剣術
そして、立派な屋敷に到着する。
「ここは?」
「白玉楼。冥界の管理人の屋敷ね」
「管理人?」
「そうよ」
霊夢は空いている門から何も言わずに入っていく。そして、
「あらあら。大きな音がしていたと思ったら、あなたが来たからなのね」
「さっそくだけど、入ってもいい? 幻想郷の新しい住人のことも紹介したいから」
「その子? いいわよ~。妖夢~、お茶~」
「は、はい。ただいま入れます」
妖夢さんが走って屋敷の中に入っていく。
「こっちよ~」
なんか、頭に幽霊のつけるような三角形の布のついている帽子をかぶった女性についていく。そして、客間のようなところに入る。妖刀モードを解除して男に戻る。
「まずは紹介するわね。こいつはアキラ。外来人よ」
「さっき女の子だったような……?」
「能力よ。一時的に妖怪化する能力と思ってくれていいわ」
「ふ~ん」
「妖刀ですか。珍しいですね……」
「アキラ。この2人は、えっと、西行寺幽々子と、魂魄妖夢よ」
「西行寺家の庭師をしております、魂魄妖夢といいます。先ほどは失礼しました」
「西行寺幽々子。亡霊よ~」
「アキラです。よろしくお願いします」
亡霊って、大丈夫なのかな……?
「霊夢。用事は紹介だけか?」
「違うわよ。アキラがちょっとあんたに頼みがあるから連れてきたのよ」
「私に用事?」
「あの、妖夢さん。僕に剣術を教えてもらえませんか?」
「剣術を?」
「はい」
「剣術ですか……。私には素人の太刀筋には見えませんでしたが……」
「え? 僕は剣術なんて習ったことないですけど……」
「天賦の才。でしょうか。……わかりました。基礎だけでいいのでしたら、お教えしますよ」
「あら。いいの? 妖夢」
「ええ。私は構いませんが……。幽々子様、構いませんか?」
「別にいいんじゃない~? ちゃんと仕事してくれているのなら」
「ありがとうございます。それでは、アキラさん。いつやりましょうか」
「そうですね……。最近、魔法の勉強も始めたもので。パチュリーさんに呼び出された日以外なら大体大丈夫だと思いますが」
「わかりました。それでしたら、今日、軽くやって。明日に本格的にやりましょうか」
「ありがとうございます、妖夢さん」
頭を下げてお礼をいう。すると幽々子さんが近づいてきた。
「アキラ。だったかしら? ちょっといい?」
「はい?」
「あなた……。やっぱりいいわ~。妖夢、お茶とお茶菓子を先に入れなさい」
「は、はい。わかりました」
2人はそういうと、屋敷に入って行った。
「じゃ、私は先に帰るわね。帰り方は妖夢にでも聞きなさい」
「うん。ありがとう」
「私はあの妖刀の情報を持っている妖怪を探すわ。暇だし」
「いいの?」
「暇だからよ」
霊夢はそういうと空を飛んで門をくぐらずに上を通って行った。
「わざわざ飛ぶ必要あったのかな?」
僕はそうつぶやくと、
「アキラさん。お待たせしました。それでは始めましょう」
妖夢さんがやってきた。
「まず、アキラさんの使用される武器は、妖刀だけですか?」
「そうですね」
「妖刀融合した時は、私と戦った時のように氷の刀を作ると」
「はい」
「その氷の刀。数に制限はありますか?」
「多分、ほとんどないと思いますね」
「なるほど。実際剣を合わせたところ、なかなかの強度はありそうでしたね。あの巨大な刀はただ大きいだけで強度はそこまでではありませんでしたが」
「そうですか? 刀と同じぐらいの強度だと思ったんですが」
「いえ。あの大きさではちょっと強度が物足りないですね。まぁ、その辺は別にいいでしょう。今回の話は剣術の話ですし」
妖夢さんは刀を1本抜く。そして、
「アキラさん。刀をいくつも作れるのでしたら、基本を教えた後、二刀流の戦い方を学んでみてはどうでしょう? いくつもの刀を使える練習をしておけば便利だと思いますよ」
「大丈夫かな……」
「意外とアキラさんは戦いの才能にあふれているようですし、すぐに会得できるかもしれませんよ」
「そんなことないと思いますが」
「始めましょう。今日は軽く」
僕は妖刀を抜く。そして、
「妖刀融合」
いつも通り、妖刀融合をする。そして氷の刀を作り出す。
「それでは。まず、素振りでもしましょう。ただ、適当に振るのではなく、ゆっくりと刀の軌道がきちんと円になるように振ってください。これが刀の基本です」
「円になるように……。こんな感じでしょうか?」
私はゆっくりと刀を縦に振るう。
「もっとゆっくり。円を意識してください。こんな感じです」
妖夢さんが試しに振ってみてくれる。
確かに、刀の軌道できれいな円ができている……
「円を描くように振るう。というのは先ほども言った通り基本です。それを忘れないようにしてくださいね」
「わかりました」
何度もゆっくりと刀を振って円になるように振るえるようにする。そして、今日はそれで終わって神社に帰ることになった。
「アキラ。お帰り」
「………霊夢がご飯を!?」
「何よ。いらないの?」
「いや、いるけど……」
神社に帰ってきたらなぜかテーブルにはご飯が置いてあった。まさか、霊夢が?
「いらないのなら私が全部食べるけど?」
「いえ。食べます」
すぐに座ってご飯を食べ始める。
「でも霊夢。なんで急に作り出したの?」
「別に。暇だったし。とくに理由はないわ」
「そう。それにしてもおいしいね。霊夢もこれからは手伝ってよ」
「い・や」




