第1話(新天地)・1
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※本作はシリアスあり、コメディー要素ありとなっていますが作品中、今後の経過により残酷な描写があるかもしれません。
同意した上で お読みください。
この世に四神獣蘇るとき
千年に一度 救世主ここに来たれり
――『七神創話伝 第一の章』より――
……
……
……暗闇の中で音がする。
何の音かはわからない。
いや、ココが何処なのかさえわからない。
……でも、確かに音が聞こえる。
ポタッ……ポタッ……水音のような音だ。
一体ココは何処で。
私は何をしているんだったっけなあ……?
……
……
試しに一歩、一歩と歩いてみる。
不思議だな……足音もしないなんて。
というか……まるで。
地に足がついていないような感覚がするんだよね。
ポチャン。
音がした方へ振り返る。
……何かが飛び込んだ音……?
そのうちに、私は堪らなくなって叫びたくなる。
……あー! もう!
何なのよ!?
この異空間はー!?
そんな風に。
……
「あれは……」
ハッと、目を凝らして向こうを見る。
ココから30メートルくらい行った所に。
『何か』が居る事に気がついた。
最初、ウヨウヨっとしたものが動いているように見えたのに。
段々と『それ』は姿を現してきて。
ハッキリと見えてくる。
それは。
その正体は。
「りゅ、りゅ、りゅ、……」
私は口の形を『りゅ』の形にしたまま。
その場で凍りついてしまった。
そう、目の前にいるのはまさしく『龍』そのものだったんだもの!
巨大で、長い体に規則正しくウロコが並んでいる。
タテガミが美しくユラユラと揺れていて。
突き出ている角が鋭い。
そして何より。
こっちを睨んでいるかのようなギョロギョロとした目が……。
こ、怖い……。
「……は! いかん、早く逃げなきゃ食べられる!?」
と。
私はまるで鬼ごっこで逃げる子どものように。
クルリと背を向けてバタバタと逃げ走り出してみた。
……が、行けども行けども。
その場から一歩も進む事はなかった。
えええ!?
「な、な、何でええー!?」
どうなっているんだ!? と。
半狂乱で叫びながら。
手を平泳ぎのように懸命にかく。
凄くブザマな姿だわ……とほほ。
15分経過したくらいで。
頑張った私はハアハアと息をつき。
とうとう諦めてしまった。
そしてこの目の前の龍に喰われる覚悟をした。
胸前で十字を描いてみる。
アーメン……。
覚悟を決めたので。
もう一度この龍を正面からマジマジと見つめてみた。
さっきは、いきなりで怖そうに思えたけれど。
落ち着いてよく見ると。
穏やかで優しそうな瞳をしている……。
それから今になって気がついたけれど。
体が全体、青色だ。
青龍なんだ。
光沢が、キラッ、キラッと光っている。
「綺麗……」
思わずウットリとしてしまった。
その時。
私は突如、誰かにドンッ! と。
背中を押された。
何とか踏みとどまってサッと振り返る。
「お、お兄ちゃん……?」
私の背中を押したのは。
10歳違いの兄だった。
背は高めで。
いつもの格好であるクリーム色のトレーナーにジーパン。
黒の運動靴で、腰には白いエプロン。
右手にオタマ、左手に菜箸を握っている。
実は、事故で死んだ両親の跡を継ぎ。
兄はひとりで自営のラーメン屋をしているんだ。
私も手伝おうかと言った事があるんだけれど。
「邪魔だ」と邪険に払われてしまったという。
兄は私に普通の中学生でいてほしいのだろう。
いつもそう。
こっちが言っても。
何でもひとりでやっちゃうんだから……。
……。
……で。
その兄に背中を押された私は、兄を見た。
しかし兄は何も言ってはくれなかった。
どうしてココに居るの? と聞こうとしたが。
やめた。
だって何で私がココにいるのかさえわかってないんだものね。
「お兄ちゃん……?」
と、再度呼びかけた時。
なんと、お兄ちゃんが持っていたオタマで襲いかかって来た!
ふりかかってきたオタマを。
私は間一髪でサッと横に避ける。
一体何だ何だともう一度お兄ちゃんを見ると。
いつの間にか死んだはずのお父さんとお母さんまでその隣に居るではないか!
あと、学校の友達や先生も……。
皆、大きな定規やらトンカチやら包丁やらロープやらと。
凶器を持っている。
視線は私を捉えながらだ。
「ちょ、ちょっと。嘘でしょ」
と、後ずさり。
けれど後ろには青龍が居るわけだし。
後ろに行ったって無駄だって事はわかリきっている。
でもどっちかというと。
……こっちの皆の方がコワイ、か、も……?
逃げよう!
――思いたった私は横へ逃げようとした……ら。
誰かに、ぶつかってしまった。
イタタと顔を手で押さえながら。
ぶつかったその人の顔を見上げた途端。
突き飛ばされた。
全てが一瞬の事だったので、訳がわからなくなった。
混乱する。
背中もしくは頭が地面にぶつかる、と思ったのに。
変な事に着くはずの地面がなくなって。
……消えて。
……私はまるで『穴』の中へと、落ちて行った……。