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第31話


少々夜中に寒気がしたような気がしたのだけど、気のせい....かな。

私は少し首を傾げ、カーテンを開いた。ちょっと寝苦しくて早く起きてしまった所為でいつも起こしに来てくれるフィナの姿はまだ無かった。ぼんやりと外を眺めていると、一瞬何か黒いものが横切った気がした。


「えっ!?」


驚いて思わず目を擦っていた私の前に現れたのは私の契約精霊であるシルクだ。

その可愛らしい姿を確認して思わず安堵のため息をついて窓を開けた。けど、シルクはむすっとした顔で天使のような羽を小さくたたんで部屋に降り立ちながらも私をじとりと睨み付けた。その姿に苦笑する。うん。可愛いから全然怖くないよ。


「リリちゃんは私が守るから安心してね。絶対にあの子には指一本も触れさせませんから!」


シルクは何だか意気込むように決意していた。もっとも、私には何が何だか分からず首を傾げるだけだったのだが、そのことに気づいたのか兎に角と珍しく声を荒げ話を続けた。


「何か危険なことがあったら助けてあげるし、気に入らない人がいたらその人の分家も纏めて家系ごとこの世から消し去ってみせるし、精霊達に頼めば、その人の恥ずかしい噂も流してあげられるし、あのヘタレ....じゃなくて、王子が嫌なんだったらこの国を滅ぼして国を地図から消してあげるから…リリちゃんは安心して学園生活を楽しんで頂戴!!」


シルクは私にびしっと指を指して真剣に話したつもりなのだろうが、私はその物騒さに息を呑んだ。

取り敢えず言いたくなったところから言おうか。国を滅ぼすってどういうことかな?私、怖すぎて全然安心できないよ?!それに噂を流すって貴族の世界では社交界に出られなくなってある意味社会的に終わっちゃうから地味に大打撃を受ける奴だからね?!


そう考えてみると、精霊の力は巨大だと改めて思う。お仕置きの程度が半端じゃなくって思わず頬が引きつってしまうほどだ。シルクの考え方も今のうちに直したほうがいいのかなと結構真面目に考えてしまった。

しかし、未だシルクの話は終わっていなかった。


「…最近のリリちゃんは何だか元気がないように見えるんだもの。ずっと思い悩んでいるようだし、契約精霊の私からしたらその悩みを聞いて無くしてあげたいと思うものなのよ!」


そこまで考えているとは知らず、ポカンと令嬢らしからぬ間抜け顔を晒してしまった。しかし、数秒たって意味を理解した私は思わずシルクを抱きしめた。


「……ありがとう。シルク」

「もう、私はリリちゃんの味方なんだから何でも頼って欲しいんだからね」


小さく咎めながらも優しく抱きしめ返してくれたシルクの優しさを感じながら密かに決意した。


このシルクの優しさや家族と友達、そして…アルと過ごした思い出は絶対に奪わせたりしない。もう、前世の乙女ゲームの物語なんか関係ない。私は、私。今の私は前世の私なんかじゃない。悪役令嬢でもない。私は、ローゼリラ・イルフェアなんだ。

……ゲーム補正やヒロインに負けるもんですか!!


そう強く思うのだった。


***

そうして暫くシルクと戯れていると部屋に軽やかなノックの音が響いた。フィナかな?いつも思うけどフィナはいったい何時に起きてるんだろう。今は王都の教会の鐘がなったばかりなので前世で言うところの早朝5時である。


「おはようございます、お嬢様。フィナです」

「フィナ、入っていいわよ」

「失礼します」


フィナは私の学園の制服を手に持って部屋に入って来た。今日から学園の授業が始まると思うと緊張するけれど、とても楽しみでこれからの学園生活に私は期待に胸を膨らませた。


「おはよう、フィナ」

「おはようございます。今日の髪型は何に致しましょうか?」


私はそんなに髪型に詳しくはないから簡単に結んでもらえればいいんだけど、ポニーテールにする髪を上げすぎてはしたないと思われるからなるべく清楚にして貰った方が良いもしれない。


『リリちゃん。そのリボンはどう?』


___なかなかいいかも。シルク、いいセンスしてるね。


『ふふっ。ありがとう』


「そうね、そうにあるオレンジのリボンでハーフアップにしれ貰える?」

「畏まりましたわ。ハーフアップで少し編み込みも混ぜてみていいですか?」

「私はそこまで詳しくないからフィナに任せるわ」


それにしてもフィナは本当に手先が器用だと思う。私は前世でも編み込みを習得出来なかったのに。


「お嬢様。今思い出したのですが、お嬢様のルームメイトの方が部屋に入ったそうですよ」

「えっ!本当?」


私は驚いて後ろのフィナを見た。まさか、隣のルームメイトが隣に来ているとは思いもよらなかった。


「えぇ。どうやら引越しに手間取っていて時間が掛かってしまったようですね。後で挨拶に伺われては?」

「うん。そうする」


そう言った瞬間、なんだか背筋が寒くなった。


『リリちゃん。やっちゃったわね』


「…お嬢様。言葉遣い」


フィナは笑いながら圧力をかけるという器用な技を仕掛けた。しかも、笑うといってもただ笑っているのではない。口元は笑っていても目が全く笑っておらず、かなり怖かった。


「お嬢様がそのような言葉遣いをなさるのであったら冒険者として活動をするのを控えて貰うしかないですね」

「えっと、フィナ落ち着いて……?」


確かに活動を続けるようになったことでまさに令嬢が話すような言葉遣いをしなくなったのだ。その言葉遣いで話すものなら私が何処かの貴族令嬢だとバレてしまうだろう。絶対にそれは避けたい。


「で、でも……」

「お・嬢・様?……言葉遣「わ、分かりましたわ!!」


にっこりと笑うフィナの後ろに黒いオーラが立ち上った気がして慌てて言い直した。フィナって怒ると怖い。これから怒らせないようにしようと若干涙目になりながら決意した。



遅くなってすみません。まだ誤字脱字を編集したりしているので連続投稿は出来ません。夏休みになったらなるべく投稿できるようにします。

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