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スライム先生

 エルフ達に運ばれ、眠らされて目が覚めた時、天井は白かった。

 ムラの無い真っ白な天井、さぞ腕の良い左官工が塗ったのだろう。

 流石は魔王城と感心する変な心の余裕が有った。


「生きてはいるか……」


自分の声が、やけに澄んで聞こえる。

喉の痛みも、胸の重さもない。

あれほど激しかった全身の鈍痛が、嘘のように引いていた。

考えてみれば、魔王の城となれば万人に一人とも言われる治癒士の一人や二人ぐらいいるのだろうな。


身体を起こそうとして、すぐに異変に気づく。

手足が固定されていた。

拘束具は金属ではなく、布に近い感触で、締めつけもさほどで痛みはない。

虜囚の身だ当たり前かと考えベッドに身を沈める。

暴れても無駄だろう、こうなればどうとでもなれだ。



「目覚めましたか〜?」


視界の端で、ぷるりと何かが揺れた。


緑色だった。

半透明で、つやつやとした、不定形の塊。

それが、私の枕元で上下に脈打っている。


「……何だ、貴様は」


「スライム医師です。消化器内科担当になります〜」


あまりにも朗らかな声だった。

戦場で聞くどんな挑発よりも、背筋が寒くなる。


「安心してください。切ったり焼いたりはしませんので」


その言葉が、逆に不安を煽った。


「治療方法はとても簡単です。体内に入って、直接診て、治して、出てくるだけですから、この施術は起きている時にする規定になっていますので起きるのを待っていました」


「そうか……ん?入る?」


「はい。基本は口から入って、尻から出ます」


一瞬、意味が理解できなかった。

次の瞬間、理解してしまった。


「待て」


「逆から入ることも可能ですが、ほとんどの患者さんは口を選ばれますね〜」


「待てと言っている!!」


静かに、しかし確実に力を強めた。

スライムが更に近づいて来て、私は力任せに暴れようとしたが、びくともしない、布の癖にやたらと頑丈な事だ。

部屋の端に居たらしいエルフも近づいて来て無駄ですよと優しく言われる。


「大丈夫ですよ。下剤も絶食も不要ですし、何なら途中で飲み食いしても問題ありません」


「意味が分からん……」

「食べた物は全部、私の栄養になるだけですからね!」


その言い方が、あまりにも自然で、あまりにも楽しそうで、

私はようやく悟った。


この医者、敵である私にも善意しかない、悪意無く体内に入ると言う所行を行おうとしている。


 エルフ達に無理やり口を開けさせられ、口に何やら真鍮製の固定具を差し込まれ閉じられなくされる。

 口元に、ぬるりとした感触が触れる。

 冷たいわけでも、熱いわけでもない。

 ただ、生き物がいる、という感触だけが確かにあった。


「では、失礼しますね〜。深呼吸してください」


「しつへいのしけんがち、ぼぼ」


言い切る前に、口の中に流れ込んできた。

呼吸も出来ない、喉が完全にスライムによって詰まり、嘔吐しそうになるが更に奥に入っていく。


ぬるり。

ぬるり、ぬるりと。


 喉を通り、食道を滑り落ちていく感覚が、はっきり分かる、そう息が出来るようになったからな。

 あまりの事態に叫ぼうとしたが、声にならない。

 スライム医者が喉を過ぎ口の固定具を外され、この事態に恐怖する事しか出来ない。

 


「胃、荒れてますね〜。潰瘍の痕があります。これは戦時ストレスでしょうか」


腹の奥が、じんわりと温かくなる。

痛みはない。

むしろ、長年抱えていた鈍い違和感が、溶けていく。

だからと言って体内に魔物が入り込んでいると言う事実に、震えざるおえない。

内部から自身を破壊されるのでは無いか?身体の内側から溶かされてのたうち回って死ぬ……そんな事しか考えられない。


「腸も……ああ、だいぶ無理をされていますね。あ、寄生虫がいます。取っておきますね」


何かが、するりと抜けていく感覚。

恥辱と恐怖で頭がいっぱいなのに、身体だけが、確実に楽になっていく。


「ポリープ、小さいのがありますが問題ありません。はい、除去完了です〜」


こんな治療が、あっていいのか、魔王軍とは本当に何という組織何だと戦慄させられる。


「では、そろそろ出口に向かいます」


その言葉と同時に、腹の奥がきゅるりと動いた。


「ちょ、ちょっと待て! 心の準備が――」


返事はなかった。

代わりに、すべてが終わったことだけが分かった。


拘束具がエルフ達により緩められるが、あまりにも……あまりにもアレ過ぎて、少しの間放心状態になってしまう。

だが身体は驚くほど軽い。

腹の中は、空っぽというより、澄み切っている感覚だった。


スライム医師は、元の大きさに戻り、満足そうに脈打っていた。


「はい、終了です。消化器系は非常に良好。しばらくは何を食べても大丈夫ですよ」


私は天井を見つめたまま、呟いた。


「……もう勘弁してくれ」


「よく言われます〜」


その声は、どこまでも穏やかだった。

だが否定できない。

身体は、戦争が始まる前よりも、確実に健康とやらに近づいた気がするからだ。

 毎日投稿、それは話が完成しているからだ!

 いやぁ、カメラ入れられる時に下剤を飲まなくても良いって素晴らしい事だと思いませぬか?


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