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第7話 ワイバーン進化→→→ ワイババーン!


「多くの人に親しまれているモンスターですが、注意しなければならない事があるんです!!」

化物(モンスター)って呼ばれるくらいですからね」


「イナノミィケーオスのモンスターは……、なんと、進化しちゃうんです!!」

「それは、日本でいう出世魚みたいに名称が変わるということですか?モジャコ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリのように?」



 これはミスリードだ。

 俺の中の常識では、イナノミィケーオスのモンスターは進化すると姿や特性が明確に変わる。

 ケルベロスなんて頭が三つあるんだぞ。

 出世魚と同じな訳ねぇだろ。



「んー、変わるのは名前だけですね。もちろん、育つにつれて大きくなったり強くなったりしますけど」

「おや、そうなのですか?日本ではケルベロスは犬系モンスターの最上位で、首が増えますよ?」



 犬系モンスターは、ブラックドッグから→ヘルハウンド→オルトロス→ケルベロスと進化する。

 ブラックドッグとヘルハウンドとの違いは大きさや色、オーラを放出しているなどの差異があるが、形的には大差ない。


 ……が、オルトロスになると頭が増えるだろ、二つに。

 そんな変化があるのに名前だけって、お前の節穴に嵌ってる目玉はプラスチック製の模造品か何かか?



「確かに首が増えているように見えるんですけど、それはスキルの扱いが上手になるからだって、べーたんが言ってました」

「スキルの扱いが上手になる?」


「犬系モンスターのスキル系統は『蒸気』じゃないですか。オルトロスって呼ばれる子は蒸気で頭を増やした子で……、あ、でも中身が入っていないので、賢くなったりはしないと思います!」



 一個しかないお前の脳みそも腐りすぎて蒸気を出してる疑惑があるが……、想定外すぎるヤバい情報が出てきた。

 犬系モンスターのスキルが『蒸気』ってのは、聞いたことがない。



「蒸気ですか?」

「はい。犬って匂いに敏感ですよね。それって蒸気の匂いを嗅ぎ分けるスキルから始まるからなんです」


「……そうなんですか。では、それを進化させると」

「えーと、『体から蒸気を出せるようになり、この状態をヘルハウンドと呼ぶ』 だそうです!」



 べーたんノートを捲って答えを探し当てた駄女神が、満面のどや顔で答えた。

 よし、褒めてやる。

 よくぞ、べーたんノートにその情報が乗っている事を覚えていた。すごくえらいぞ!!



「では、オルトロスになると蒸気を物質化させ、最大の攻撃手段である頭を増やすと?」

「はい。でも、まだまだスキルが弱いので、頭しか作れないんですね」


「では、更に進化すると?」

「もっともーっと頭を増やしたケルベロスとかー、体を大きくしたフェンリルとかー、肉体性能を強化したガルムとかー、分身を作ったバーゲストとかになります。こうなってくると個性が出ますね!!」



 ……。

 俺は今、アホの子が放った爆弾発言により、精神に重傷を負った。

 もし仮に、この駄女神が言っている話が正しいとすると、究極に進化した犬系モンスターは……。


 ケルベロス  のように複数の頭を持ち、

 フェンリル   のように巨大で、

 ガルム    のように素早く動く意味不明な化け物が、

 バーゲスト   のように群れを成して襲ってくるってことになる。


 勝てない。

 これは絶対に勝てない。

 そして、そんな尋常じゃない化け物を、転生ボーナスに設定すんな。



「ははっ、今から私はそんな世界に転生するんですね。少々、気後れしてしまいそうです」

「大丈夫ですよ!その為に私がいるんです!!」



 なんということだ、アホの子駄女神に励まされてしまった。

 優越感に浸らせるためにわざと見せた弱みにキレイに嵌ってくれて、ありがとう。



「ふふっ。頼りにさせていただきますね。それで、質問があるのですが」

「はい!何でも聞いちゃってください!!大抵の事はべーたんノートに書いてありますから!!」


「進化しないモンスターもいるのでしょうか?例えば、先ほど仰っていたワイバーンはどうでしょう」



 ワイバーンは進化しないモンスターの代表例だ。

 年を重ねるにつれて巨大になるものの身体の特徴には変化がなく、上位種は存在しないと言われている。



「えーと、ワイバーンも進化しますね」

「するんですか?ぜひ、特徴などをお伺いしたいですね」



 べーたんノートを直接見た方が早いが、残念なことにアホの子が持っている。

 どうにかして奪えないだろうか。

 今回のサブ目標に設定しておこう。



「ワイバーンが進化するとー!」

「進化すると?」


「ワイババーン!になります!!」



 ……。



「そしてさらに進化すると、ワイバババーン!!になります!!」

「……では、次に進化すると、ワイババババーンになりますか?」


「いえ、ズギャーン!!!になります!!」



 ワイバーン要素が、消えた……、だと……。


 ……。

 …………。

 ………………誰だよ、名付けた奴。

 つーか、ワイバーンに進化個体がいないって言われてるのに納得がいったぞ。


「やべぇぞ、隣町を襲撃したワイバーンは、ズギャーンだったらしいぞ!!」

 ↓

「やべぇぞ、隣町が襲撃されて、ワイバーンにズギャーンってされたらしいぞ!!」


 こうして、ズギャーンの名前は秘匿され続けてきたのだ。


 もう一度言うぞ。

 誰だよ、名付けた奴。

 全人類に詫びろ。今すぐに。



「名前からでは察することができませんが、ワイバーンのスキル系統は何でしょうか?」

「身体能力向上です!」


「なるほど、非常にシンプルですね。筋力などの肉体性能が向上するんでしょうか?」

「ワイバババーン!!まではそうです。でもズギャーン!!!は違いますよ」



 ……べーたんノートを覗いて気が付いたが、ビックリマークまで名前に含めるんだな。

 俺の方がびっくりだよ。



「ワイバババーン!!って、手が無いじゃないですかー」

「そうですね。手があるとドラゴンって呼ばれますから」


「不便だなぁ、って気が付くらしいですよ」



 2段階も進化しといて、今更そこかよ。

 お前もアホの子系統か、ワイバーン。



「ちょうど、進化したスキルが身体能力変化になる頃なんです。だから肉体改造して、結果にコミットするらしいですよ」



 手を生やすのは、肉体改造の域を超えてるぞ。

 つーか、ズギャーン!!!こっちの世界に来てないか?

 そんな感じのキャッチフレーズの会社、聞いたことがあるんだが??



「ズギャーン!!!は腕を生やしたワイバーン、つまり、ドラゴンに酷似した姿をしていると。見分けるのが大変ですね」

「心配するほどズギャーン!!!は多くないですよ。今は3匹しかいないって書いてあります」



 ……最上位個体が3匹か。

 どっちかっていうと、数が多い方が嬉しかったな。

 いっぱいいるんなら、『簡単に進化できる=ワイバーンと大差ない』という図式に希望が持てるが、3匹だと絶望しかない。



「ちなみに、今は王都でパティシエをやっているそうです」

「すみません。一文字も理解できませんでした。パティシエってお菓子を作る、あの?」


「そうですよー、お店の名前は『わいばーんのたまご』。そのままズバリ、『わいばーんのたまご』ってお菓子が大人気みたいです」



 ……美味いらしいな。わいばーんのたまご。

 王都にしか売ってない高級洋菓子で、3時間並ばないと店に入れないから食ったことないけど。


 いや待て。おかしい。

 なんで生やした腕で洋菓子作った!?とか、随分と繁盛してるじゃねぇか!!とかは、どうでもいい。

 ズギャーン!!!お前、ワイバーンを辞めて人間になってないか……?



「王都でお店を。では、イナノミィケーオスではワンバーンも店を持つことが出来るのですね?」



 自分で言っておいてなんだが……、出来るわけねぇだろ。

 誰がワイバーンが立てたホイップクリームを食いたいと思うんだよ。


 つーか、菓子の名前が『わいばーんのたまご』って、人間に置き換えて考えるとやばい。

 流石は、アホの子系統の最上位進化体だ。アホ過ぎる。



「いえ、こっそりやってると思いますよ。ズギャーン!!!ってばれると大変だと思いますし」

「では、肉体性能変化を使って、人間に擬態していると?」


「体が大きいとお腹がすくじゃないですか。だから、『いいなー。にんげんっていいなー。ちょっとしか食べなくても満足できていいなー』って思うようで」

「そんな目で見られてるんですね。人間」


「ワイバーンは空気抵抗が少ない、つるっっとした肌にも憧れるっぽくて」

「なるほど。翼竜的にはこだわりたいポイントだと」


「結果的に、人間のロリ・ショタになるそうです」



 空気抵抗を考慮した結果、空を飛ぶ手段がなくなっているんだが、良いんだろうか。

 いいんだろうなぁ、だって、アホだもん。



「ちなみに、なぜ洋菓子を作っているんでしょう?最上位個体なら強いでしょうし、冒険者をした方が良いのでは?」

「働きたくないんじゃないですかー?」



 超高級店で高いといっても、結局は菓子。

 買って買えないことはないし、冒険者をやって稼いだ方が効率がいいと思う。


 実際、俺のパーティーメンバーの3人は『わいばーんのたまご』に通っていた。

「菓子を食うのに3時間も並ぶとか」って笑ったら、「はぁー?これだから女心が分からない男は。さ、こんなバカ舌は放っておいて行きましょっ!」って蔑まれたこともあったっけ。


 ……なぁ、今度は俺も一緒に行っていいか。

 現代日本で甘い菓子の美味さを知っちまったし、そしてなによりさ……。

 ワイバーンが作ったっつう菓子が、めちゃくちゃ気になる。

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