見つかればいいのよ……ノーヒントだけど」


「ねえ、マフィア」


と、私はツンツンとマフィアの肩を突いた。


「なあに勇気」


「ずっと引っかかってたんだけど……その、災いの時。ヒナタ……は、イルサの村に居た、のよね?」


 それを言うと、起き上がったカイトがポンとヒザに手を打った。


「そう。それだよ。何で あいつだけ無事だったんだ。その場に居たんなら、奴も影だけに なって消失するはずだろ?」


 カイトの その ひと言で、皆が騒ぐ。


「それが無事って事は……」


「何? あの子が今回に関係してるって事なの?」


「でも。ヒナタは その時の記憶を失くしてるって。聞いてもムダなんじゃない?」


 マフィアに そう答えると。


 皆 行き詰ってしまったようで、急に静かに なった。


 (らち)が明かないからとセナが締めくくる。


「お手上げだな。カイトの言うように、一晩じゃ何も できやしない。とりあえず、朝にココを出よう。で、イルサの村に もう一度 行くか……それとも、他の村に行くか、だな。周辺には まだ、ええと……トリ村かカイ村だか、あったしな」


 旅の疲れも あって皆はグッスリと後、寝入ってしまった。


 時々、イビキも聞こえてくる。


 寝言も。


 皆は相当お疲れみたいだった。


 私も そう。

 そのはずだ。


 なのに……。


 おかしい。


 砂漠を ずうっと歩いてきて。


 ヘトヘトな はずだったのにだ!


 何故だか目をつぶっていても。


 一向に眠れない私だった。


 試しに目を開けてみた。


 パッチリと。


 まあ美しいクリアな視界。


 はあぁ……この分じゃ。


 朝、寝不足なんだろうな……ぐっすん。


(ん……?)


 ……ふと。


 外に気配を感じた。


 ココの壁は薄いからだろう。


 微かだけど、誰かが外を歩いているような気配を感じた。


 寝ている皆を起こさないようにして。


 私は起きてソッと小窓に寄る。


 外を覗き込んだ。


 誰かは暗くて わからないけれど。


 確かに何者かが村の奥へ奥へと移動していた。


(村の人……? ひょっとしてヒナタさん?)


 私は とにかく、後をついて行ってみる事に した。


 どうせ眠れないしと。


 家を出て、人影を追った。


 もう何処かへと消えてしまっていて。


 私は見失った方角へと突き進んでいった。


 辺りは真っ暗に ほぼ近く。


 家の明かりが点いている所は一つも なかった。


 村の奥へ。


 村長の話だと、奥には湖が あるって言ってなかったっけかな……。


 そのうち、岩がゴロゴロと転がっている所へと出た。


 もっと進むと、岩山が そびえ立つ。


 湿気を含んだ空気のニオイが する。


 もしかして この向こうが。


「あ……」


 岩山と岩山の隙間から顔を覗き込ませる。


 見えたのは湖だった。

 やはり。


「うわあ……大きな湖! これかあ……」


 どうにか岩山の小さな所を見つけて。


 手をかけ足をかけ飛び越えて。


 湖の ほとりへと近づく事が できた。


 ふう。


 風がヒンヤリと、汗を乾かしながら吹いてくれている。


 雲や月を映す水面。


 キラキラと、遠く水平では光り輝いて。


 とってもロマンチックだった。


「あ、あれ? あんなとこに穴が……」


 水平線を目で辿っていくと、やがて洞窟らしきものを発見した。


 ココからなら岩の上を右回りに水際に沿って行けば、辿り着けそうだった。


 さらに私はピンと一つ思い出す。


「あそこに祠が あるんじゃない!?」


と。


 村長の話を記憶の底から掘り起こしたのだった。


 張り切って さっそく私は向かう。


 大きな岩が連なったり積まれている地面を転ばないように気をつけながら。


 足場を確認しながらだ。


 しかぁーし。


 もう あと わずか、という所でだ。


 ツル! っと足を滑らせて。


 ドボン! っと派手に湖へと落ちてしまったのだった。


 しかも。


 足が つかないと きた!


(……グガボボォゴボッ……)


 一瞬パニックに陥りかけたけれど。


 ゴンと手に硬いものが触れて。


 それが岩だと わかった途端に急いで掴んで這い上がる事が できた。


 無我夢中だった。


 はあはあと。


 少し飲みかけた水を吐き硬い地面の上で空気を吸う。


 呼吸を取り戻し。


 さっき自分が落ちた後ろの水面を見た。


 ……あれ?


 ココ、階段に なってる?


 地面は削られて整えられた石造りの階段に なっている。


 それが水の中にまで続いているみたいだった。


 つまり、階段の下部が湖に沈んでいると……はあ。


 なるほど。


 私が掴んだのは階段だったのね。


 もし落ちた所が悪かったら。


 石に ぶつけて割れていたかも頭。

 危ない危ない。


 階段の先に続いているのが例の洞窟だ。

 何とか辿り着けたわね。


 私は びしょ濡れに なった服を一回 脱いでから。


 ぎゅうっと絞った後に再び着た。


 帰ってから着替えて乾かそうっと。


 今は我慢しておいて。


 せっかく来たんだから ひと目 祠を拝んで帰ろうと思った。


 人が2・3人は一緒に入れそうな大きさの洞窟に入る。


 すぐに行き止まりだった……けれど。


 そこには祠なんて なかったのだ。


「あっ……?」


 代わりに『居た』のは、人間だった。


 予想外の展開に戸惑う。


 居たのは女性。


 目を閉じて正座だ。


 黒髪の長髪で、長い まつ毛。


 日本人形みたいで端整な顔立ちだ。


 巫女みたいな格好をし、背筋が伸びて姿勢が いい。


 女性の たもとには手の平に のるくらいの大きさでロウソクの灯りが点いて置いてある。


 時折 炎は揺らめきながらも消えずに女性の姿を照らし続けていた。


 ゆっくりと、目を開ける……。



 私は緊張して近寄れず身が固まったままだった。




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