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東方妖刀録  作者: 雨月
40/59

その頃の八雲紫4

「紫さん、紫さん」

「なに? 蓮子」

「メリーって小さいころどんな子だったんですか?」

「ちょっと蓮子。そんなこと聞く暇があったらお母さんの探している人探すわよ」

「メリー。そうは言うけど、これまでもずっと調べてたじゃない。それにこれから岡崎教授にわざわざ来てもらって知らないか聞く予定じゃない」

「あら? 岡崎教授には聞いてなかったの?」

「実験のため、とか言ってハワイに遊び行ってました。今日帰る予定です」

「……。あの人は相変わらずね」


 紫さんはため息をつく。


「ただいま。来たわよ」


 扉が開いて岡崎教授とちゆりがやってきた。


「お帰りなさい。岡崎教授。ハワイはどうでした?」

「いやー。楽しかったわよ。研究も進んだし」

「何言っているんだが。四六時中遊んでいたくせ、にっ!」


 いつもの通り、ちゆりが教授に殴られる。


「痛いんだぜ、ご主人」

「それで? 私に何の用?」

「人探しをしているんです。岡崎教授の力を借りたいと思って」

「そりゃ無理だぜ、マエリベリー。ご主人は人の顔とか覚えられなっ」

「うるさい」


 またも殴られる。ちゆり、いい加減学習しようよ。


「写真とかないの?」

「あります。お母さん、写真貸して」

「はい」


 紫さんがメリーに写真を渡す。


「あら。八雲さん。いらしていたんですね? 気づきませんでした」

「いつも娘がお世話になっているようで」

「いえいえ。マエリベリー・ハーンは手のかからない、いい生徒ですよ」


 なに? この2人。2人の視線がぶつかっているあたりから火花が飛んでいるように見えるんだけど。この2人そんなに仲悪いの?


「教授。この人です」

「どれどれ?」


 例のおじいさんの写真を受け取る岡崎教授。その横からちゆりも覗き込む。


「あら? この人。見たことあるわね」

「まじか。顔を覚える気もないご主人が覚えているなんていったいどんなっ――」


 またも殴られるちゆり。

 ちゆり、あなた岡崎教授のこと嫌いなの?


「結構珍しい苗字が書いてある家に何度も出入りしていたから覚えているのよ」

「ご主人が覚えられるほど珍しい苗字なのか。どんな苗字なんだぜ?」

「陰陽師。って書いてあったわ。結構な豪邸で陰陽師なんて名字聞いたことなかったから珍しくて覚えてたのよ」

「なるほど。つまり、その家があいつのすみか……。その家はどこにあったの?」

「隣町ですよ。結構な豪邸だったので見ればわかると思います」

「そう。ありがとう」


「あら。妖怪のあなたがありがとう。なんて言葉を知っているんですね」

「そりゃあ知っているわよ。知識があるんだから」


 うわ。いつでもケンカをはじめそうな空気に。


「ちょっと、メリー」

「なに? 蓮子」


 小さな声でメリーに話しかける。


「この2人、仲悪いの?」

「うん。かなり仲が悪いわね」

「なんで? というか、どこで知り合ったの?」

「岡崎教授、昔なにを調べるために幻想郷に乗り込んできたことがあって。博麗の巫女って人にやられた。ってお母さんから聞いたわよ」

「それって岡崎教授の『非統一魔法世界論』のこと?」


「多分そうだと思うわよ。で、帰るとき、船に乗り込んできたお母さんとも戦ったって言ってたわね」

「それで仲悪いの?」

「馬が合わない。と思ったってお母さんは言ってた……。多分、岡崎教授も同じこと思ったと思う」

「ねぇ。もしもこの2人がこの場でケンカしたらどうなると思う?」

「そうね……。数時間は決着がつかないと思うわ。そして大学はよくて廃墟と化すと思うわ」


「……紫さん、スキマ展開しているんだけど。岡崎教授も十字架みたいなものが出ている」

「え? ちゆり。岡崎教授を止めて」

「そりゃ無理だぜ、マエリベリー。ああなったご主人を止められるわけないだろ」

「ダメもとでやって。私はお母さんを止める」

「仕方ないな。宇佐見。このパイプ椅子、借りるぜ」

「え? 別にいいけど」


 パイプ椅子なんて何に使うの?


「とまれ、ご主人!」


 そういってパイプ椅子を岡崎教授の頭に振り下ろすちゆり。

 ちょっ。なにやってるのよ、ちゆり。


「お母さんストップ!」


 メリーは紫さんの前に行き、両手を開いて、紫さんにとまるように言う。


「ちゆり……」

「……ごめんなさいね。メリー」

「さて。どんな罰がいい?」

「ちょっ。なんでなんだぜ。ご主人」

「うっさい。助手のくせに教授を殴っていいと思っているの?」

「止めるためなんだぜ」

「問答無用!」


 ちゆりと岡崎教授は部屋を走って出て行った。ちゆり、がんばれ。


「さて。私は例の家に行くけど。あなたたちはどうする?」

「えっと……」

「もちろん! ついていきますよ!」


 メリーが返事に困っているので、私が大声で答える。


「はぁ。断ってもどうせ来るんでしょ? いいわ。ついてきなさい」

「やった。だから紫さん。好き」

「ありがと、蓮子」


 紫さんがスキマを開く。そして紫さん、メリーの順番に入り。そして私が最後にスキマに入った。そして、スキマを通り抜けると、


「これは。かなりの豪邸ね……。しかも和風」


 巨大な門がある道についた。


「いいじゃないですか。こういう家、私好きですよ」


 表札には陰陽師。と書いてある。ここで間違いないみたいね……。


「さて。入りましょうか」

「突入ですね」


 そういって一歩足を前に出すと、


「待ちなさい。蓮子」


 ととっ。


「なんですか。紫さん」

「……たった今、結界が貼られたわ。この家を囲むようにね」

「ええ!?」

「うん……。急に家が見にくくなったから結界だと思う」

「多分、私が近づいたら発動するようになっているのね」


「紫さんが近づいたらってどんな限定的な結界なんですか」

「私が追いかけているんだから、私専用を作ってもおかしくないでしょ」

「そうですね。で、どうやって入るんです? 後日にします?」

「いいえ。これだけ大きな結界、どこかに切れ目があると思うわ。それを探しましょう」


 なるほど。でも、


「私、結界見えないんですけど?」

「大丈夫よ。蓮子でも探す方法があるわ」

「おお!」


 一体どんなマジックアイテムをくれるのか。


「体当たりでも手で触れるだけでもいいから、手探りで切れ目を探すのよ」

「それおかしくない!?」

「何がかしら?」

「そこは普通、私でも見れるようになるマジックアイテムを渡すところですよね!」


「探せばあるかもしれないけど。この結界はさすがに予想外だから探してもいないわ」

「むむむ………」

「さてと。作戦を説明するわね。蓮子はこの門の周辺を。門を南として、東北東の位置に私。逆の西北西にメリーを置いて、それぞれ切れ目を探すわよ」


「ちょっ。私見えないからメリーと同じ位置に」

「ダメよ。少しでも時間を短縮しないと」

「でもお母さん。切れ目見つけたらどうするの?」

「あなたたちの近くに小さなスキマを常に付けておくわ。切れ目を見つけたら見つけた。と言いなさい。そうすれば残りの2人に声が届くようにしておくわ」

「わかったわ」


「いや。ちょっとメリー。私納得してないから」

「じゃ。行くわよ」


 紫さんはそういうとスキマを開いてそのままメリーと一緒に入って行ってしまった。


「ちょっ。紫さん! メリー!」


 手を伸ばすけど、スキマが閉じて手が届かなかった。そして、近くに小さなスキマができた。


「これに声を出せばいいわけね……」


 私はため息をつく。とりあえず、結界があると思われる位置に手を伸ばしていくと、柔らかい透明な壁にあたる。


「どうしようかな……」


 よし。ためしに結界に向かって体当たりをしてみよう。


「これで結界壊れたりして」


 思いっきり助走をつけて結界に向かって体当たりする。すると、

 何か、すり抜けるような感触があると、門の目の前まで来る。そして門が開いて中に入った。


「え? 結界突き抜けた?」


 一体、何が起きたのか数秒理解できなかった。


「そうだ。紫さん!」


 後ろを振り向くけど。スキマがなく、元の位置に戻ろうとすると門が勝手にしまった。


「やばっ」


 これは招き入れられて閉じ込められたかな……。


「なかなか頭のいいお嬢さんのようじゃな」


 後ろから男のしかも老人の声が聞こえた。


「陰陽師、枝垂……」

「その通りじゃ」


 写真の老人が立っていた。腰には鞘に刺さった日本刀。


「私を人質にでもするつもり?」

「人質? そんなことは考えてもなかったが……。それは面白そうじゃの」

「……人質じゃない。って何が目的なのよ」

「ふむ……。興味深い。それだけじゃよ」

「興味深い?」


 まさか。私の能力をもうコピーされた? この距離で? かなりあるわよ。


「紫がなぜ、どこからどう見ても普通の女子おなごのお主に助けを求めたのか。そして、紫とどういう関係なのか。興味があるのじゃよ」


 なるほど……。まだ私の能力はコピーされてないみたいね。

 まずは、どうやってこの結界から抜けるか考えないと……。


「一応言っておくが、この結界から抜けることは不可能じゃ。そして紫が来ることもない」


 まずい。私の能力は戦闘用じゃないのに。


「ふむ……。能力持ち、かの? しかし戦闘に使える能力ではなさそうじゃの」

「そんなに能力が気になるの?」

「まあの」

「私の能力は何にも使えないわよ。ただ、星を見て時間を知り、月を見て場所を知る程度よ」

「ほう……」


 言わない方がよかったかもしれない……。


「良い能力じゃの。お主は生まれる時代を間違えたのかもしれん。宇宙に自由に行ける時代ならば、その能力は素晴らしい能力となっていただろう」

「それは初めて言われたわね」

「そうか……」


 私は門に向かって走り出す。


「無駄じゃよ。ちょうどいい、その時間を知る能力は興味がある、少し見せてもらおうかの」

「くっ。開かない」


 どんなに引っ張っても押しても門があかない。まずい。


「飛行虫ネスト」


 え? この声は。

 声のした方を見るといくつものスキマが浮いていてそこから光線がいくつも発射される。


「ちっ」


 枝垂はそれを高々とジャンプして避けると、後ろに下がる。


「遅れてごめんなさい。蓮子」

「紫さん!」

「久しぶりね。枝垂」

「久しぶりじゃの、紫」


 ひっ。なにこの2人。にらみ合っているだけなのに……。まるで私の方が睨まれているような感じが……。


「蓮子。スキマの中に入ってなさい。メリーもいるわ」


 私の隣にスキマが開く。


「蓮子。早く」

「メリー」


 助かった……。


「なぜじゃ、紫。どうやってこの結界を抜けた」

「簡単なことよ。私はあなたが蓮子だけを結界内に連れ込むと思ったのよ。だから蓮子の体にスキマをつけておいたのよ」


 え?


「そのスキマを使って私が入ってきたわけ」

「ふむ……。なるほどの」

「さて。枝垂。私を怒らせておいて、無事に住むと思っているのかしら?」

「フフフ。お前との喧嘩も4,50年ぶりじゃの」

「飛行虫ネスト」


 紫さんの周りからスキマが開き、そこから先ほどと同じ光線がいくつも飛ぶ。


「飛行虫ネスト」


 え? 

 枝垂の周りからも同じようにスキマが出てきて、同じような光線が飛ぶ。

 光線同士がぶつかり合って、お互い消える。そして、


「ちっ」


 紫さんの頭の上。はるか上でスキマが開くと、そこから止まれなどの標識などがいくつも飛び出してきて、それが枝垂に向かって落ちていく。

 ちょっと紫さん。なんでそんなものスキマに入っているんですか。

 枝垂がにやける。そして、右手を横に思いっきり振る。すると、

 暴風が吹いて標識が風に飛ばされ全然違うところに落ちた。


「風?」


 おかしい。風を操る能力を持った人はこの場にはいないはず……。


「今の風。何よ」


 紫さんも不思議に思っているみたいで、枝垂に聞く。


「紫。お主らはわしの能力を勘違いしているだけじゃよ」

「勘違い?」

「そうじゃ。わしの能力は近くにいる者の能力を使える。ではない」


 え?


「わしの能力は、『触れた者の能力を自分の物として使うことのできる程度の能力』じゃ」


 触れた人の能力を?


「な、なによそれ……」


 さすがの紫さんも驚いているみたいね。


「とはいっても限度はある。わしの能力はPCの主記憶のようなものだと考えてみるのじゃ。触れた者の能力の強さに応じてその容量が違い、容量限界までならいくつも能力を入れられるのじゃ」

「なるほど。私の能力と。多分、文の能力ね」

「そして、わしが会得できる能力は、その者の『~程度の能力』以外もできる。こんな風にの!

 夢想封印!」


「なっ。それは博麗の」


 紫さんはそれだけ言うと、空を飛び始める。そして枝垂からいくつもの光の球が出てきてそれが紫さんに向かって飛ぶ。


「くっ。飛行虫ネスト」


 紫さんは止まって後ろを振り向くと、スキマを開いて光線をまたも出す。そして光の球にぶつけて壊す。そして、1つ残ると、扇子を取り出して扇子を思いっきり振りかぶって残った光の球にぶつけて壊す。


「廃線」


 紫さんが地面に着地すると、カードを取り出して、


「『ぶらり廃駅下車の旅』」


 枝垂の後ろに巨大なスキマができてそこからボロボロの電車が出てきた。

 枝垂は刀抜きながら後ろを振り向く。そして出てきた電車を真っ二つにして避ける。

 2つに分かれた電車は塀に轟音を立てながらぶつかる。


「今の剣技……。まさか」

「刀一本で……。電車を真っ二つって……」


 ふつう無理でしょ……。これが……、能力者同士の戦い……。


「容赦ないの。紫」

「ふざけてるわね……。私のスキマに、天狗の風。そして、博麗の巫女の力に魂魄の剣……」

「まだあるぞ?」

「でしょうね」


 このままじゃ、


「ちょっと、メリー。やばくない?」

「……」


 メリーのほうを向いて聞くけど、メリーは答えず、スキマの奥の方をじっとみていた。そして、突然走り出した。


「ちょっと。メリー!」

「蓮子はそこにいて!」

「そういうわけにはいかないでしょ!」


 すぐに追いかける。そして、すぐにスキマを抜けて、きれいな日本家屋のある場所に抜けた。


「ここは?」

「幻想郷。お母さんの住んでいるところ。普通は来れない」

「幻想郷! ここが!」


 やっと来れた。

 ってそんなこと言ってる場合じゃない。メリーが家の中に入っちゃった。


「お姉ちゃん!」


 お姉ちゃん? もしかして話に聞く、九尾の狐?


「ん? おお。メリー。久しぶりだな」

「お姉ちゃん」


 金髪で九本のしっぽが生えた女性が現れた。

 おお。この人が、


「どうした? メリー」

「お母さんが……」

「紫様? 紫様がどうした」

「今、お母さん。枝垂って人と戦ってて」

「枝垂だと!? ……どこだ、メリー」

「スキマを通ればつくと思う。私たちもそうやって来たから」

「私たち?」


「えっと。はじめまして?」


 九尾さんがわたしの存在に気づいたみたいで、私の方を見たので一応挨拶する。


「宇佐美蓮子。といいます」

「おお。君が紫様の言っていた。八雲藍だ。よろしく頼む」

「お姉ちゃん。そんなこと言ってる場合じゃないよ。お母さんが」

「そうだな。しかし、私は今、幻想郷の結界の1つ。『幻と実体の境界』を紫様の代わりに維持をしているため、幻想郷に長くはなれるわけにはいかない……」


「でも、お母さんはよく外に」

「紫様は外からでも維持ができるが、私は代理なのだ。ここ、もしくは、最低でも幻想郷からは出ることができない。誰かが結界を変わりに維持してくれるのならいいのだが……」

「そんな……」

「………そうだ」


 藍さん。何か思いついた?


「少し時間がかかるが、すぐに向かう。先に戻っていてくれ」

「……。わかった」

「メリー。行こう」


 私はメリーの手を取って家を出る。藍さんも一緒に出て、空を飛ぶ。

 そしてあっという間に見えなくなってしまった。


強敵。陰陽師枝垂。登場。


何でこんなキャラ作ったんだろう……。倒し方が思いつかないよ。チートすぎて。

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