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東方妖刀録  作者: 雨月
10/59

力の使い方 その2

 さてと、


「アキラに弾幕ごっこのルールでも教えようかしら」

「そうね。覚えておいて損はないし」

「よしっ。覚えたら再戦してやるぜ」


 魔理沙はそういって箒にまたがる。


「ま・ち・な・さ・い! 必ず返すとここにサインしてから行きなさい」

「ちょっと待て。それかなりやばい魔力を放っているんだが」

「当たり前よ。これはあなたが本を返さないとダメになる呪術が書かれているんだから」

「そんなものにサインしてたまるか!」


 何とか振り切って逃げる魔理沙。パチュリーはスペルカードを取り出し。


「日符『ロイヤルフレア』!」


 巨大な炎の塊を魔理沙に飛ばした。


「う。うわ!」


 魔理沙は避けるがスペルの余波で床に落ちる。


「大丈夫よ? 持って行っている1024冊返せば呪術の効果はなくなるわ」

「それでも嫌だ!」

「うるさいわね。さっさとサインしなさい」

「やめろ~~」


 私は2人を無視してアキラのところに行く。アキラはすでに診察を終えているらしく、紅茶を飲んでいた。


「永琳。アキラはどうだったの?」

「まったく問題なかったわ。本当に妖怪化してたのか聞きたくなるわ」

「妖力も使ってましたし。妖怪化していたのは間違いないと思いますよ」

「そうよね……。アキラ。念のため週1ぐらいで永遠亭に来なさい」

「永遠亭?」

「私の住んでいる場所よ。そこで診察をしているのよ」

「なるほど。わかりました」

「ちなみに。永遠亭は迷いの竹林というどんな人でも迷子になってしまう竹林の奥にあります」


 阿求が紅茶を飲みながら言う。


「え?」

「大丈夫よ。来るときは案内役をよこすから」

「それはありがとうございます。ってあれ? 誰でも迷子になるんじゃ?」

「永遠亭に住む人なら永遠亭までになら案内できるわ。あと、竹林の近くに住む妹紅も案内できるわね」

「妹紅?」

「竹林の近くに住む女よ。人里に何回か行けば会えるかもね」


 咲夜が紅茶をアキラのカップに入れる。


「咲夜。わたしにも頂戴」


 私は空いている席に座る。


「しょうがないわね」


 咲夜は紅茶を入れて、私の前に置いた。


「レミリアは?」

「妹様のところにいます」


 咲夜が遠くにあるソファのほうを見る。私もそっちを見ると、ソファにはフランが寝かされていて、すぐそこにはレミリアがいて、フランの髪を撫でていた。


「さて、アキラ。弾幕ごっこの説明をするわね」

「弾幕ごっこ? そういえば、さっき白黒の子が言ってたような」

「この幻想郷ではね、妖怪と人間が共存している。って話は聞いたわよね? 妖怪と人間の友達もいるぐらいで妖怪は力を失っていったのよ」

「なんで?」

「妖怪と言うのは、人間の恐怖によって生まれる存在なのです。つまり、人間と妖怪の仲がいいと恐怖心があまり生まれません。それによって妖怪は力を失ってしまうのです」


 アキラが聞いた疑問に稗田がすぐに答える。


「そんな時、異変が起きたの。吸血鬼異変と呼ばれている事件ね」

「吸血鬼?」


 アキラはレミリアたちのほうを見る。


「レミリアじゃないわよ。別の吸血鬼。今はもういないけどね。

 吸血鬼は最強種って言われているでしょ? その力を恐れて力の弱い妖怪からどんどん配下に着いちゃってね。その事件は解決したんだけど。この事件は妖怪の力が弱まったことが原因だから、何とかしようと考えたの。そして思いついたのが、スペルカードルール。通称、弾幕ごっこよ」


「ルールは簡単で、必殺技のようなものをスペルカードというカードに閉じ込めておきます。そして、それを始まる前に何枚使用するか提示します。カードをすべて使ってしまえば負け。あと相手攻撃にあたっても負けとなります」


 説明の途中でいきなり稗田が代わりに説明を始めた。そんなに説明したかったの? あなた弾幕ごっこできないじゃない。


「ためしに作ってみましょう」

 私は何も刻んでいないスペルカードを取り出した。

「これをポケットにでも入れて技を出せばスペルが刻まれるわよ」

「ん~。技と言われてもね」

「さっき魔理沙に向かって使ったのでいいんじゃない?」


 氷の礫の散弾に氷の壁。そして、氷の剣。結構いいスペルができそうだけど……。

 私は白紙のスペルカードをアキラに数枚渡す。


「外でやりましょう」


 稗田の一言で私とアキラ、そして永琳が外に出て庭に行く。稗田は一緒に外を出たけど、咲夜と一緒に人里に帰っていった。


「さて。やるわよ、アキラ。咲夜のさっきの言葉、覚えてる?」

「え~と、美鈴にかわりにお仕置きしておいて。だっけ?」

「そうよ。というわけでそこの門番めがけて技名を叫びながら攻撃してみなさい。それでスペルカードが完成するわ」

「いいのかな?」

「いいのよ。ちなみに言っておくけど、よけられないのはだめよ。どこかによけられる場所がないとルール違反だから」

「シューティングゲームみたいだな」


 なによそれ。シューティング? ゲーム?


 まぁいいわ。アキラが何かを考えている。おそらく技名を考えているんだと思うけど……。


「ヴォーパル・アイス」


 美鈴に手を向けると、魔理沙と戦った時に使っていた氷の剣がいくつもできて、美鈴向かって飛んで行った。

 美鈴は気づくことなく、いくつもの氷の剣を食らって、あまりの威力に門も破壊されてその土煙で美鈴の姿が見えなくなってしまった。


「やりすぎた?」

「いいんじゃない? ポケットの中のカードを取り出してみて」


 私の言葉にアキラがポケットからスペルカードを1枚取り出す。すると、そこには複雑な絵と、下のほうに、氷符『ヴォーパル・アイス』という文字が書かれていた。


「完成?」

「そうよ。今度はスペルカードとして使ってみましょう。カードを持って」

「カードを持って」

「名前を言う。そのカードだと、「氷符 ヴォーパル・アイス」っていうのよ」

「わかったわ。氷符『ヴォーパル・アイス』」


 すぐにアキラの近くに氷の剣ができて、それが土煙の中に入っていって、剣が地面に突き刺さる音が聞こえてきた。


「うん。いいじゃない」

「ちょっと。なんなんですか! 今のは」


 土煙から美鈴が出てくる。


「咲夜に頼まれたのよ。あなたのお仕置きをね。ちょうどいいからアキラのスペルカード作りにその体を貸してもらったわ」

「その言い方だとすごい卑猥じゃないですか……? アキラって誰です?」


 私はまだ融合状態のアキラを指さす。


「見たことない人ですね。新人さんですか?」

「そうね。外来人よ」

「外来人? 彼女、妖怪じゃないですか?」

「アキラ。妖刀モード解除しなさい」

「うん」


 私の言葉にアキラが頷くと、水色の光に包まれる。そして、男の姿に戻る。


「え? 男の人? 妖力を感じない。あれ?」

「アキラの能力よ。アキラは一時的に妖怪化することができるみたいなの」

「なるほど。面白い能力ですね。

 あ、自己紹介がまだですね。紅美鈴。と言います。ここの門番をしています」

「はじめまして。アキラです」

「霊夢さん。何をしていたんです?」

「あなたのお仕置き。あと、アキラのスペルカード作りね」

「なるほど。そういうことなら私も手伝いますよ」

「あら。それはありがとう。ならあなたはアキラのスペルの威力実験をお願い。体を使ってね」

「はい! ってあれ?」

「さぁ、アキラ。次のスペルを今すぐ決めて美鈴に攻撃しなさい」

「ちょっと待ってください! 私の役割ってもしかして攻撃を食らうことですか!?」

「そうよ」

「いやいや。だったらそこの薬師のほうが適任でしょ」


 まぁ、確かに。こいつ不老不死だっけ?


「いやよ。痛いじゃない」

「私だって痛いです!」

「二重結界 封魔陣」


 私は結界で美鈴の動きを抑える。


「ちょっと。何するんですか」

「さぁ。アキラ。やりなさい」

「いや。でも、さすがにこれはひどすぎるような」

「アキラがそういうならしょうがないわね……。でも、スペルはあと1枚、もしくは2枚作っておいたほうがいいわよ。1枚だけで戦うことなんてまずないわよ」

「ん~」


 アキラは考えるしぐさをする。そして、


「よし。美鈴さん。僕に攻撃してみてください」

「え? いいんですか?」

「一応思いついたのですが。実際できるかどうかわからないので」

「わかりました」


 メイリンが構える。そして、アキラはまたも妖刀モードになる。


「行きます! 彩符『彩雨』」


 虹色のいくつもの弾幕がアキラに向かって飛ぶ。アキラは右手を伸ばすと、


「チャッフ・アイス」


 そういうだけで何も起きなかった。しかし、

 メイリンの虹色の弾幕はある地点に到達するとその軌道がおかしくなり、弾幕からアキラを避けるように関係のないところに飛んで行ってしまった。


「こ、これは」

「なるほど。チャッフ・フレアを雪で疑似的に再現したのかしら」

「まさか1発で成功するなんて」


 美鈴は変な軌道になった自分の弾幕に驚き、永琳は感心するような表情をしていた。そして、アキラはすぐにポケットからスペルカードを取り出すと、そこに書かれたものを見て驚いていた。


「今のは防御用?」

「うん。身を守るやつもあっていいかな。って」

「べつに問題はないわよ」


 相手の弾幕の軌道を無理やり変える技っていうのはなかなか面白いわね。


「あと1枚作りなさい。さすがに防御系じゃ攻撃できないでしょ」

「やっぱり? う~ん」


 アキラは考えるしぐさをする。そして、


「体術でもいいですよ。どこかの鬼は相手を投げつけるっていうスペルがあったと思いますし」


 美鈴がそんなことを言ってくる。ああ。萃香ね。そういえばあったわね。


「じゃあ、こういうのはどうかな?」


 アキラはそうつぶやくと、氷が右手にできてそれがどんどん伸びてき、刀の形になる。


「アイス・ソード」


 へぇ。氷の刀……。剣術用ね。


「ちゃんと刃をつぶしておかないとだめよ」

「わかってるよ」


 アキラは氷の刀を振り回しながら言う。


「まぁ。とりあえず、それだけにしておきましょうか」


 私がそういうと、アキラは刀を消して妖刀モードを解除する。そしてポケットからスペルカードを取り出す。


「霊夢。余ったの返すよ」


 そういって空のスペルカードを出してくる。


「いいわよ。そんなの必要ないわ。あなたが持っていたほうがいいわよ。スペルすぐ作れるようにしておきなさい」

「そう?」

「そうよ。さっさとポケットに入れておきなさい」


 アキラはしぶしぶポケットの中に空のスペルカードを入れる。


「さて。アキラ。帰るわよ」


 私はそういってアキラの手をつかもうとする。


「ちょっと待ちなさい」


 が、パチュリーの声が聞こえ、その動作を止める。そして紅魔館のほうを見ると、パチュリーがこっちに向かって歩いてきていた。


「なによ、パチュリー」

「レミィがあなたたち今日は泊まったらどうだ? って言うから伝えに来たのよ」

「お断りよ。噛まれたらいやだもの」

「大丈夫よ。レミィは小食だから、人1人分の血を吸えないもの」

「血吸われるのが嫌だって言ってんのよ」

「最低でもアキラだけは泊まってもらう予定よ」

「なんでよ!」

「だって、妖力の使い方を学ばせないといけないじゃない。人間のあなたに教えられるの?」

「むっ」


 そりゃあ私は妖力なんて教えられないわよ。


「霊力と妖力は相反するものよ。使い方は似ているかもしれないけど、完璧に使えるようになるとは思えないもの。だったら普段から妖力を使っている人に師事してもらうほうが私はいいと思うけど?」


 くっ。正論ばかりだから困る。


「……しょうがないわね。アキラが噛まれるのを阻止するために私も泊まるわ。いいわよね?」

「ええ。レミィはそういうと思ってたみたいよ」

「フン」


パチュリーは屋敷の中に戻っていく。仕方がないので私も後に続いて中に入る。


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