第21話
私達は、先に2人で踊ることにした。もちろん一回だけ。二回以上も踊るのは、婚約者とだ。うちは幸いお父様が家に縁談が届いてもそれをすぐに潰しちゃうから私に婚約者は、いないんだけどね。ていうか、あれ?アルト君、道そっちじゃないよね?むしろダンス会場って向かっている方向の反対方向だよね?ふと疑問に思った。
「あれ?アルト君、ダンスを踊るための会場ってそっちじゃなかったよね?」
「うん、でも見て欲しい所があるんだ。着いてきてくれるかな?」
私は、別に構わないので頷いたらアルト君は、嬉しそうに笑った。その瞬間、私の胸が高鳴ったような気がしたけど表情に出さないようにそっと心の底にしまい込んだ。
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着いた場所は、王宮の中庭。初めて会った時から何度も城に訪れていたのでなんとなく最近は、今何処にいるのか分かってきたのだ。昔は、迷って何度もここの侍従さんや侍女さんにも聞いたりして、頑張って道を覚えようとしたものだ。それくらいしないとここの王宮は、広すぎてすぐに迷子になってしまう。
「うわぁ、きれー」
空を見上げるとキラキラと星が輝いている。
思わず声を出すのを忘れるほど景色に見入っていた。
「僕のお気に入りの場所なんだ。気に入ってくれたかな?」
「それは勿論!」
当たり前だというように頷いた。こんな綺麗な景色は、今まで見たことがないよ。私は、アルト君にそう伝えるとアルト君は、私に自分のお気に入りの場所が気に入ってもらえて嬉しそうに私を見ていた。
「ねぇ、リラ。ここで一緒に踊らない?」
「?うん、いいよ」
こくりと頷いた元々アルト君と踊るというのは分かっていたし、ここなら貴族たちに見られて緊張する心配もあまりない。
それにここで踊るのは、気持ち良さそうだ。
私は、手をアルト君が差し出してきた手の上に置いた。これがダンスの始まる合図だ。
私たちは、手を取り合いながらも目を軽く合わせて踊り始めた。
「リラ、ダンス上手くなったね」
「えっへん、いっぱい練習したからね〜、でもやっぱりアルト君の方が上手いよ」
私が拗ねたように言うとアルト君は面白そうにくすくすと笑った。むぅ、そんなに笑わなくてもいいじゃない。
「あはは、ごめんね。リラ」
「エスパーですか!?」
「リラ、顔に出てるから分かりやすいよ」
あれ?本当?私、顔に出てた?と疑問符を浮かべていたら、また顔に出ていたらしくアルト君は、肩を震わせた。堪えている様だけど声が漏れてるからね。でも、アルト君の笑っている様子を見るのは楽しい。最近は、政務の勉強とかも始まって忙しそうだったから心配していたのだ。まぁ、私も忙しかったからあまり会えなかったんだけど。
「そういえば、政務の勉強が始まったんでしょう?進み具合はどう?」
「やっぱり分からないことがいっぱいだよ、宰相にも怒られちゃうし」
「そっかー、やっぱり王子っていうのも大変だね」
王子なのであまり自由に行動することは、出来ないのだろう。私は、親の反対を押し切って冒険者になったけど…。アルト君は、王太子だから、国を継ぐことになる人がもし城から出て危険な目にあうと大変な事件になってしまうのだ。まぁ、私の家もそれなりの位を持っているから何か起こると大変なことになりそうなのは、同じだけど。
「確かに自由に行動したい時もあるけどもう諦めてるし、国民の為だからね」
頑張らなくちゃと気合を入れているアルト君を見て私は、くすりと笑った。アルト君も私の笑いにつられたように微笑んだ。
だけど、いきなりアルト君は真剣そうな顔になった。
「あのね、今日はリラに言いたいことがあるんだ」
「なぁに?」
いきなりどうしたんだろうと首を傾げた。ダンスの為に進ませた足が止まる。それに心なしかこの空間の空気が薄くなった気がする。
すると、アルト君は突然私の目の前で跪いた。私は、思わずぎょっとする。するとアルト君は、少し躊躇ったようだったが、少し経って口を開いた。
「僕と婚約してくれませんか?」




