雄一くんとお祖父さんの心温まる日常(DV編)
俺んとこのじじいはどうしようもないくそだった。
サンドバッグを殴るように孫を殴って、その辺に転がってる石を蹴るようにして孫を蹴り飛ばした。しかもこの孫ってところを全部俺に替えても意味として間違ってねえところがどうしようもねえ。そんなじじいが傍に居たもんだから俺の根性は当然ねじ曲がった。ぐねぐねとひん曲がって取り返しがつかなくなった。しかも小学校に上がる頃には、俺が生きるためにはじじいを殺さねえと駄目だ、と考えるようになっちまった。そんな俺がまず始めたのが修行だった。理由は簡単。天下の少年ジャンプの中で強い敵相手に困った主人公がやっていたからだ。俺は張り切って修行した。やってやるぜ、そう思うだけじゃなくて口を動かして声に出しながら山へ行って修行した。やってやるぜ。そして俺は入院した。山で木に登っている途中に木から落ちたらしい。登りきっていたら死んでいた、そう言われた。誰に言われたかは覚えてない。そのときの俺は、病院にいるあいだはくそじじいに殺されずに済む、って思いで一杯になってハッピーだったからだ。けどそれは甘かった。じじいは本物のくそだった。日が落ちた頃に病院へ来たじじいは俺を強制退院させて家に連れて帰った。で、当たり前みたいにしこたま殴られた。まだじじいと俺が住んでいるでかい家の門くらいしか見えてないような道路の真ん中でぼこぼこにされるのは嫌だったから俺は大声で助けを呼んだ。けど助けはなかった。このときの俺は知らなかったことだがじじいは土地と金を振り回す鬼だった。権利書と大金を振り回すじじいには誰も勝てず、さながら金棒持った鬼のようだったらしい。そんなアブナイじじいには近づかない方がいい触らぬ神に祟りなし、そう考えるような奴らが俺を助ける理由もなければ得もない。むしろ損にしかならないことを誰がするか、って話になるくらいだ。そこからはいつも通り、じじいの手足は俺に暴力を振るうためだけに作られたんじゃないかってくらい手際よく俺をボロ雑巾にした。
俺はダンゴムシみたいに地面に丸まってじじいに蹴られながら決めた。
こいつは絶対に俺の手で殺してやる、と。