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東方妖刀録  作者: 雨月
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その頃の八雲紫5


「枝垂か……」


 私は博麗神社に向かっている。紫様が枝垂に負けるとは思えないが、あのメリーの慌てよう、なにかあったのかもしれない。急がないと。

 よし。最速で飛んだからいつもより早くついた。


「霊夢! いるか」

「ん? 何よ、藍。そんなに慌ててどうしたのよ」


 すぐに霊夢が出てきた。


「すまない、霊夢。少しの間、私の代わりを務めてくれないか?」

「は? 何言ってるのよ、藍」

「紫様がピンチらしくてな。すぐに助けに行きたいのだが、私は紫様の代わりに『幻と実体の境界』を今、守っている。幻想郷から出ることができないのだ。そこで霊夢。少しの間、私の代わりに結界の維持をしてほしい」


「……まぁ、いいわよ。あんたと紫に用があったし。今日中に終えて紫と一緒に来なさい。それが条件よ」

「わかった。約束しよう」

 




「はぁ。はぁ」


 枝垂のやつ。まさかこんなに強いなんて。


「そろそろあきらめたらどうじゃ?」

「………」


 私の能力に、天狗の風。博麗の巫女の力に魂魄の剣技。ほかにもあるでしょうね……。このままだと勝てない……。


「紫様!」


 この声は、

 後ろからいくつもの炎が枝垂に飛ぶ。


「無駄じゃよ」


 枝垂は刀を横に振るうと、風が吹いて火を消す。


「藍!」


 振り返ると、メリーたちを入れていたスキマから藍が出てきた。


「藍。結界は」

「霊夢に頼んできました。今日中に戻れ。と言われましたが……」

「わかったわ」


 なら、急いで終わらせないとね。


「久しぶりじゃの。藍」

「枝垂か? 老けたな」

「お前らと違ってわしは人間じゃ」

「藍。枝垂は私の能力、天狗の風、博麗の力、魂魄の剣技を使うわ。ほかにもありそうだから、注意して」

「そうですか。わかりました」


 そうよね。藍もおど……え?


「ここに来るまでの間にメリーから聞きました」

「そう……」


 ありがとう。メリー。


「行くわよ。藍」

「その前に紫様。どうして枝垂と戦っているんです?」

「え?」


 ……なんでだったかしら。


「紫様。理由もなく戦っていたんですか?」

「なんでだったかしら……。蓮子が襲われそうになってたからつい攻撃しちゃったのよね……」

「そうじゃな」

「もう戦う理由なさそうですね……」


 藍はため息をつく。


「いや。戦う理由ならあるぞ? わしの目的を聞けば、紫。お前は怒りに身を任せてわしと戦う。そして、その後。寝ながら考える。枝垂の考えが正解なのかもしれない。これしか手がないのかもしれない。とな」

「意味不明よ」

「目的とはなんだ。枝垂」

「その前に1つ、聞きたいことがある。もしも博麗の巫女が子をなすことなく死すれば博麗の巫女はどうするのじゃ?」

「なんでそんなこと聞くのよ」


「なに。ただの興味があるだけじゃ」

「………。この外の世界にいる博麗の血を引く子を探して、見つけたらその子に適正があるかどうか調べる。適正がないならまた探して、適正があるなら次代の巫女になってもらうことになっているわ」

「そうかそうか。それならよかった」

「よかったって何よ。適正のある子を探すのもとてつもなく大変なのよ」

「現在、幻想郷は2つの結界によって外界から遮断されておる。『博麗大結界』と紫の作った『幻と実体の境界』にな」

「そんなの常識じゃない。『博麗大結界』も私が提案したのよ」

「だが。完全に外と遮断されているわけではない。外来人の存在がそのわけだ」


「何が言いたいのよ」

「わしは幻想郷から離れてからずっと研究をつづけたのじゃ。幻想郷とこの外の世界を完全に遮断するために」

「そんな必要ないじゃない。幻想郷はこれでうまくいってるわよ」

「そうかの? 外来人は本来、忘れられた人間のみのはずじゃ。それなのに、忘れられたわけでもないものが幻想入りする事例もたまにある。そして、60年周期の大結界が弱まるものも、本来あってはならんことじゃ」

「………」


「わしは『博麗大結界』と『幻と実体の境界』2つを強化する方法を見つけたのじゃ。博麗の巫女の血肉を使うことによってな」





「霊夢を………人柱にするつもり?」

「そういったのじゃが、聞こえなかったか? それはすまなかったな」

「紫様……」

「………罔両『ストレートとカーブの夢郷』」


 紫様のスペカが枝垂に向かって飛ぶ。

 それを枝垂は軽々と避ける。

 避けた位置に向かって!


「狐火」


 火炎弾をいくつも作って私は枝垂に向かって飛ばす。


「無駄じゃよ。藍」


 ? 刀の刃の部分が黄色に光りだした。


「妖刀融合」


 なに!?

 枝垂が黄色い光に包まれ、光が収まると、一瞬、枝垂の影が見えたが、すぐに消え私の狐火をよけた。


「妖刀融合ですって」

「バカな」


 ありえない。妖刀融合は妖刀と心を交わせなければできない、妖刀使いの最終奥義。枝垂が使えるものとは思えない。


「わしの持っていた刀が妖刀だというのは気づいておったろ? なぜ操られないのか。疑問には思わなかったのか?」

「思ったわよ。でも、何かしらの方法で回避しているのだと思ったわ」

「その通りじゃ。わしは孫の『妖刀を操る程度の能力』を使っておるのじゃよ」

「孫……ですって? しかも『妖刀を操る程度の能力』!?」

「ん? アキラを知らんのか? 一月ほど前に幻想郷に行ったはずじゃが?」


 そういえば、


「一月ほど前、神社に行ったとき、外来人が1人いました。誰かに似ているような気がしていたんですが………。思い出してみれば、枝垂の若いころの面影があります」

「そうじゃ。そいつがアキラ、わしの孫じゃ。アキラは妖刀を持っても操られることなく、使うことができる能力があることがわかっての。わしの能力で取っておいたのじゃ」


 まずい。電撃のようなものが見えることから考えると、あの妖刀の能力は雷だろう。

 そして、多分、妖刀融合によって付加される能力は、高速移動。といったところか。


「………」


 紫様?


「帰るわよ。藍」


 え?


「紫様!?」

「返事を待つぞ、紫。藍」


 手伝うわけがない。霊夢は現在の幻想郷に必須の存在。いくら結界を強化するためといえど、霊夢を犠牲にしたほうが損害が大きすぎる。

 私は紫様の後についてスキマに入る。そして、家に戻る。


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