第27話
「大丈夫ですか?」
こ、この声、は
_____アルト?
アルトがこんな所に確かにいてもおかしくはないのだが、彼は王宮から通っているはずなので今日は学園にいないはずなのだ。薔薇の植木の隙間からアルトの様子を伺った。
何してるのかな?最近は、私が会うのを避けていたのでその姿を見るのは久しぶりだった。
「は、はい。申し訳ありません」
え、女性の声?私は目を見開き、女性らしき声を辿った。声の正体は、とても可愛らしい美少女だった。金の艶やかな髪を揺らし、瞳は宝石のような水色の瞳で彼女の表情に合わせてきらきらと潤んでいる。綺麗な白い肌にあるピンク色の瑞々しい唇は口を開けば鈴が鳴るような可愛らしい声が見る人を魅了してしまう。
絶対に男女関係なく振り向いてしまいそうな少女だと思い、混乱する。私は、、あの子どこかで...
『どうしたの?リラ?』
心配そうに私を見つめるシルクを見返したとき、記憶が蘇った。
***
私、香織はある商店街に来ていた。学校が終わった後のことだった。
「やった!待ちに待った新作の乙女ゲームだ!」
実は、私は乙女ゲームが大好きだ。高校の頃、親友に勧められて大好きになったのだ。名前は『スイートマジカル☆~お菓子のような甘い日常を~』といい、その中でも主人公フローラがとても可愛いと言われている。
あと、この話では悪役なのに悪役令嬢はこのゲームの作成者のお気に入りだというのも有名だ。その代わり、悪役令嬢なので性格は酷く男性の前ではぶりっこで主人公をこっぴどく虐める配役だ。
早速、私はこのげームを買い、家でやり始めた。
そして、私はゲームを攻略した次の日に死んでしまうのだった。
***
思い出した....
私は、ローゼリラ。さっき、見つけた少女はこの世界の主人公であるフローラで私はアルベルトのルートで出てくる悪役令嬢なのだとあまり働いてくれない頭で理解した。
そこから私はどうやって帰ったのか覚えていない...
ただ、無言で帰宅したことで物凄くフィナに心配されたのは言うまでもない。
「本当に大丈夫なのですか?」
「もう。信用無いのね、私。大丈夫だと言っているのに」
私は思わず苦笑した。しかし、思考は乙女ゲームに少し気がかりなことがあったのだ。どうやらあれから彼女は順調にイベントをこなしているようで、もしかしたら彼女は私と同じ転生者で逆ハーレムを目指しているのだろうか?
「そろそろ休むわ。何か急用があれば、起こしても良いから」
「かしこまりましたわ、お嬢様。何かあれば、部屋にあるベルを使ってお呼び出し下さいね」
私に一度礼をして出て行くフィナを見送ってからずっと気になっていたこと考える。あのゲームのままに進むのなら私はバットエンドでアルとの婚約放棄、国外追放、または攻略対象全員の目の前で断罪され処刑のどれかだ。絶対、国外追放と処刑は避けなくてはいけない。
それにもう一つ気がかりなことがある...
あの乙女ゲームに出てきた悪役令嬢の髪色は確か、『太陽のように光輝く金の髪』という設定のはず....
今の私は神様に頼んだおかげで月のように輝く銀の髪をしているし、瞳の色も乙女ゲームでは母様と同じ深いサファイアのような瞳だったが実際は、父様と同じ琥珀の瞳だ。
このことで未来が変わってしまうのかどうかはまだ分からない。
私はやっと襲ってきた睡魔に任せ目を閉じる。
ヒロインのあの子が逆ハーレムを狙っているのならば...
私はどうすればいいのだろうか___?
***
『ねぇ、私にはどうしてお父さんとお母さんがいないの?』
少女は無邪気に祖母に聞いた。勿論、彼女にはそれを聞く意味も分かっていない。
ただ……疑問だったのだ。この時点でこれは夢なのだと確信した。
『……どうしてそんなことを聞くのかい?』
祖母は言葉を少し詰まらせ、少女に聞いた。
『だって…ななちゃんはお母さんと一緒のお布団で本を読んで貰ったり、お父さんには公園で一緒に遊んでいるもん』
『……お父さんとお母さんはね。_____』
ふと、場面が変わる。あそこにいるのは誰?
よく見てみると、月のような輝く銀の髪を持つ美しい女性が湖の側に立っていた。私には精霊のようにも見えた。
『ごめんなさい。私にもっと力があれば、貴方と生きていけたのに...』
女性は黒髪の可愛らしい赤子を抱え、湖の縁にひざまずいた。
それを見ながら思い出す.....
私はこの光景を見たことがある____。
いったいどこで?私はどこで見たことがあるの?
呆然と立ちすくんでいると、何かに気づいたようにくるりと女性は振り返る。
う、嘘でしょ?これは夢のはずでしょう?なのにどうして彼女は私を見つめているの?
彼女の青色の瞳には確かに彼女と同じ髪色の私を視界に捉えている。
『あら、こんな所に来てしまったのね....貴方は元の場所に戻りなさい』
悲しそうに笑う女性が霞んでいく。待って!私、聞きたいことが....
そんな声が届く前に私は夢から覚めてしまうのであった。




