衝突コース(コリジョンコース)
AIウメチルの言葉をカタカナ縛りから変更、分かりやすいように『』で囲みます。
与圧エリアで船外スーツを脱ぎ、急いでブリッジへ戻ってきたアレイ、ウェアは既にサブ操縦席に座り前方を見ていたが、アレイの入室に気づくと声をかけてくる。
「おう」
「状況は?」
無重力で浮いた状態からメイン操縦席に座りつつ、ウェアに状況を聞くアレイ
アレイが座ると同時に操縦席後方の通路部分が自動で閉じ、360度モニター表示の一部と化した。
「ウメチル、状況報告」
ウェアがウメチルに向かって状況報告を求める。
『船首前方、左舷10時、垂直9時半の方向より高速で接近する物体有り』
『光学、レーダー類の分析結果、80パーセントの確立で当船体との衝突コース』
『相対距離300万キロ、相対速度10万キロ、直径1.5キロメートル、人工的な物質は観測されず』
『ツセキ恒星系方向から飛来した小惑星と推定』
「ウメチル、回避プランを思考」
と報告を聞いたアレイが次の指示を発した。
『1.当船体のエンジン噴射で進路変更回避 2.レーザーでの当該目標破壊 3.フィールド展開、但し3の成功率は90パーセントと推定』
「フィールド展開はちょいとリスクが高いか、どうするアレイ?」
「ウメチル、左舷アクティブレーザー2番まで準備、ジェネレーター出力10パーセントまで上昇」
『了解』
左舷の船体外部隔壁がふたつ開くとレーザーの砲門が船体外部隔壁からそのまま現れた。
アクティブレーザーという名前だけあって、砲門自体が動かなくてもレーザーが発射される方向は自由なのである。
一方、船体内部のジェネレーターブロックではジェネレーター本体がまばゆい光を徐々に強め始めていた。
「レーザー、ジェネレーター各部、異常なし」
ウェアがサブ操縦席より計器類を見ながら船体状況を報告してくる。
「了解、ウメチル、2番は2秒後に発射、最終チェック」
『クリアー』
操縦席のスティックを握ると、目の前に表示されたホログラフを見ながら照準を合わせ、ぎゅっとスティックのボタンを押し、周りに聞こえる様に小さく呟くアレイ。
「シュート!」
船体左舷から2秒の時間差で発射されたほんのりと紫ががった光は発射された直後にぐにゃりと曲がると小惑星へと向かってもの凄い速度で飛んで行った。
約10秒後、小惑星が二重のまばゆい光で満たされる。
『小惑星、完全に消滅、アラートレベル0へ更新』
ウメチルの状況報告を聞くとアレイは
「ウメチル、兵装格納、ジェネレーター出力通常へ」
『了解』
ウメチルの操作でアクティブレーザー砲の1番2番が船体外部隔壁で覆われ、ジェネレーターの光も通常の状態へと弱まっていった。
「ふう……」
スティックから手を離すと、背伸びをするようなポーズで一息をつくアレイ。
「さっきの事なんだがな」
不意に声をかけてくるウェア。
「気にしてない」
「……」
ふわりと操縦席を離れると、ニコリと笑顔のままウェアの肩に軽く手を置き、
もう一度「気にしてない」
と言いながら、手を置いた肩を手前に引き寄せ、その反動でブリッジから出ていった。
残されたウェアは無言で両腕を組み船首前方を見つめていた。