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東方妖刀録  作者: 雨月
35/59

修業

 紅魔館。


「それで? 何か謝ることはあるかしら?」

「な、なにかありましたっけ?」


 正座で床に座る僕。そして、パチュリーさんがテーブルに座り、なぜか怒っている。何かしたっけ?


「剣術のことよ。あなた、妖夢に剣術を学ぼうとしているみたいじゃない」

「あ、ああ。そのことですか」

「ええ。そうよ。あなた、死にたいの? 死にたいのなら勝手に死になさい。と言いたいところだけどね。一応あなたは私の弟子なんだから過労死とかやめてほしいのよ」

「パチュリーさん? 何の話か全然分からないんだけど」

「………。毎日、妖夢から剣術を学び、そして私から魔法を学ぶ。ねぇ? 過労死したいの?」

「過労死するほどやってませんよ」

「………。はぁ」


 パチュリーさんはため息をつく。そして、


「もういいわ。アキラ、魔力を感じることができた?」

「あ、うん。いつも使っているものと違う力が減るのは感じ取れた」

「十分よ。今日は、魔力を手のひらに集め、それを球として放出する練習よ」

「う、うん」

「ああ。言い忘れてたけど。妖刀融合はなしね。人間状態でやりなさい。いいわね」

「わかった」


 僕は右手を広げる。そして、魔力、と思われる力を手に平に集めるイメージを作る。


「ええ。いいわよ。そのまま。十分集まったと思ったら、球をイメージしなさい」


 集まって力で球を作るイメージをする。そして、それを手に平に乗るイメージをする。


「……。本当にすごい才能ね。なんでこんなに才能にあふれているのかしら」


 右手の平に青色の光る玉がのっていた。


「じゃあ、次は……。その魔力球をそこのサボっている小悪魔にぶつけていいわよ。やり方は自分で考えなさい」

「ええ? いいのかな……」

「かまわないわよ。ほら、寝ている隙にやりなさい。早くしないとおきるわよ」


 うーん……。こうかな?

 僕は手を小悪魔さんに向けると青色の球が放たれ、椅子に座って眠っている小悪魔さんの頭にあたって椅子ごと倒れる。


「頭に当てるとは。なかなかやるわね」

「いやいやいや。たまたまだから」

「いったーーーーーーー」


 小悪魔さんが起き上がる。そして、


「誰ですか。今、私を叩いたの」


 と大声であたりを見渡す。


「叩いていないわ。弾幕を一発当てただけよ」

「同じです。頭とか超危険です」

「サボっているあなたが悪いわ。さっさと仕事をしなさい」

「少しは休ませてくださいよ~」

「……もう寝てから3時間はたったわよ。さっさと仕事なさい」

「え? もうそんなに?」

「わかったら仕事! もう一発当てるわよ」

「は、はい~」


 小悪魔さんは背中の小さな翼を羽ばたかせてどこかに飛んで行ってしまった。


「さて。続き、はじめるわよ」






 数時間後。アキラが帰った後。


「それにしても……」

「どうしたんですか? パチュリー様」

「いや……。アキラのことでね。ちょっと……」

「?」

「戦いの才能がありすぎるのよ。今日の魔力球だって、1回でいきなり成功するわけが……」

「え? あれを1回で終わらせたんですか?」

「そうよ。まさかの1発よ。しかも、魔力も漠然としか感じてなかったのに」

「なんか、怖いですね」

「ええ。私も同じ気持ちよ」








 1週間後。冥界、白玉楼。

 ギンッ。ギンギン。

 と、金属がぶつかり合う音。

 私は今、アキラと模擬戦をしている。

 今、私たちが使用している刀は1本ずつ。とはいえ、たった1週間で基礎を終えて私と模擬戦をしている。


「はあ!」


 思いっきり刀を振り、アキラを吹き飛ばす。


「ぐっ」


 ありえない。たった1週間で、私と模擬戦するほどにまでになるなんて。


「ここまでにしましょう」

「はぁ。はぁ。はい」


 私は刀を鞘にしまう。

 アキラも妖刀融合を解いて元の男の姿に戻る。そして、手に持つ妖刀を鞘に納める。


「ありがとうございました。妖夢さん」

「いえ。本当にこの程度でいいのですか?」

「大丈夫です。というより、これ以上やると、パチュリーさんに怒られるので……」

「ああー」

「それでは、失礼します。ありがとうございました」

「気を付けておかえりください」


 アキラが妖刀融合して氷の翼を作ると空を飛んで、門を超えて行った。


「………」


 アキラの出自。調べてみる価値がありそうですね。


「妖夢~? どうしたの~?」

「あ、幽々子様」


 幽々子様。いつの間に縁側に?


「アキラは帰ったの?」

「ハイ。ついさきほど」

「そう……」


 そういえば、


「あの、幽々子様。アキラが初めて来たとき、なにか言いかけてましたよね? 何を言いかけていたのですか?」

「あら。気になるの?」

「はい。ちょっとアキラについて調べようかと思っていたところです」

「ん~。調べる必要はないと思うけどね~。そろそろ紫が行動に移しそうだし」

「は? 紫様? なぜそこで紫様が出てくるのですか?」

「……。わたしの推測が正しければ、アキラはあいつの孫ね。面影があるし、年数もちょうどあのぐらいの孫がいてもおかしくない頃だし。才能あふれる。っていうのもあいつの孫だったらそれで理由がつくわ」

「あいつ? あいつとは誰ですか? 幽々子様」

「ふふ。自分で考えなさい」

「幽々子様!」

「さて、紫はどう出るのかしらね」


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