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◆七神創話【携帯版かも】  作者: あゆみかん熟もも


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第40話(血戦の終結とその後・壱)・3


 私は何も言えなくなった。


 ……怖い。


 そう思った時だった。


 ヒョイと私を抱っこして抱え上げ。


 階段を上って行くではないか。


 えええっ!?


「なっ……何すんのよ! おろしてよ!」


 私は真っ赤な顔をしてジタバタと暴れた。


「ジッとしてろ!」


 セナは怒鳴ると、無言で階段を上って行く。


 表情を見ると、何処か遠くを見ているような目。


 私は もう逆らわず、ただセナに運ばれて行くだけだった。


 着実に、上から見下ろす景色が遠くなってくる。


 マフィア達の姿も もう、判別が困難だ。


 離れて行った先には、私達が3日かけて横切ってきた砂漠が見渡せ広がっている。


 何て高い所まで上って来たんだろうと思った。


 南ラシーヌの城も見える。


 ポツポツと村や街も。


 今居る場所からでも充分に風景を見て楽しめそうなんだけれどなあ。


 息が苦しくなってきたのは気のせいなんだろうか。


 セナは疲れてないのかな……?


 セナに抱っこされている おかげで色んな事を考えてしまうんだけれど。


 あれ?


 セナの腕って こんなに太かったっけ……?


 私は、セナの腕に注目してみた。


 今まで何度かセナに抱きかかえられた事が あったけれど。


 その時に比べて、だ。


 細い事は細い腕なんだけれど随分と筋肉が ついた気がする。


 ……あ、そっか。


 やっと わかった。


 バイトの成果だ!

 セナが合間に ちょこちょこ やっていたバイト!


 バイト……って、確か工事関係だったわけよね?


 完璧 肉体労働じゃないかああ!


 そうか……それで こんなに体力が あるんだわ。

 そりゃ男だし、体力は元々ある方だとは思っていたけれど。


 一週間か そこらの期間の働き詰めのバイトで。


 さらに体力と筋肉が ついたのね!


 うっわー、面白ーい!

 たくましーい!


 私は吹き出しそうになるのを堪えながら。

 セナの腕をツンツンと つついてみた。


「? 何だ?」


 私に好き放題に思われているのも全く知らず。


 セナは呼ばれたと思って私を見た。


「え? ううん。何でも なあい」


と、しきりにニヤニヤしている私の顔を見て不思議がっている。


 セナには悪いけれど。


 おかげで悩みが どっかに行っちゃったわ!


 うふふふふ。




 私という お荷物を抱え どれくらい時間が経過しただろう。


 まだ着かないのかなあなんてノンキに考えていた私。


 すると ずっと黙っていたセナが話しかけてきた。


「お前さあ」


「え?」


 表情からは何も読みとれない。


 でも何故か少し緊張して手に力が入った。


「俺が居なくなったら……どうする」


「え……」


 嫌な感覚が襲った。


 一瞬の事だったかもしれない。


 私は自分の心臓の大きな音を聞いた。


 どうして突然、そんな事を聞くんだろうか。


「どうする……って? そんな事 聞かれても」


「だからまあ、もしも だよ。そんなに深く考えなくてもいい」


「そりゃまあ……嫌だけど……でも……」


 セナとの会話を続けていくうち。


 言葉の先が見えなくて どうしようという焦りが生まれた。


 ハッキリ返事が できない。


「俺ナシでマフィア達と一緒に、レイを倒しに行ったり青龍を封印しに行ったりとか、できるか?」


 そんな事を言う。


「それは無理でしょ? 『七神創話伝』でも七神は、救世主と共に行かなくちゃいけないような事を言っていたじゃない」


「それは そうだけど、だから……もしもだよ。もし俺が七神の一人じゃなくて普通の人間だったとしたら……勇気は、一人で やっていけるのかって。そういう事」


 ……?


 よく、わからない。


「セナが普通の人間だったら……? そりゃ、一人で頑張るわよ。早く七神を揃えて……」


と、答えてみるけれど。


「口で言うだけなら簡単だけどな。でも実際は違う」


 そんな風に返されてしまった。


 ……。


 セナは言った途端、険しい顔に なった、また。


 そして私は何も言えなくなる。


 繰り返しだね。


 何だか。


 セナは少し ため息をついて続けた。


「例えば、この階段」


「階段?」


 私と話しながらも。


 セナが休む事なく一段ずつ上っていく階段だ。


 時々折り返すだけで、常に上へと伸びる階段。


 先は霧……雲の中で。


 階段が壁伝いで ある景色は どれだけ行っても変わらない。


「この階段の先にレイが待ち構えていたとしたら、どうする?」


 私は素っ頓狂な声を上げた。


「ええ!? レイが!?」


「だから例えば だって。例えば、この道のりがレイに辿り着くまでの障害や困難だったとしたら。お前は さっきみたいに相談も なしに勝手に決めて引き返したりすんのか?」


「……」


「ちょっと つまずいたり疲れただけで止めちまうような、そんな生易しい旅は してないだろ、俺達は」


「……うん……」


「疲れたり悩んだり、しんどい思いをしてるのは勇気だけじゃないんだ。マフィアだって、ああ見えて重い体 引きずってんだぜ。カイトだって、俺らの知らない所で魔法の特訓したり人形 売ったりして稼いだりしてるし、メノウも旅の疲れ隠して無理してる。蛍や紫だって、レイに負い目を感じて苦しんでる。皆、辛いけど頑張ってるんだ」


「……」


「もちろん、勇気も頑張ってるよな。お前は お前なりに気を遣って。だから自分で やろうとするんだろう。


 ――でも、わかってほしい。誰に迷惑が とかは、あまり考えるな。迷惑なんて誰でも かかるに決まってる。じゃあ どうすれば最小限の迷惑で済ませられるのか――俺達に相談なり なんなりすればいいんだ。一人で落ち込まず、前向きに考えてくれ」


 ……。


 ……そっか。


 私、自分の事しか結局 考えてなかったんだ。


 何でも かんでも自分だけで決めちゃって。


 この階段だって最初に見た時。


 いきなり走り出さないでマフィア達に相談すれば よかったんだ。


 それから、自分の体力の事をもっと考えるべきだった。


 早く気が ついてセナにも ちゃんと言ってみれば よかったんだ。……


 セナの言うように……自分一人で考えていたってダメなんだ。


 一人で悩むより……誰かに聞いてみてからに すればいいんだよね。


 私の周りには、セナ達 皆が居てくれるんだしさ。


 それに もっと周りの人達の事を考えてみたりしなくちゃ。


 マフィア達や蛍達……皆が それぞれ辛い思いをしてるんだって事。


 あまり考えた事が なかった。


 セナに だって、ヤキモチみたいなの やいちゃったりして。


 急に怒ったり落ち込んだりして。


 ……辛いのは、セナに だってあるのに。


 レイの事、ハルカさんの事。


 ……私の知らない事でも、悩んでいるのかもしれない。


 勝手に行動して皆に心配や面倒かけてばっかりで。


 でも後からグチグチ悩んでいたりしてさ。

 なんて進歩が ないんだろうか。


 私、子供だ。

 子供なんだ。

 今ようやくハッキリわかった。


 どれだけ背伸びしても。


 大人には、なれない……なれないんだよ。


 人の手を借りるしか ないんだ。……


「ごめんなさい……」


 私は顔を埋めるようにして、泣きそうに謝った。


 泣く?


 ううん、泣いてたまるもんですか。


 だって私は これから すっごい怖い青龍に向かって行くんだから!


 救世主、なんだから!


 セナの言う通り、前向きに頑張ろう!


 ピタ。


「ん?」


 セナの足が止まる。


 私は埋めていた顔を上げる。


 セナは前方、そして地面の一点を見ている。


 どうやら次の階段への折り返し地点なんだけれど。


 少し場が開けた所に出るみたいだ。


「どうしたの、セ……」


 肩に手をついたまま、体をセナの視線の先へ。


 そこには。



「魔法陣だ……」




《第41話へ続く》





【あとがき(PC版より)】

 セナの抱っこに慣れたか勇気。いいなぁ軽くて(そっちかい 笑)。


 ご感想やご意見など お待ちしています。


※本作はブログでも一部だけですが宣伝用に公開しております(挿絵入り)。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-104.html

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