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書き出し
これは物語という形を借りた、私の祈りであり、人生の一部である。そしていま、それはあなたの手の中にある。
彼の歩みは、風に祓われし白砂のごとく頼りなく、
その眼差しは、澄みし水面のごとく人心を映した。
人は彼を狂人と呼んだ。
祈詞を声にせず、ただ胸奥に唱え、空を仰ぐその姿は、
戦場の荒武者たちには、ひどく奇妙に映ったからである。
けれども彼が通りすぎた後には、
荒みきった兵の心に、なぜか涙がひとしずく残される。
鳥獣は彼を避けるか、あるいは寄り添い、
いずれにせよ、その魂を隠すことはできなかった。
――その男の名は、誰も正しくは知らぬ。
ただ人々は畏れと諧謔をこめて、こう呼んだ。
「祓いの騎士」と。