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第4話 転生!?テレビショッピング

 

「それでは、もう一度、転生のアナウンスをお願いします」

「はい。えーてすてす」



 マイクなんかねぇだろ。何のテストだよ。

 ……頭か?不合格だな。



「草道さん。あなたは完全に死亡し、助かる見込みがこれっぽっちもありません。どのくらい無いかと言うと、道端に転がっている石に付着した微生物の死骸のカケラ以下です」

「えぇ、もの凄く無い事がしっかり伝わって来ました」



 ……喧嘩、売ってるのか?


 事務的にと言ったはずだが、コイツ、意味分かってないんだろうな。

 どこの世界に、取引相手に『微生物の死骸のカケラ以下』って言う事務員がいるんだよ。


 日本の常識では考えられな……、あ、コイツ、女神だったっけ。

 天界ではこれが常識なのかもしれない。



「で・す・が!なんと今日は、お得な情報を皆様にお届けにやってまいりました!」

「……。」


「はい!本日お届けするのは、こちら『異世界転生』! みんなの憧れ、異世界転生のご紹介です!!」

「……。」



 おい、確かに俺は今、事務的な説明をしろと思ってはいたよ?

 ……いたけどな。誰がテレビ通販を始めろって言った?



「んふふー。噂に聞いた事はあれど、実際には見たこと無いし……、という人も多いんじゃないですか!?」

「……。」


「ですが、ご安心ください!ワタクシ共の異世界転生は、安心安全、高品質!しかも、お手頃価格!」

「……。」


「初めて異世界転生をなされるという方でも、問題なくご利用いただけます!」

「……。」


「って、ちょっとぉ!草道さんが相槌を入れてくれないと、話が進まないじゃないですか!」



 ……。

 ツッコミどころが多すぎる。


 あまりの酷さに放心しそうになったぞ。

 しかもこの駄女神、『お手頃価格』って言いやがった。


 強制的に異世界に拉致しようとしている上に金まで取るとか、悪徳金融も真っ青だろ。

 どこに訴えれば、お前を豚箱にブチ込めるんだ?



「ナタスさん。私が事務的にと言ったのは、事務処理をする時のようなテンプレートな説明をして下さいということです」

「えー事務とかやったこと無いですよー!いつもは『べーたん』がテキトーにやってますし」



 二つの意味で、不信感が湧いた。


 一つ、俺は事務処理を本当にやれと言ってる訳じゃない。

 例え話すらまともに出来ないのか。

 二つ、おい、べーたん。お前もアホの子なんだろ?

 事務処理は荷が重すぎると思うから、便所掃除でもしてろ。



「それと、異世界転生には金銭が必要になるのでしょうか?」

「いえいえ、お金は必要ありませんよ。魂をちょびっと頂くだけです」



 お前、本当に女神か?

 言ってる事が悪魔そのものだぞ。



「魂……ですか?」

「そうですよ。これから説明するんですけど、異世界転生をする時に様々なスキルが与えられます。それを作るのに魂が必要になるんですよね」


「なるほど、そういう事でしたか。酷い詐欺にあったのかと思いましたよ」

「そんな、詐欺だなんて……。貰う魂と支払う魂の利ザヤがちょっと大きいだけですよ」



 ……おい、『利ザヤ』って言ったか?

 アホの子駄女神の癖に、難しい言葉を知ってるじゃねぇか。


 利ザヤとは、商品を売買した時の収益の事だ。

 つまり、この駄女神は俺から魂を徴収し、利益を上げようとしている。

 ブン殴っていいか?



「話の枕言葉はもう十分ですから、本題に移りましょう。私は死亡し、異世界転生することを選びました。するとどうなるのですか?」

「異世界転生しますよ?」


「はい、ですから、異世界転生した時の情景などを教えて頂けるとありがたいのですが」

「んー、ワイバーンに襲われてる所からスタートするのはどうでしょう!?」



 死ぬよな、それ。

 何回、転生させる気だ?



「ワイバーンですか?それはちょっと難易度が高すぎると思うのですが……。それが普通なのでしょうか?」

「いえ、普通とは程遠いですね。ですが、草道さんならそのくらいのスタートをした方が良いかなって」



 コイツ、俺の心でも読んでるのか?

 凄く悪意を感じるんだが?


 俺の知っている(・・・・・・・)、ワイバーンはかなり高位のモンスターだ。

 当たり前に翼竜であり、生態系の頂点付近に生息している、出会うと高確率で殺されるモンスターの代表例。それがワイバーン。


 なにせ、コイツは空を飛ぶ上に群れる。

 しかもデカくて重い。

 ワイバーンが空から爪を立てて突っ込んできただけで、人は簡単に死んでしまうのだ。

 現代風に言うのなら、ショッピングモールの屋上駐車場から軽トラが落ちてくるような感じ。



「ナタスさん、転生したてにワイバーンは無理です。死んでしまいます」

「えー、その為にスキルがあるんですよー?」


「そのスキルとやらの強さにもよりますが……、まず、現代日本に居ない生物と相対した時点で普通はパニックになりますよ」

「なら、動物園にいる奴ならいいですか?」


「そうですね。私も含め、転生される方は初心者なので、身近な生物から馴らしていくと親切でしょう。犬、猫、ヘビ、鳥、などが良いですね」

「じゃあー……。全部混ぜてキマイラで!!」



 何で混ぜたッ!?

 ワイバーンよりもグレードが上がってるぞッ!?

 こんの駄女神がッ!!

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