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東方妖刀録  作者: 雨月
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VS八雲家3

 私は氷の刀をもう一本作って、二刀流にする。そして、

 目の前に来た藍さんの剣を右手の刀で受け止める。


「天叢雲剣!」


 藍さんの声と同時に刀身が炎に包まれる。


「絶対零度 凍炎 纏いし刃」


 私も冷気を刀身に纏わせる。すると、触れているところから、炎が凍っていく。


「ちぃ」


 藍さんはすぐさま離れる。そして、凍った炎を振り落すと、それを地面に突き刺し、


「天叢雲剣!」


 藍さんが叫ぶと。私の左右から土の壁がせり出してきて、次に前と後ろからも出てくる。そして、それが倒れてきて、ピラミッドのような形になって閉じ込められる。わずかにあいている隙間もすぐに埋まってしまった。


「藍さん。その程度で閉じ込めたと思っているんですか?」


 私は左手の氷の刀を鞘に納める。そして、


「氷剣『巨大刀』」


 横に構えた右手の刀が巨大化して、


「はあああぁぁあぁあぁぁぁぁ」


 それを横に振るう。

 体も回転させて、360度全体に振る。そして、私を閉じ込めていた土の壁は崩れる。


「!?」


 藍さんがいない? どこに……。

 私はあたりを見る。そして、地面から手が出てきて、私の足首をつかんだ。


「しまっ」

「終わりだ。狐火!」

「ちっ。封魔陣!」


 結界を作って足をつかんだ藍さんを吹き飛ばす。

 地面から藍さんから出てきて地面を一回転がってから体制を整えて着地する。


「封魔陣。だと?」

「結界『氷縛陣』を作るために会得しておいたのよ。これは霊夢も知らないわ」

「霊夢のものとは、天と地の差だな」

「当たり前でしょ。私の専門は氷だもの」


 合図もなく、同時に動き出す、私たち。

 そして、鍔迫り合いになったとき、藍さんがほほ笑んだ。


「!?」

「終わりだ! アキラ」


 突如、左足だけが沈みだす。すぐに足元を見ると、地割れのようにその場所だけ割れていて、左足がほんの少しだけ入っていた。

 すぐに藍さんのほうを見ると、藍さんが天叢雲剣を振りかぶっていた。

 まずい。今のでバランスが崩されて体制が悪い。

 防御が間に合わない。間に合ったとしても、刀が砕かれて終わる。

 直感的にそれを理解した私は負けを意識した。そのとき、藍さんの動きが急に止まった。







 なんだこれは。体が動かない……。

 アキラの体制を崩させ、防御が間に合わない状態にした。そこまではいい。そして、もしも間に合った時のために渾身の一撃を振り下ろそうとした。ここまではいい。


 なぜ、なぜ私の体は動かない。剣を頭の上で振りかぶった私は剣を振り下ろそうとした。すると、なぜか体が動かなくなったのだ。

 ………まさか! 

 私はすぐに紫と霊夢の戦いのほうを見る。すると、

 霊夢が私のほうに左手を向けながら紫と戦っていた。


「結界か。紫と戦いながら私に結界を張って動きを止めるとは」


 アキラの危険を察知して、私の動きを止めるとは……。

 まてよ。まずい。急いで結界を解かなければ。

 アキラは氷の刀を2本とも、氷の鞘に納める。そして、地割れから足を引き抜く。そして、

 腰に刺さった2本の鞘に収まったままの刀を握る。

 まずい。この構え、2本同時に抜刀術を放つつもりか。


「二刀抜刀」


 くっ。結界が解けない。紫の力を使っても解くことができないとは。


「ハヤブサ」


 解けた! と思った、次の瞬間。強い衝撃とともに私の体は吹っ飛び、校舎の壁を突き抜け、反対側にある別の棟の校舎の壁を突き抜け、天井も突き抜けたところで止まり、屋上の真ん中に転がった。


「……なんて……威力……だ。ごふっ。妖……力、を。こめらる……だけ、こめた……な」


 血を吐いているのがわかる。呼吸も苦しい。だが、治療さえすれば死にはしないだろう……。

 アキラが翼を羽ばたかせてこっちにやってきた。そして、私のすぐそばに着地する。


「ごふっ。見事……だ。アキラ……」

「藍さん……」

「アキラ……。頼みが……ある。紫様を、止めて……くれ」

「え?」

「私も……本当は………こんな戦いをしたかったわけでは、ごふっ。……はぁ、はぁ。ない、のだ。紫様、の、命令だから……やっていた。はぁ、はぁ」


「それにしては、私を倒す気満々でしたね」

「はぁ、はぁ。あたり……まえだ。私は、お前を、倒した……あと。はぁ、はぁ。霊夢と戦い終って、油断している、紫様を。さっきの奥の手を、使って……倒す………つもり、だったのだ」

「なるほど。でも、だったら僕らと戦っても」

「私は……式だ。命令には……逆ら、えん」

「……もともと、紫さんは倒して止めるつもりです。任せてください、藍さん」


「ああ。頼んだ……ぞ。私は、少しでも、早く……治るよう。治療、を。開始する」

「どうやってです。藍さん、動けそうにもないじゃないですか」

「八尺瓊勾玉よ。傷をいやせ」


 首にかかっている勾玉がわずかに光り出す。


「はぁ、はぁ。三種の神器、八尺瓊勾玉、のもつ、力は……治癒。レプリカの……ため、簡単な、傷しか治癒できない。が、治癒促進の能力、も、見込める」

「藍さん。それで大丈夫なんですか?」

「気にするな……。私は九尾、だ。少しでも、治癒促進がかかれば、どんな傷でも、癒せる……はずだ」

「わかりました。では、行ってきます」


「まて。アキラ」

「はい?」

「おまえには、教えなければ、ならん。この作戦の発案者を」

「発案者? 紫さんじゃないんですか?」

「違う……。この作戦の発案者は、はぁ、はぁ。陰陽師枝垂。お前の祖父だ」


「え?」

「枝垂と私たちは古い友人でな。この作戦はあいつが考えたものだ。作戦に参加しないか。と言われてな。私は反対したのだが……。紫様がなぜか参加すると……」

「じいちゃんが……」

「アキラ。枝垂は私や紫様よりも強い。もしも戦うことになったら、勝つことは不可能だ。それでも、霊夢を助ける。というのか?」

「当たり前でしょ。誰が敵だろうと、霊夢を守る。私は、そう決めたのよ」

「そうか………」


 陰陽師の血筋には逆らえんか……。


「枝垂の能力は、『触れたものの能力を自分の力として使える程度の能力』だ。お前の能力も、紫様の能力も、すでにコピーされていている。覚えておけ」

「ありがとうございます。藍さん」


 アキラはそういうと、翼を思いっきり羽ばたかせ、飛んで行った。


「フフフ。アキラには嘘を言ってしまったな……。ごふっ」


 私は思いっきり血を吐く。今まで我慢してた分だ……。


「フフフ。九尾だから心配するな。か……。それでよく信じてくれる………ものだ」


 さすがの私も、あの一撃はつらい。おそらく、陰陽師の血筋によるものだな。

 『敵と定めた者には、たとえ親であろうと容赦をしない』

 陰陽師の一族はその気質で最強と言われることとなった。その気質が、血の薄れたこの現代でも、いまだに残っているのだな……。

 本人は私を止めるつもりで力を込めたのだろう。だが、無意識のうちに私を殺す一撃となった……。


「フフフ。ごふっ。さすがの私も、これは本格的に治療を受けなければ………。ダメだ」


 アキラ。後は任せたぞ。

 私は、あの世でお前たちが止められることを見守らせてもらおうか……。

 紫様を、頼んだ……ぞ。アキ………ラ。


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