序文
時代は乱世。
乱れに乱れ、徐々に狂っていく世界。
秩序も法も既に意味は無く、あるのはただ混沌。
そんな中にあって世界は新たな法を手に入れる。力は正義。結果が全て。勝てば官軍。最終的に立っていた者こそが勝者。敗者に言葉は無く。金は無く。名誉は無く。力は無く。
即ち敗者には意味が無い。
それこそが乱世における絶対の法。無秩序の中で生まれた本当の秩序。
彼はその中で産声を上げる。
この世界に向かって。
この世界で生き抜く為に。
この手に、欲しい物を掴む為に。
その手に、彼は全てを掴んでいくだろう。
なぜなら……
彼には神が憑いているのだから。
十数年前、長きに渡って国を支配し続けてきた幕府が倒れた。
そうして日本は新しい時代、新しい戦乱を迎えた。
新しい国の中心たる帝都は、最も乱世と言う言葉が似合う場所となっていた。
将軍に代わり、帝皇が日本の中心に立つようになり、帝皇の皇居が存在する帝都はその皇居を中心に国内唯一にして最大の軍隊によって守られていた。
すなわち、鎖国を解いたことで訪れることが予想された他国からの侵略者達から国を守るために組織された軍隊と、日本国内で起きた事件を解決し、治安を守ることを目的として造られた警察。この二つの組織を一つにまとめ上げ、内外どちらからでも国を守るために結成された組織、軍警によって帝都は守られていた。
しかしその体制には問題もあり、皇居から離れるに従い軍警官の質は落ち、帝都全体をマス目の様に縦八横八、計六十四に分けられて造られた町々は、帝皇が住む中心に近づく程栄え、離れる程貧困を極めた。それとは逆に中央に近い地域は様々な思惑を持った者達が蔓延り、治安が低下していた。
そうした事態を重く見た軍警上層部はそれぞれの町の軍警に通達、区々それぞれに警備部隊の設立が決定された。
それぞれの町に作られた独自の警備部隊。
通称見回り組を立ち上げ町内に縄張りを作り見回ることで、町を取り仕切った。
大きな手柄を挙げた組はいずれ権力を持つ帝都に近い町に派遣されると言う報償も約束され、軍警官達は揃って手柄を求め、毎夜毎晩町の見回りを続けていた。
乱世と呼ぶに相応しい町で力を持って上に昇る為に。
いつか手柄を立てて出世することを夢見て。
帝都一ノ一町の軍警官、境内日陰少尉巡査長もこの乱世の中、己の力を武器にのし上がろうとしている者の一人だった。
一ノ一町、帝都において最も端に位置し、治安も良いため手柄を立て辛い町。
物語はここから始まる。




