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第20話

煌びやかな光を放つシャンデリアが会場を明るく綺麗に照らしてくれていた。

若いちょうど私ぐらいの女の子が多い様だけど、当たり前だろう。貴族達は、自分の娘をまだ婚約者のいない王太子であるアルト君に勧めたいのだ。


実質、アルト君はモテる。王子だからというのもあるけど顔が整っているからだろう。

アルト君が扉から入ってきた瞬間に令嬢たちが目の色を変えた。

野獣の目をしていたり、一目惚れをしてしまったらしく目の中がハートになっている人もいた。

本当に一目惚れするとハートになっちゃうんだね。漫画の中だけだと思ってたよ…。


「あっ、リラ!」


うっ、今私に気づかないで欲しかったかな。令嬢方の視線が痛いから。仕方ないかと思い私も返事を返した。


「久しぶり、アルト君。ほら、お菓子持ってきたよ〜。」

「やった、リラの菓子は凄く美味しいから。楽しみにしてたんだ。」


アルト君がにこりと笑うと周りの見ていた令嬢がくらりと倒れた。恐るべし天然たらし…。


「アルト君、陛下にも挨拶に行きたいんだけど、案内できる?」

「もちろん。」


アルト君は、嬉しそうにふわりと笑いながら私に手を差し出した。流石、王子様。その辺の教育は、ちゃんとしているらしい。

私も差し出してくれた手の上にそっと手を置いた。淑女であるための基本の決まりである。


「リラ、この間送ってくれたクッキー美味しかったよ。」

「えへへ、ありがと。」

「今度、王宮の料理人にも作り方を教えてあげてくれないかな?教わりたいって言っていたんだけど、もちろん無理だったら断っておくから。」


はっ!?なんかさらっと凄いことを言われた気がする。気のせいじゃないよね〜と確かめたけどやっぱり現実だ。絶対に私の笑顔が引きつっていると感じた。え、私が王宮の料理人に教えるの!?前世でいえば、五つ星のプロのような人達なのに!

考えたら頭痛がしてきたよ。私教えるのは、そんなに上手くないんだけど…。


「私、そんなに教えるの上手くないよ?」

「それぐらい大丈夫だよ。それにリラは、教えるの上手だと思うよ?前に勉強を教えてもらった時、分かりやすかったし。」

「そうかな?じゃあ私教えに行ってもいいかな?」

「分かった。今度そう伝えておくよ。」


そんなこんな話している間に陛下達の元に着いた。そこには、王妃様とお父様も一緒にいた。一番速く私達に気づいたのは、お父様だ。流石、親馬鹿だと思った。だって、近づいただけで私が来たことが分かるなんておかしいでしょ。


「リラ、この駄王に挨拶に来たんだな?さっさと挨拶してくるといいぞ。そうそう、そこの駄王の息子はリラから離れろ!」

「お父様…。」


私は、相変わらずのお父様に思わず呆れてながら近づいていった。とりあえずこの煩い父親は、無視して陛下に挨拶をしないと失礼だからね。陛下の前に来たらすっと後ろに左足を下げてドレスを持ち上げて頭を下げた。


「陛下、挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした。」

「いいよ、頭を上げて。」


許可されたのでカーテシーの型を解くとお父様に抱きしめられた。暑苦しいですよ、初めて会った時は、もっとクールな人だと思ってたのに全然そんなことなかった。娘にデレデレの親馬鹿なのだ。お父様の顔を見ると騙されそうになるけど…。


「って苦しいのでお父様、離して下さいよ!」


そう言ってお父様の腕の中で暴れてたら少し手が緩み抜け出せると思った時、すっと後ろに手を引かれてその腕の中に入った。


「っ!?」

「大丈夫?リラ。」


……アルト君だ。

ありがとう!お父様から解放されたけど、美少年に微笑まれて顔が赤くならないはずがないのだ。恋愛経験ゼロの私は、思わず恥ずかしくて顔が赤くなった。


「ありがとう、アルト君!助かったよ!」

「ううん、別にいいよ。それより今日は一緒に楽しもう?」

「うん!」


私は、アルト君に手を引かれちょうどホールの真ん中に移動したのだった。


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