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触手先生の身体測定

 スライム医師による“診察”が終わってから、そのまま次の部屋に運ばれる。

 身体は軽く、頭は冴えている。

 だが精神だけが、まだ現実に追いついていなかった。


「では次の工程に進みます」


 工程、という言葉が不吉だった。

 エルフ達に拘束され担架ごと運ばれ、次の部屋に移動する。

 廊下は広く、天井は高い。

 床には細かな目盛りのような線が刻まれている。


「……ここは、何だ?」


「身体測定室です」


 答えたのはエルフ看護士だった。

 淡々とした口調で、感情の起伏はない。


「測定?」


「はい。体格、筋肉量、可動域、視力、反射速度。それらは装備支給と配置決定に必要ですから」


 私は思わず眉をひそめた。


「捕虜にそこまで?」

「捕虜も魔王軍の管理対象ですから」


 魔王は確かに魔王軍と捕虜は基本的に同じ扱いと言っていた。

 だが納得はできない。

 扉が開く。

 部屋の中央に、円形の台座があった。

 周囲の壁面には、見たこともない器具や水晶板が並んでいる。

 そして……。


「……なんだ、あれは」


 台座の奥で、何かが蠢いていた。

 それはおそらく触手と言う奴だ、うねうねと蠢いている。

 一本や二本ではない。

 壁や床、天井の隙間から、無数の黒く艶のある触手が伸び、

 ゆっくりと、規則正しく揺れている。


「触手技師です」


 エルフは何でもないことのように言った。


「……技師?」

「測定担当です。とても優秀ですよ」


 触手の一部が、ひらりと揺れた。

 まるで、こちらを見ているかのように。


「では、台の上に」


 拒否権はなかった、この触手蠢く壁の中心の台に立たねばならないらしい。

 拘束具は外され、逃げる好機……には見えないな。

 前は触手だし後ろはエルフ達か……武器もないし何より降伏した身故従うしかないか。

 今度は寝かされるのではなく、立たされた状態だ。


「暴れないでください。測定誤差が出ます」


 誤差、という言葉に、妙な苛立ちを覚えた。

 次の瞬間、触手が来た。

 肩、腕、脇腹、太腿、背中。

 複数の触手が同時に身体をなぞり、巻きつき、離れていく。

 冷たくもなく、熱くもない、温い人肌のような温度だ。

 明確に身体全体を"触れられている"この感触は何とも……気持ち悪い。


「……っ」


 思わず息を呑む。


「筋肉量、良好」


 どこからか、くぐもった声が響いた。

 触手の根元から発せられているらしい。


「右肩、可動域やや制限。過去の外傷か」

「……ああ」


 言い返す前に、触手が肩関節を軽く引き延ばす。


「うっ……!」

「大丈夫です。断裂はありません」


 淡々と告げられ、触手は次へ移る。

 腹部、胸部、腰、脚。


「体脂肪率、低め。持久戦向き」

 聞きたくもない評価が、次々と積み上がっていく。


「視力測定に入る」


 触手の一本が、私の顔の前に来た。

 ゆっくりと曲がり、Cの形を作る。


「……見えるな?穴の空いてる方向を言え」

「……分かった」

「いくぞ」

「……左……右……上……下」


 触手が形を変えるたび、答えさせられる。

 その最中も身体を弄られて、隅々まで触られる。

 私は歯を食いしばって耐えるが私にも限界と言うのがある。


「……こんなやり方があるか!」

「合理的だ」


 それだけだった。

 測定が終わると、触手は一斉に引いていく。

 まるで何事もなかったかのように。

 拘束が解かれ、エルフが水晶板を確認する。


「測定完了です」

「……で?」

「あなた専用の被服と装備が支給されます」


 間もなく、布包みが運ばれてきた。

 広げれば襟付きのシャツに、肋骨福、キュロット、ベルト、靴下、乗馬靴。

 それらを履かされ、着せられたがそれらは、驚くほど身体に馴染んだ。

 動きを妨げず、縫製も丁寧で、堅牢な造りをしている。

 ……本当に忌々しいことに、非常に出来が良い。


「どうですか?」

「……悪くない」

「そうでしょう。規格に合ってない被服装備の支給は、触手技師が嫌うんです」


 意味が分からなかった、兵服に拘る軍隊がどこに有ろうか。

 我が連合軍など、皆各自で自分で調達した服装であった、軍が服を支給するなど聞いたこともない。

 部屋を出る際、私は一度だけ振り返った。

 触手は、すでに次の準備に入っている。

 そこに悪意はない。

 羞恥を与えようという意思もない。

 ただ、測って、分類して、最適化する。

 魔王軍は、人を“使い捨て”にはしない。

 だが“人”としても扱っていない。

 その事実が、妙に腹に落ちてしまった。


「我々は負け続ける訳だ」

 話のテンションが私の書いた作品感出てきますねぇ、自分で読み返しててもっと明るくならんのかと思ったりする。

 けど、ほら?差別化って重要ですよね?

 ただの趣味だけど。



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