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第4話(旅立ちて)・2

「マフィア……お店は? 今時分、混んでるんじゃ?」


「ハアハア……勇気。店の中から……あなたたちの姿を見て……ハア……追いかけたの。昼食 食べて行くんだと思っていたわ。黙って行かないでよねっ」


「ご、ごめん。忙しいだろうと思って。一応、マザーに言ってからは出たんだけど……」


「それより、これ!」


と、マフィアは手で持っていた小さな可愛らしい女の子の人形を私に渡した。


「これは……?」


「これ、小さい頃にマザーが私に くれたものなの」


「そんな大事なものを!?」


躊躇(ちゅうちょ)すると、マフィアは首を振った。


「私は小さい頃、よく あの森で迷子になった。その度にマザーは大慌てで私を捜してくれたの。そんな時、この人形を くれた。私を悪い奴や深い闇から守ってくれますようにって」


「マフィア……」


「私はもう、十分守ってもらったわ。だから今度は、あなたたちの番よ。受け取って。そして、これを見て私を思い出して」


 マフィアの目に、少しキラッと光るものが あった。


 それを見てしまって、私はマフィアの手を握りしめてウンウンと頷いた。


「行ってくるね。頑張ってくる。また、会おうね。六人揃えたら、また来るから……」


「うん。気をつけて! セナも、しっかりねっ!」


と私は去りながら手を振り続けた。

 マフィアも、振り続けていた。


 感動の別れだった。


「臭えー奴ら……」


とセナは ため息を一つ。


 それから。

 地図を広げ、現在地を確認するセナが「あっ」と自分の頭を叩いた。


「えっ!? 何っ!?」


「こいつぁしまった。目の泉は村の反対側の出口から出ないと行けねぇ」



 ……この後、スゴスゴとマフィアの元へUターンしたのは、言うまでもない。





 村を出て、テクテクと歩き続けた。


 一本道が ずーっと地平線まで続く。

 奥にはポツポツと建物が見えた。


 道の側には雑草がポツリポツリと あるのみ。

 とにかくなーんにも無かった。


 歩いても歩いても道は途切れない。


 ……少し疲れてきた。


「ふう……少し疲れたな。昼飯にするか」


というセナの提案に、即座に賛成した。


 昼食といっても軽いもの。


 携帯パンと、マフィアが いれてくれた紅茶。


 パンには たっぷりバターが塗られ、今まで食べた事のない甘みと、少し辛味もあった。


 美味しかった。

 紅茶に よく合う。


 パンは一つが手の平サイズ。

 袋に いっぱい詰め込んであり、計10個ほどあった。


 荷物は全部セナが所有している。


 前にも言ったけど 左腕のヒジ上に(いつも付けている所が違うけど)付けた腕輪は、縮小自在ポケットだ。


 何でも入る。


 どんな大きいものでも。


 しかし一応、30品までと決まっているらしい……。


 一体どういう構造なんだか。



 そして昼食を終えた後、また歩き始めた。


 テクテクテク。


 こりゃあ結構キツイな……。


 しかも2人とも無言だから、余計にそう感じるのかも。


 私はセナと会話を し始めた。


「前々から聞こうと思っていたんだけど」


「何?」


「セナの旅の目的って、何?」


 するとセナは少し驚いた風に顔を つくったが、やがてポツリと呟くように言った。


「……人を捜しているんだ」


「人……?」


 旅の目的が、人捜し?

 一体何故にっ!?


 ……興味が沸いた。


「誰を? セナの彼女? なんつって」


と、冗談で言ったが、何だかセナはノッてくれない。

 あくまでも冷静で、無表情。


「……さあね」


と、少し口元でフッと笑った。


 何それ、どういう意味!?

 図星だったの!?


 気になる気になる。

 ぶ〜〜〜……。


「勇気の居た世界って、どんな世界なんだ?」


と、セナは急に話題を変えた。


 ごまかさないでよ、って言いそうなのを堪えた。


 だって、きっと話したくない理由があるだろうから。

 無理には、聞かない方がいい。


 少し、寂しいけどさ。

 まあいいや。


 気を取り直して、私は はしゃぎ出した。


「うーんとねぇ……どうしよう、何から話そうかな……」


 私は、学校の事を中心に話し出した。


 まず学校というものの説明と、友達の事、先生の事、授業の事……。


 課外授業の内容も色々話した。


 お寺に遊びに行って蜂に追いかけられたA君の事。


 その他……うーん、ノリノリで歌うY君やUちゃんの事とか。


 理科の実験で顔に火がついたM君とか。


 水道のとこでノート落としてべチャべチャのグチャグチャにしたIさんとか。


 体育祭の横断幕を作るのに燃えていたKさんとAさんコンビとか。


 顔が丸くて有名なN君とか……。


 はは、何か人の事ばかり。


 そう思って、自分の体験談も色々と話す。

 でも、やっぱり失敗談が多いんだよね、圧倒的に。


 小学校の頃、キレて椅子持って暴れまわった事とか。


 裏山のガケから滑っておりようとして つまずいてゴロゴロと転がっちゃったりとか。


 横断歩道を飛び出そうとして友達に手を引っ張られたおかげで危うく車に轢かれる所を助けてもらったりとか。


 男子と教室で野球をしていて先生に怒られたりとか。


 ただ単にハデに こけたりとか。


 ……ああ、何か悲しくなってきた。


 自分で自分を恥で追い詰めてるよな、これって。

 ははは……。


 でも、セナは笑いながら話を聞いてくれていた。


 話している時、俺も似たような事があったーって言ってくれた。


 思いっっきり人を追い抜かした後、目の前で滑って転んじゃったりとかね。


 笑いは絶えなかった。

 ずっと笑っていた。


 しかし、気がつくと。


 村が もう そこに見えていた。




 村の入り口に一人の おばあさんが立っていた。

 こっちを見て、話しかけて来た。


「お前さん方、旅の人かね?」


 口をモゴモゴとさせ、しわがれた声で そう言ったので、私は「はい」と返事をした。


「疲れたじゃろうて。あの泉の水は疲れに効くと言うよ。飲んでみなさい……」


 振り返ると、確かにポツンと小さな泉が。

 草木が少し繁り、真ん中に。


「本当だ。透き通っていて、綺麗ね」


と、そこの泉の水を手で すくう。


 そして、口にした。

 すっごく美味しいっ!


「へえ。どれどれ……」


とセナも飲む。


 2人して、のどの渇きを潤した。


 すると突然背後から大きな叫び声が。



「おい! お前ら……!」



と同時に、金物が地面に落ちる音がした。


 空の両手鍋のフタがコロコロと転がって私の足元まで来た。


 格好からして村人A。

 少しハゲた、おっさんだった。


「その水を無断で飲んだなっ!?」


と、血相変えて私たちに詰め寄る。


 私たちが曖昧な表情を浮かべると、村人Aは他の村人たちを すぐに呼んできた。


 静かだった空気は一変し、話し声で いっぱいになって。

 村人たちが大騒ぎする中、私とセナは顔を見合わせる。


 何が何やら わからない……。

 一体、この水が何だっていうわけ?


 すると そのうち、村の長らしき人が私たちの前に歩み出た。

 声を張り上げ、


「あんたら、大変な事をしてくれたな!」


と怒り出した。


 私達が びっくりして何か言おうとする前に。

 村人たちが私たちの手を捕まえ、後ろにやった。


 何っ!? これぇ!?


「何するのよ!」


と私が怒ると。

 村長? は、あれよあれよという間に村人たちを従えて、私たちを何処かの家へ連れて行った。


 そして長い地下への階段を下りた後、私たちを牢屋に放りこんだ。


「何でよぉっ!? ここから出してっ!」


 牢屋には、ごっつい鍵が かけられた。


 鉄格子をつかみ、訴える。

 村人を2・3人後ろに率いて、村長は威厳のある声で叫ぶ。


「お前らの処分は、おって報告する! 以上!」


 そして足早にサッサと何処かへ行ってしまった。


 後に残された私とセナ。

 ただただ、唖然としていただけだった。




《第5話へ続く》





【あとがき(PC版より)】


 やっぱ、制服でしょう! ラクだし(笑)。

 昔に書いたノートを見て現代に直しながら書いているわけですが、

「ルーズソックス」と書いてあるのを見た瞬間。

「……今は?」と……


 ……ものすごく不安になりました……。


 ま、まだいいか。ルー君、死んでない(たぶん)という事で。

 きっと。うん。大丈夫大丈夫。


※ブログでも途中まで公開しております(挿絵入り)。

 パソコンじゃないと読みにくいかもしれませんが、

 よければこちらも……。

 http://ayumanjyuu.blog116.fc2.com/blog-entry-36.html

 お手数ですが、コピペして お進み下さい。

※パソコンの方、よろしければ以下の「投票」をポチッとお願いします。


 ありがとうございました。



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