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東方妖刀録  作者: 雨月
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VS陰陽師枝垂3

全員の一斉攻撃。それは全てじいちゃんにあたった。








 ように見えた。




「な、何が起きているんだい」

「……ケロ。吸収されている……?」


 ぶつかったように見えたあと、魔力、妖力、霊力、神力。いろんな力が混ざり合った巨大な球。その中心にじいちゃんがいて、その球が徐々に小さくなっていき、そして、まるでじいちゃんに吸い込まれたように消え、無傷のじいちゃんが現れた。


「フフフ。見事な攻撃だったぞ……」

「無傷……だと! そんなバカな!」


 慧音さんが大声で叫ぶ。あれだけの攻撃を受けて無傷だなんて。


「これこそ。わしの秘策。『あらゆる力を吸収し、我が者とする程度の能力』じゃ」

「あ、あらゆる力を吸収し、我が物とする程度の能力……ですって」

「いかにも。おそらく、まだ能力に目覚めておらん一般人に偶然触れたときに得たのじゃろう。わしもいつ得たのかわからんのじゃ」


 そ、そんな。それじゃあすべての攻撃は無効化されるってことじゃ……。


「ふざけるな! そんなことあるわけないだろ!」

「そうね。今回ばかりは妹紅に賛成よ。ありえないもの」

「まったく。疑り深いの。ならば、もう一度撃ってみい」

「そうさせてもらうわ」

「ああ!」


 妹紅さんの手が炎に包まれ、輝夜さんも変な球のついた木の枝を取り出す。


「待ちなさい! 2人とも。冷静になりなさい」

「永琳。止めないで」

「冷静になりなさい。さっきも見たでしょ、私たちの攻撃が吸収されていったのを」

「で、でも……」


 ……。どうすれば……。


「神奈子。諏訪子。ちょっといい?」


 ん? 紫さんがスキマに向かって小さな声で、じいちゃんには絶対聞こえない声でしゃべってる。


「ボソボソ。と喋る程度で聞こえるわ。枝垂にばれないように答えて。あの男から神力は感じられる?」

「………」

「なるほどね。となると、そこに勝機が取れるわね」

「……」


 紫さんの声しか聞き取れない。でも、紫さんには何か秘策があるみたいね。それなら。


「ヴォ―パル・アイス!」


 氷の剣をいくつも作ってじいちゃんに飛ばす。


「無駄じゃよ。アキラ」


 氷の剣はじいちゃんに触れた直後、その姿を消した。やっぱり吸収されているのかな。


「たとえ氷の剣だとしも。元は妖力で作った物じゃ。そういうものはいかなるものであろうと吸収できる」

「紫さん。私が時間を稼ぎます。その間に作戦を」

「わかったわ」


 じいちゃんに聞こえない声で言う。そして。


「はあ!」


 翼を羽ばたかせてじいちゃんの元に一瞬で着くと、氷の刀を振るう。


「その刀も妖力のみで作られた物。わしの力の前では無力じゃ」


 刀が消滅して、直後。じいちゃんに蹴飛ばされる。


「くっ。ん? 待てよ」


 飛ばされながら思い出す。妖力で作った物は吸収される? おそらく魔力で作った物も吸収されるはず。つまり。

 じいちゃんが追い打ちをかけるかのようにやってくる。


「これなら吸収されない!」


 は妖刀融合を解除・・して元の姿に戻ると、氷雨を振るう。

 妖力で作られたものが吸収されるのなら、本物の刀を吸収することは出来ない! もちろん、氷雨内の妖力が吸い取られる可能性はあるけど、刀本来の切れ味には影響されない!


「むう」


 ちっ。躱された。


「考えたの。アキラ。だが、そこからどうするつもりじゃ?」


 あ、まずい。今生身。で、飛ばされている最中。このままだと、普通に地面に落ちて……。


『無茶をするでない』


 頭に声が響くと、氷の翼が背中にできて、勝手にはばたく。


「氷雨? ありがとう」

『案は良い。じゃが、あと先考えず行動するでない』


 地面に翼を羽ばたかせて着地する。


「良い相棒を持ったの。アキラ」

「エクスデットオンバシラ」


 柱がいくつも飛んでくる。しかし、じいちゃんに触れるとそれは消滅してしまう。


「八坂神よ。それも神力のみで作られた物じゃ。わしには通じない」

「なら! これはどう?」


 諏訪子さんの声が聞こえ、そっちを見ると、地面に両手をついていて、そして、

 地面から鉄の塊が出てきた。


「洩矢の鉄の輪!」


 それを投げる。


「なるほど。地面にある鉱物を集めて作った鉄の輪か。これならば吸収はできん」


 じいちゃんの手に電気の刀ができて、鉄の輪を斬る。


「じゃが、そんな精度のない鉄の塊などおそるるに足りん」


 これでもダメだなんて。


『みんな、聞こえる?』


 紫さん?


『作戦が思いついたわ。今、文に風を操ってもらってわたしの声がみんなにしか聞こえないようにしてもらっているわ』


 時間稼ぎ成功?


『これは大きな賭けよ。失敗すれば、絶対に負けとなるわ。勝ち目がなくなる。それでもみんなやる? 1人でも反対がいれば、『反対なんてないわよね?』え?』


 輝夜さん?


『これしか手がないんでしょう? それならその手でやりましょう。反対する人は別の案を出してもらうわよ』

『そうね。それしか手がないというのならそれを試すしかないわ。紫、早く作戦を』


 永琳さん……。


『……わかったわ。時間がないから手短に。

 枝垂はあらゆる力。霊力、魔力、妖力、神力。すべてを吸収すると言っていたわ。でも、あの男から神の神々しさは見える? 少なくとも神力を吸収したのなら弱くても神の気質がでてくるはず』

『確かにあの男から全然神様の力は感じられないね』


 てゐさんが口をはさむ。


『ええ。それは今ここにいる神二柱に見てもらったわ。つまり、あの男は吸収した力をそのまま自分の力にしているのでなく、すべて一つの力に変換している。ということよ』

『どういうことよ。意味が分からないわ』


 レミリアが言う。っていうか、このままだとじいちゃんが……。


『アキラ! 枝垂の相手お願い』

「わかった」


 じいちゃんの目の前に行き、氷雨で雷の刀を受け止める。


「動きが鈍くなったの。何か作戦でも立てておるのか?」

「さあね」

『アキラ。そのままでも何とか聞いて。おそらく、霊力、もしくは妖力に、すべての力を変換しているのでないかと思うの』


『ああ。そういうことなのね』

『そう。つまり、神力を吸収したはずなのに、神の神々しさがないのは、その神力を霊力や妖力に変換したからなの。そこに勝機があるわ』

『どういうこと?』

『どんな生物でも、無限に力をためることは不可能よ。袋を思い浮かべて。そこに水を入れると、確かに入って行くけど。満杯になったらあふれるでしょ? 霊力などの力を水、袋を力をためておく場所。と考えてみなさい。つまり』


『なるほど。袋に水をどんどん入れていき、わざと溢れさせると』

『その通り』

『あやや。霊力爆発を無理やり起こそうと? 確かに案としては面白いですが……』

『霊力爆発?』


『霊力が袋からこぼれていき、あまりに量が多いと最後には入らなかった霊力が暴走して人体爆発を起こすのよ。人体発火の原因もコレ。という説があるわ』

『話がそれてしまいましたね。すみません。しかし、吸収している最中に霊力、もしくは妖力を使われてしまったら意味がないのでは?』

『それはないと思うわ。思い出してみて。最初の一斉攻撃。あの時、吸収中は私たち隙だらけだったのよ。それなのに攻撃してこなかったところを見ると』


『吸収中は攻撃できない。と見るのが自然だな』

『ええ。と、言ってもコレは大きすぎる賭け。どうする?』

『それ以外に案がないのでしょう? それで行くわよ』

『そうね。それ以外に案がないわけだし。試してみる価値はあるわ』

『じゃあ、あたしが奴を羽交い絞めにして動きを封じる。その隙にみんなで攻撃してくれ。あたしは不死だから遠慮なく攻撃してくれ』


『それともう一つ。攻撃するときは全員一斉じゃなくて、1人ずつ、もしくは2人ずつで、刹那の時も攻撃の隙間を作らないこと。その一瞬で力を使われたらはじめっからやり直しよ』

『よし。行こう! みんな、あたしの援護を頼む』

『ええ。行くわよ!』


「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」

「ふむ。作戦会議でもしておったのか? 面白い。見せてみろ」


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