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第11話 収納魔法は良く見て決めましょう

 

「少々、端末をお借りしますね、見やすいように整理をしてみます」



 って感じの雑な大義名分を作りつつ、端末をゲット。

 スキルの並べ替えをしている風を装いつつ、できることを手早く把握していく。



「できました。これで見やすくなったと思います」

「あ、すごい。こっちの方が全然いいです!!」



 **********


 転生者名:『草道 語』

 転生先名:『イナノミィケーオス』



【スタートパック】

【異世界再購入】

【 ― 】

【 ― 】

【 ― 】


 『決定』 

 ←前ページ  

 **********





「不要なスキルを消しつつ、スタートパックを上に移動。これで、選択するスキルスロットは残り3つとなりました」

「んー、この異世界再購入ってのは消さなかったんですか?」


「最初から設定されていましたし、神様からのオススメを消すなどできません。大切に使わせて貰いますよ」



 これを消すと死ぬ直前に戻るどころか、どんな時代に飛ばされるか分かったもんじゃない。

 年老いた顔見知りが見つかるだけで上出来、下手すると、過去の世界大戦ど真ん中へ転生される可能性すらある。



「それでは、残り3つを選んでみましょう。真ん中の空欄を押してください」



 異世界再購入のページには、以下の情報が載っていることを確認した。

 覚醒条件2に死亡要因を打開せよと書いてある以上、駄女神に見せて怪しまれると面倒な事この上ない。



 ***************

【スキル:異世界再購入】

 レベル状態*覚醒1


 効果

 ・100円までの異世界の物品を、 金銭ユエドを用いて再購入する。

 ・1000円までの異世界の物品を、金銭ユエドを用いて再購入する。 *未覚醒


 覚醒条件1

 ・異世界で物品を購入する。

 覚醒条件2

 ・異世界から商品を再購入し、死亡要因を打開せよ。


 ***************



 少々残念だったのが、この端末ではスキルレベルを上げられないようだ。

 もし仮に、条件を無視して最大レベルにできれば、どんな魔法も使い放題。

 それこそ、時魔法すら使用可能となり、死亡要因を容易に打開できただろう。


 だが、選択できるスキルの情報は記載されている。

 効果と覚醒条件が分かる以上、俺の狙いは達成可能だ。



「日本とは違う文化ですからね、様々な不安があります。ですから今回は、汎用的なスキルを選んでみたいと思います」

「汎用スキル?えー、どうせなら超強力な攻撃スキルとかにしませんか!?」


「例えば?」

「エルザンビーリフェカ・ワルフォアフォノ・コルディズナとか?一撃でドラゴン倒せますよ、ドラゴン!!」



 全く想像できない、意味不明なスキルをオススメすんな。

 つーか、途中にアホの子が混じってたぞ。

 仮に最強だったとしても、絶対に断る。



「いえ、ナタスさん。これからの業務にあたり、転生者からオススメを聞かれることがあるかと思います。その時に言葉が詰まると、失望されてしまうかもしれません」

「えぇ!?嫌です!!」


「ですから、私が選ぶ汎用スキルをオススメとして覚えておくと良いでしょう」



 もちろん、このアホの子の為に汎用スキルを選ぶつもりはない。

 出会った瞬間に失望させてくる駄女神では、何をしても挽回不可能だ。


 スキル選択の基本方針は、異世界再購入の強化。

 そもそも日本での俺の人生は、異世界再購入の能力を上げるために費やしてきた。


 異世界たる日本で生活をしたことで、異世界再購入の覚醒条件『異世界の商品を購入する』を達成。

 スキルが覚醒し、能力が使えるようになった。


 だが、異世界再購入の効果は、『100円までの異世界の物品を、 金銭ユエドを用いて再購入する』。

 つまり、イナノミィケーオスのユエドが無いと使用できない。

 こうして俺は、またしてもスキルが使えない悲しい状況になった訳だが、事前準備は可能だった。


 様々な商品を転売するブラック商社に勤めたのは、異世界購入の条件、『異世界で購入した物品を』の条件をクリアし、購入可能な商品を増やすため。

 ウチの会社は凄いぞ。

 なにせ、販売する商品を自分の資金で購入し、会社の名義を使って販売。

 純利益の60%を会社に支払うという、超絶ブラック会社だ。

 そんな人生を賭けた努力の結果、俺が購入した商品のラインナップは一般人とは比べ物にならない数となっている。



「まずは、収納系スキル。汎用性で言えば、これより優れたものは無いでしょう」

「収納ー?えー、それじゃ、ドラゴンもズガーン!!!も倒せないですよ!?」


 ドラゴンもパティシエも倒さねぇよ。

 あと、ズガーン!!!じゃなくてズギャーン!!!な。



「ナタスさん、スキルレベルを上げることで魔法が使用可能になると仰いましたよね?ならば、レベルを上げやすいスキルの方が、最終的な攻撃力は高くなります」



 これは事実だ。

 SSSランクの冒険者の多くは、攻撃スキルよりも魔法を主軸にして戦う。


 殺傷能力のないスキル持ちは当然として……、攻撃スキル持ちも魔法を使いながら戦うのは、一種類のスキルだけで倒せるほどモンスターは弱くないからだ。

 様々な魔法を駆使して相手を弱らせ、パーティー内の高威力なスキルで止めを刺す。

 威力の高い攻撃スキルで良かったー!って騒いでいるのは、目立ちたい奴だけ。



「こちらの端末では、スキルの検索ができるようです。無記入のスキル欄を長押しするとテキストボックスになりました」

「へー、そんな機能があるんですね!」


「では、『収納』と入力してみます。結果は……、124件ですか」



 **********


『収納』 に関するスキル、該当124件。


 ・収納

 ・異空間収納

 ・圧縮

 ・縮小化

 ・ナンバリング

 ・カテゴライズ

 ・旅する者

 ・万能本棚

 ・住宅召喚

 ・タンスの探索者

 ・開かずの金庫

 ・聖櫃

 ・異次元保管

 ・タイムカプセル

 ・死体袋

 ・

 ・

 ・



 **********



「……と、このように、名前もしくは効果に『収納』と書かれているスキルが表示されます」

「収納だけで124個もあるんですか!?」


「ははは、それだけ汎用性に優れているということですよ。では、スキルを探させていただきますね」



 俺が欲しているのは、物が収納できる四次元ポケットのようなスキルだ。

 異世界再購入で手に入れた商品の在庫管理を容易にし、不要なトラブルを避けるためには必要不可欠。


 レベル1の異世界再購入では、購入できる商品をWEBページのように表示することはできない。

 この端末同様、スキルを起動すると現れる検索ボックスにキーワードを入力することで、名前だけ表示される仕組みだ。


 仮に、『飲料水』と入力すれば、水道水やお茶、ジュースなどが表示される。

 なお、水道水があるのは水道料金を支払っているからで、一か月分の使用量25立方メートル(2万5千リットル)が一気に出てくるはず。

 ユニットバス30個分も出てくるとか、並の攻撃スキルより強い。



「この一覧には、収納を効率化させるようなスキルも含まれているようです」

「どれですか?」


「縮小や、ナンバリング、カテゴライズがそうですね」

「んー、草道さんが欲しいのって、どんな収納スキルなんですか?」


「商品を保存し、収納されている在庫数が分かるスキルですね」

「欲しいものは町で買えば良くないですか?わざわざ保存しておく意味はないと思うんですけど?」



 そう思うのは、ビジネスをしたことがない人だけだ。

 在庫が分からないと、それこそ、その場しのぎでしか使用できなくなる。


 異世界再購入の弱点は、在庫数が表示されていない点。

 もしも、日本で買った個数までしか購入できなかった場合、むやみに物品を流通させると自分が破滅する。


 仮に、国王に『コーラが気に入ったから、100万本売れ』と言われても、不可能。

 別の商品でご機嫌取りをしたとしても、その商品だって限りがある。

 そうなると、俺は王の命令に逆らった逆賊として処刑街道まっしぐらだ。


 だから、他人に譲渡する商品は、在庫管理が必要不可欠。

 10本しかない貴重な飲料水をお譲りします、と最初に言っておかなければならない。



「ふぅ……、この収納スキルが一番、利便性が高そうです」

「どれですか!?」


「『異次元保管』。別次元に物を保存できるスキルです」


 端末に表示されているスキルは、覚醒1の状態のもの。

 スキルの詳細な効果を表示させるに為にそうなっているようだ。


 **********


【スキル:異次元保管】


 レベル状態*覚醒1


 効果

 ・物質をそのままの状態で収納し、リストを作成する。

 ・保存した物質を取り出す。*未覚醒


 覚醒条件1

 ・調理後、30日以上経過したスープを完食し、3日間、健康を維持する。

 覚醒条件2

 ・調理後、30日以上経過したスープを他者に完食させ、3日間、健康を維持させる。


 **********



「え、これですか?」

「はい、私の理想そのものですね」


「でも、作ってから30日後のスープって、べーたんの料理以上ですよ……?」



 腐ったスープと比較されるべーたんの料理ってどんなんだよ。

 秀才とアホの子が同居している……、あぁ、馬鹿と天才は紙一重っていうもんな。



「いえ、問題ありません。他者の力を借りれば、容易に達成できるからです」



 アホの子に正気を疑われてしまう地雷スキルも、向こうの実態を知っていれば問題ない。

 スタートパックで手に入れた『常識』がすぐに反映されるのは、おそらくこの為だ。



「先ほど、イナノミィケーオスの常識を『すべて』授けて頂きました。それによると、スキルをレベルアップさせる商売がある様です」

「条件達成を手伝ってくれるってことですか?」


「はい。そして、スープの保管状況に関する指定はございません。要するに、他者の保管スキル内で30日以上経過させた商品を食べればいいのです」

「あ、そういうことなんですね!!」


「ちなみに、覚醒条件2はもっと簡単で、【スキル:健康】を持っている人に30日前のスープを食べて貰えばいいだけです」

「なるほどー。それなら簡単ですね!」



 自分で言っておいてアレだが、決して簡単ではない。

 いくら健康を害さないといっても、誰が腐ったスープを食いたいと思うんだよ。

 相手は健康な味覚の持ち主だぞ。



「このように、条件達成が容易であり、効果も利便性の高いものが、汎用性に優れたスキルとなります」

「分かりました。迷ったら、【異次元保管】をオススメしたいと思います!」



 是非、そうしてくれ。

 裏技に気が付かないと腐ったスープを延々と食わなくちゃいけない上に、覚醒レベル2にならないと保管したものを取り出せない地雷スキルだが、使い勝手はいいと思うぞ。


 ……え?裏技?

 異世界購入で買った缶詰を食う、以上。

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