VS陰陽師枝垂
「やっぱり。弱い」
戦いの最中。霊夢がそうつぶやいた。
「弱い……? 何を言っているの? 霊夢」
「初めて会ったときのこと。覚えてる? 紫」
「ええ。覚えているわ。あれはたしか……、冥界の階段ね。春雪異変が終えたばかりのころの」
「そうよ。そこであなたと戦った。はっきり言わせてもらうわ。あのときよりも格段に弱い」
………ふふふ。
「何を言っているの? 霊夢。あの時より、弱い?」
「そうよ。迷いでもあるのかしらね。本当は、私を殺したくない。とか?」
「ふふふ。何を言っているのかしら。意味が分からないわ」
「さっき、藍の動きを止めたのだって。今までのあなたならば、その隙は作らなかったはずよ。隙だらけだった。だから藍の動きを止めて、アキラの手助けをすることができた」
「………ふふふ。バカにするな! 10余年しか生きていない小娘が!」
私は霊夢の周りに巨大なスキマをいくつも作る。
「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」
「ふん」
どうやら霊夢は背中のスキマから出ると思っているのね。後ろに結界を張っているわ。でも、残念。
直後、霊夢の上空に作っておいたスキマから電車が落ちてくる。
「なっ。上!?」
終わりよ。完全に避けられないタイミング。結界を張る隙もない。
直後。電車が真っ二つに斬られ、霊夢にあたらずに落ちる。
「霊夢! 大丈夫?」
「ちょうどいいタイミングよ。アキラ」
アキラが着地をして、地面を少し滑る。そして、滑りながらわたしのほうに手を向ける。
「しまった」
次の瞬間。あたしの体が凍り始め、地面とくっつき、動けなくなった。
「油断した……」
「霊夢!」
「ええ!」
霊夢があたしに札を飛ばしてくる。ふふ。その数はもう数えられないほど。
札が次々と私にあたる。そして、札が氷をすべて壊してくれた瞬間。私は空に逃げる。
「はぁ。はぁ」
まずいわね……。2人相手はさすがにきついわ……。
アキラが来た。ということは藍はやられて、もう動けないってことよね……。助けを呼ぶことは不可能ね。
「くっ。どうしようかしら」
直後。アキラが真後ろに現れ、刀を振り下ろしてくる。
「ふっ」
私は後ろを向くと、アキラの刀を白羽どりする。直後、背中に衝撃が襲ってくる。
「霊夢ね……」
私は白羽どりしたまま、アキラを刀ごと引っ張って隙を作ると、霊夢に向かってアキラを蹴飛ばす。
霊夢は向かってくるアキラをキャッチせず、それをよけて私のほうに飛んできた。
「無視するなんて。ひどい子ね」
鉄扇を取り出し、霊夢のお祓い棒を防ぐ。
「紫、やっぱり弱くなっている。そんな迷いのある目じゃ真実は見えない」
「何を意味不明なこ――」
またも背中に衝撃がくる。今度はでかいハンマーのようなもので殴られた感覚。
私は地面にたたきつけられる。
「な、なんで……?」
「紫。今までのあなたなら、アキラが偽物だったことに気付けたはずなのにね。そして、この程度の攻撃もよけれたはず」
霊夢が倒れている私の近くに着地しながら言う。
「氷分身……ね。氷雨の得意技の一つ……」
アキラが氷でできた巨大なハンマーを肩に担ぎながら下りてきた。
「紫。あなたの負けよ」
「……そう、みたいね……」
「紫さん。なんで、じいちゃんに手を貸したんですか?」
「やっぱり、もう知っているのね。藍が話したのかしら……」
「はい。紫さんを止めてほしい。と」
「そう……。参加した理由は簡単よ。それが幻想郷のためになるのならば。それが理由。
私は幻想郷の母。幻想郷のために動いたに過ぎないわ」
「情けないの、紫。妖怪の賢者ともあろうものが」
スキマを通って、枝垂が現れた。
「じいちゃん」
「久しぶりだの、アキラ。姿はかなり変わっておるが……」
まさか、私たちがやられたらすぐに出てくるなんて。
「どけ、アキラ。博麗の巫女を渡せ。そうすれば、お前の命は救って「ふざけないでよ」むっ?」
「霊夢は守る! たとえじいちゃんが相手でも! 霊夢に手を出させない」
「……そうか。ならばアキラ。わしはお前を敵とみなし、潰させてもらおう!」
枝垂が鞘に収まったままの刀を握る。アキラも同じように鞘に収まった氷の刀を握る。そして、直後。抜刀術同士がぶつかり合う。
あまりの威力に2人は後ろに地面を滑る。そして、そこに霊夢の札が枝垂に向かっていくつも飛ぶ。
「飛行虫ネスト」
スキマが現れ、そこからレーザーが放たれる。それによって霊夢の札が切り裂かれる。
「スキマ? なんでスキマが?」
「じいちゃんの能力は触れた人の能力を使えるみたい。私や紫さんの能力もコピーしてあるって藍さんが」
「その通りじゃ。こんなのもあるぞ、夢想封印!」
「ちぃ。夢想封印」
枝垂から光球がいくつも出て、霊夢とアキラに向かって飛ぶ。すぐに霊夢も光球をだし、枝垂の夢想封印とぶつける。
枝垂の光球はすべて消え、霊夢の光球は半分残った。そして、残った光球がすぐさま枝垂に向かって飛ぶ。
「やはり、威力は半分程度か……」
枝垂はそうつぶやきながら光球をよけ続ける。そこに、アキラがあまりに巨大すぎる刀を振り下ろす。
巨大な刀が地面に当たり、地面を揺らす。枝垂は回避したようで、振り下ろしたばかりで隙だらけのアキラに向かって刀を振り下ろす。そこに霊夢の陰陽玉が飛んできた。
「よい、コンビネーションじゃ」
陰陽玉を軽々とよける。そこに、アキラが氷の剣をいくつも作り、それを枝垂に向かって飛ばす。
「ヴォーパル・アイス!」
それを刀を振り回して防ぐ、枝垂。
ダメ。すべての技が軽くあしらわれている。
「終わりじゃよ」
枝垂が刀を天に掲げる。すると、刀身がわずかに黄色に光った。
まずい。これは奥義レベルの技。
「来よ、土の精霊。掘り起こせ、土を。守れ、わが身を。飛び出せ、金の精霊よ」
これは、魔法? しかもこれは精霊魔法。パチュリーね。教えたのは。
「合わせよ、強固な盾に。『土金の盾』」
アキラと霊夢が土のドームに包まれる。ってあれ? 私も?
私も囲まれ、直後。強い衝撃がくるのを感じた。だけど、土のドームは壊れることなく、ドームが半分に切れると、開きだした。
「魔法……か。魔法まで使えるとは、アキラ。なかなかやるの」
枝垂。かなり疲労しているような感じね。あの技はたぶん、雷を落とす技だったと思う。雷をよけることができない。と思い、体力をかなり使う技を放ったけど、魔法で防がれた。といったところかしら。
「はぁ、はぁ。予想外じゃの」
「ヴォーパル・アイス」
氷の剣を飛ばすアキラ。それを枝垂は、
「妖刀、融合」
枝垂の体が黄色に光りだすと、その光は高速で動き、アキラの剣をすべてよける。そして、
「がっ」
アキラがその光に攻撃され、地面に倒れる。
「よ、妖刀融合……ですって。そうか、アキラの能力」
「その通りじゃ、やはり博麗の巫女は感が鋭いの」
霊夢の後ろに回る、枝垂。
「二重結界!」
霊夢の周りに貼られた二重の結界をくらい、すぐに下がる枝垂。
「感電波」
枝垂が人差し指を霊夢に向けると、そこから電気がでて、霊夢に直撃する。
「くっ。この程度、ちょっとピリッ。とした程度で、何とも……」
霊夢が言葉に詰まる。霊夢?
「体が……動かない……?」
「この技は威力は低いが、あたったものの行動を制限するのじゃよ」
そうか。人間の体は電気信号でやり取りされる。それを制限したのね。
枝垂が霊夢に向かって動き出す。まずい、霊夢をとらえる気ね。
「霊夢!」
私は体を無理やりでも起こそうとする。まだダメージが抜けきってないけど、やるしか。
直後、霊夢の周りに氷の柱が落ちてきて、霊夢の周り4点に落ちる。
「結界『氷壁陣』」
氷の柱同士をくっつけるように氷壁が現れて、霊夢を取り囲む。そして、アキラが枝垂の目の前に下りてくる。
「霊夢に手出しはさせない」
文字通り、音速の抜刀術を放つ、アキラ。枝垂はそれを軽々と上によける。そして、
「夢想封印!」
光球を作り、それをアキラに向かって飛ばす。
直後、霊夢が氷壁の空いている上の部分から飛び出す。そして、枝垂に向かって札をいくつも投げる。
枝垂は右手に電気がたまる。そして、それをレーザーのように札を巻き込むように霊夢に放つ。
「夢想天生」
霊夢にレーザーが当たる。でも、直前に夢想天生を使っていたみたいだから、問題なさそうね。
レーザーをすり抜けて、枝垂の目の前にやってくる霊夢。さすがの枝垂もそれに驚いたようでその隙に霊夢は一時的に元に戻って、枝垂を右足で蹴飛ばす。
「なるほど」
地面に着地をしながら枝垂がつぶやく。
「博麗は代々、『空を飛ぶ程度の能力』を持つ。と聞く。ただ飛ぶだけの能力かと思っていたが、どうやら違うようじゃな。存在から浮く。ことも可能なのか」
あれは博麗の巫女だからこそできること。たとえ、コピーしたとしても、50%程度の力しか使えない、あなたの能力ではコピーしても使えない。
「だが、これで終わりじゃよ」
霊夢のもとに飛ぶ枝垂。無駄よ。今の霊夢に攻撃は不可能。
「くっ」
え!? 霊夢が殴り飛ばされた?
なんで? 霊夢も何が起きたのかわかっていないような表情……。
霊夢が札をいくつも飛ばす。それを枝垂はすべてよけると、霊夢に刀を振るう。
それをアキラが間に入って、氷の刀で防ぐ。
「そうか。実体と幻の境界を操って私に攻撃が当たるようにしたのね」
なるほど。なんで私が今まで思いつかなかったのかが不思議なほどね。
「落ちよ、雷」
え?
直後、枝垂は自分もまきこむように雷を落とし、霊夢とアキラに雷を落とした。
「霊夢! アキラ!」
「うっ……」
アキラと霊夢が地面に転がっていて、枝垂がアキラに刀を向けていた。
「終わりじゃよ」
最強、陰陽師枝垂。参戦。
ちなみに、枝垂お爺さん。まだ奥の手があります。




