第13話 娯楽が欲しいなら、漫画を読みましょう
「最後の一つですが、こちらの『本召喚』がいいでしょう」
「本ですか?」
【スキル:本召喚】
レベル状態*覚醒1
効果
・読んだことがある本を召喚する。
・読んだことがある本の続きを召喚する。*未覚醒
覚醒条件1
・内容を知らない本を布教し、10時間以内に一冊、読了させる。
覚醒条件2
・内容が周知されていない本を発行し、24時間以内に100冊以上、販売する。
「えっと、読んだことがある本を召喚するって、あんまり意味が無いような……?」
「いえいえ、とんでもございません。このスキルこそ、究極の汎用スキルですよ」
既読の本を召喚する、確かに、記憶力が良い俺には必要ないと思うかもしれない。
だが、このスキルの真価は本の強奪だ。
例えば、国立の秘蔵書架に忍び込んだ場合などに真価を発揮する。
一度見ただけで禁忌指定されている本を召喚できるとか、チートスキルも甚だしく、悪用したら容易に国を傾けられる。
「このスキルは本の召喚、つまり、獲得が出来ます。この凶あ……、利便性が分かりますか?」
「えー、あ!失くしたマニュアルを召喚できます!!」
「そうです。一度見た本なら何でも手元に召喚することが出来ます。ですから、買った本を倉庫に山積みにしておいても、探す手間が無くなりますね」
資料本どこに行ったっけ?というのは、社会人なら一度は経験しているトラブルだ。
だが、このスキルがあれば関係ない。
なんなら、商談先に手ぶらで行くことすらできる、アホの子・馬鹿・駄女神でも安心安全の超便利スキルだ。
そして、俺の真の目的は、べーたんノートの奪取。
イナノミィケーオスの超重要情報が詰まったこのノートは、絶対に確保しておきたい。
「見てください。ランク2になると、本の続きまで召喚できるそうです」
「続き……、あ、漫画ですね!!」
「そうです。転生者は日本の娯楽が欲しくなるでしょう。それを本限定とはいえ解消してくれる、まさに、神スキルと言っていいでしょう」
最初に漫画が出てくるあたり、どうしようもない駄女神感が漂っている。
だが、漫画の召喚は精神的な満足度が非常に高い。
他の転生者は異世界再購入を持っていない訳で、日本が恋しくてたまらなくなるはず。
なお、料理本を召喚すれば一流シェフ、理科の教科書を召喚すれば大賢者にジョブチェンジだ。
なんなら、本を売るだけで莫大な財の形成も可能だ。
売った本を再召喚すると手元に戻って来る……、うん、女神が授けていいスキルじゃないな!!
「実は、漫画を嗜むのが趣味でして。イナノミィケーオスでも好きな作品で友好を築けたらと」
「良いですよね、オタ活!!言語の壁すら容易に超えちゃいますし!!」
海外のオタクが日本の二次元娯楽を楽しむために日本語を勉強するってのは、良くある話だ。
ん?そういえば、このべーたんノートって日本語だな?
もしかして、べーたん、お前、日本語を常用する程の重度のオタクなのかっ!?
「これでスキル欄が埋まりました。もしも迷うことがあったら、この3つのスキルをオススメしておけば間違いないでしょう」
「あ、はい。でも良いんですか?」
「何のことでしょう?」
「攻撃スキルが無いと、モンスターを倒せなくてレベリングが大変になっちゃいますよ?」
確かに、攻撃スキルは手軽にダメージを与えられるから、レベリングしやすいのは事実だ。
レベルはスキルレベルとは違いモンスターを倒すと手に入る成長ポイントのような物で、肉体性能に直接的な影響を及ぼす。
パワーレベリングをした俺のレベル33は割と高い方で、フィジカルだけなら、一流の冒険者の水準に達していた。
まぁ、それも過去の話だ。
ステータスをカンストさせた現在、俺に勝てる生物はいないと思われる。
今なら、ズギャーン!!!の店で無銭飲食をしたって、余裕で逃げ切れるぜ!!
「いえ、長期的に見れば、汎用スキルを手に入れる方がレベルは高くなると思われます」
「え、なんでですか!?」
「ナタスさんは先ほど、スキルのレベル=世界の結び付きだと仰ってましたよね。そしておそらく、イナノミィケーオスではフィジカルよりも魔法やスキルの方が重要ではないでしょうか?」
「んー、そうですね。ケロベロスに素手で挑戦する格闘家は見たことないです」
だろうな。
……待てよ?
お前が伝説級の化物をゴリ押ししていたのって、現存しないレベルの馬鹿を見たいからじゃねぇだろうな?
「ナタスさん、レベルを上げやすく、かつ、希少性の高いスキルが最強です。レベリングなんて、後からいくらでもできますから」
「確かに!草道さんって、凄い詳しいんですねーー!!」
おっと、喋りすぎたか?
まぁいい、転生情報の入力は完了した。後は、この端末の下に表示された 『転生する』 を押せばいいはずだ。
転生者名:『草道 語』
転生先名:『イナノミィケーオス』
【スタートパック】
【異世界再購入】
【異次元収納】
【信用銀行】
【本召喚】
『転生する』
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