第18話
「よーし!早速、かき氷を作ってみよう!」
お兄様は、私がいきなりそんなことを喋ったので驚いたようだ。
「どうしたの?」
お兄様は、首を傾げてきたので私は、事情を説明した。
暑いから冷たいものを作りたいということを話したのだ。
「確かに最近暑いからね。」
そう言うと、納得したように頷いて僕も手伝うよ。と言ってくれた。
「えへへ、ありがとう。お兄様!」
こうして、私達は厨房に向かった。
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「あれ?お嬢様と御坊ちゃま。どうなさったのですか?」
「サルバさん!あのね、最近暑いからね。みんなに冷たいデザートを振る舞おうと思って。」
ダメかな?と言って私は首を傾げる。涙目なのがポイント。こうすると大人はころっと落ちる。我ながら悪だな…。
「だ、大丈夫だと思いますよ。きっと、旦那様達も喜ばれますよ。」
私は、サルバさんに材料が書いてある紙を渡した。私が夜に書いたものだ。その紙をサルバは、受け取ると少し首を傾げた。
「そうですね、材料は、全部ありますけど。氷を使うのですか?」
「うん。氷は、私が魔法で出すから手伝って欲しいのは、シロップの方なんだ。」
私は、近くに置いてあった包丁を手に取ってサルバさんが出してくれた苺を数個取ってそのへたを切った。それをよく洗ってから水を切る。
「サルバさん、大きめの瓶はありますか?」
「瓶ですか?」
サルバさんは、不思議そうな顔をした。当たり前だろう。料理に瓶を使うことは、ほとんどないと言っていいほどなのだ。
すると、サルバさんはキッチンの引き出しを開けたりして探し始めた。
「えーと、確かこの辺に……。あっ、ありました。このくらいの大きさでよろしいですか?」
「うん、それならちょうどいいよ。じゃあ、煮沸消毒をするね。」
本来なら鍋を使って消毒するところをこの世界には、魔法があるので水の魔法の水球出して、火の魔法で沸騰すればいいし、火が熱い所為で普通よりも早く沸騰した。
「僕は、何をすればいいの?」
………あっ、お兄様、忘れてた。
「えっと、お兄様は、材料がこの量だと全部瓶に入らないからあと二つ瓶を持ってきてください。」
「うん、分かったよ。あと、真剣になるのはいいけど、僕がいたこと忘れてたよね。」
あっ、バレてた。お兄様、勘良すぎるでしょ!
「ナンノコトカナ?」
「まぁ、別に良いよ。」
お兄様は、苦笑してからお願いされたことをする為に厨房を出て行った。
ま、まぁ、気を取り直して。お菓子作りを始めよう!
「まず、瓶の中に苺、氷砂糖の順番に入れます。」
「お嬢様、こんな感じですか?」
「うん。これでちゃんと詰めたら。サルバさん、冷蔵庫は何処です?」
「冷蔵室ならこちらですよ。」
………部屋?
えっと、流石貴族の家と言ったところかな?冷蔵庫じゃなくて、冷蔵室なんて初めて見た。
「えっと、出来た瓶は冷やす為に入れて置いてね。」
「はい。」
よし、これで下準備は完了!
「じゃあ、氷を出すね。」
『氷!』
魔法は、上手くいったみたい。水の魔力を強めて丸くなるように仕上げてみたのだ。
そのおかげで氷は、綺麗に透き通っていた。
『シルク、ちょっと良いかな?』
私が小さな声で呼びかけるとシルクは、ぱっと現れた。流石だ。風の精霊なだけある。おそらく声は、空気を震わせて音を出すのでその原理で早く伝わったのだろう。
『何かしら?リリちゃん?』
『あのね、この氷を風で細く刻んで欲しいんだ。出来るかな?』
『ふふっ、私は精霊王なのよ。この程度のことなんて簡単よ。』
シルクは、花が綻ぶような笑みでリラに向かって頷いた。小さな指をすっと上げて下に下ろした瞬間に氷は、粉々になっていた。
「うん!成功!」
私は、かき氷が実現したのが嬉しくてシルクとハイタッチを交わしたのだった。




