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猛獣系の頂点?


 目の前の1体の狼を攻略クランのパーティで戦闘してみることにする。他のメンバーは階段からそれを見て相手の強さを見極めることになった。もちろん、危なくなったら情報クランのパーティが助太刀に出る。


 狼との戦闘はジャックスがしっかりと盾で受け止めている間にスタンリー始め他のメンバーが効率的にダメージを与えて危なげなく倒すことができた。レベル制限のある武器は本当に強いよ。自分たちより5つレベル上、足の早い敵の攻撃を完全に抑え込んでいる。流石に攻略のトップを走っているだけはあるよね。全く危なげないんだよな。


「行けそうね」


 彼らの戦闘を見ていたクラリアが言うと隣で同じ様に見ていたトミーも問題なさそうだなと言う。そりゃそっちはレベル85だし、武器だって強い武器を持ってるだろうし。でも俺はどうなんだよ?レベル90相手に俺とタロウとリンネで勝てるのか?レベルはまだ83だし武器だってレベル制限のある武器じゃないし。


「主も問題ないのです」


 俺の悩んでいる表情を見たのかタロウの背中に乗ってるリンネが顔を俺に向けて言った。


「本当か?こっちは83だし俺とタロウとリンネしかいないんだぞ」


「大丈夫なのです。狼だろうが虎だろうが皆タロウの僕なのです」


「ガウ!ガウ!」


「まじか?タロウは猛獣系の頂点に立っているってことか?」


「その通りなのです。タロウは一番強い猛獣なのです」


 俺とリンネのやりとりを聞いていたクラリアやトミー。


「それが本当ならこのフロアも楽勝ね」


 いや、そう簡単に決めつけるなよ。


「次はタクがやってみて。もちろん危なくなったら手助けするから」


 周りからそう言われてビビりながら階段を降りる。木々の間から狼が姿を現した。俺たちを見て低い唸り声を上げたかと思うとタロウが威圧のスキルを発動する。するとそれまで吠えていた狼の動きが止まって怯えた表情になった。これはいける。すぐにタロウと俺が狼に攻撃を加えるが狼の動きが鈍い。最後はリンネの魔法で光の粒になって消えた。格上には効きにくい威圧だが猛獣系は別の様だ。流石霊狼だな。


 見ていた情報クランと攻略クランのメンバー全員が驚いた表情になった。


「タロウ凄いね」


「ガウ、ガウ」


 どうだと言わんばかりのタロウ。


「猛獣系にはタロウの威圧が有効なんだな。それにしてもタクの従魔はどれも優秀だな」


 そう。従魔が優秀なんだよな。その結果俺にも結構な経験値が入ってきた。ここは割り切ろう、うん。


 これならこのフロアもいけるぞと気合いを入れたメンバー達。3組に別れて横並びに広がりながら森の中を進んでフロアを攻略していく。出会うのは狼と虎。体長はタロウよりも小さくて大型犬くらいかな。人が乗れるほどの大きさはないが、いずれも素早いがクランの方は高レベル武器でそれらを倒し、俺はタロウの威圧でビビらせてから従魔の魔法と蹴り、そして俺の刀で倒していく。格上を倒しているからだろう得られる経験値がとても多い。


 森を抜けるとまた下に降りる階段が見えてきた。階段の下には転送盤がない。


「どうやら偶数階が終わった先の階段を降りた所にあるのかもしれないな」


「となると次のフロアを攻略しないとね」


 4層に降りる階段の途中で休んでいる俺たち。タロウは俺の一つ下の階段で横になっていてリンネは俺の太ももの上に乗って休んでいる。俺は2体の獣魔を撫でて労ってやる。今までタロウとリンネが大活躍しているからね。撫でながら大丈夫か?と聞くと、


「タロウもリンネも大丈夫なのです。主が撫でてくれたら元気になるのです」


 タロウは黙っているが尻尾をブンブンと振っていた。うん。ちゃんと撫でてやるよ。


 ここはしっかり休もうというスタンリーの言葉で全員が持参している食事を口に運ぶ。ダンジョンの中にいると時間の感覚がわからないが情報クランのメンバーによるとダンジョンの攻略を開始してから5、6時間といったところらしい。5、6時間で3層をクリアしているのが良いペースなのかどうかは俺にはわからない。


 情報クランと攻略クランの幹部連中が打ち合わせをしている声が聞こえてきた。どうやらこの4層を攻略し終えると一旦戻ることにするらしい。打ち合わせが終わってからクラリアが俺にそれでいい?と聞いてきたがこっちは全然問題ないね。


 ふと思いついたというか気になったというか。俺はマリアに聞いた。


「虎とか狼がいるけどテイムしないの?」


 モフモフ好きを公言しているマリアだから狼や虎はど真ん中のモフモフだと思ったんだよな。ただ彼女は俺の問いに首を振って答えてくれた。


「モフモフはタロウのモフモフが一番よ。それ以外は興味がないの。テイムまでする気は今のところ無いのよ。開拓者の街にある自宅というかオフィスもクランのだし大きな庭がないでしょ?それに固定メンバーで活動しているから従魔と一緒に外にでて活動がほとんどできない。こうやってタロウを撫でているだけで十分なの」


 仮にテイムしても結局テイマーギルドに預けっぱなしになるだろう。それくらいなら最初からテイムせずにタロウを撫でている方が良いと言うマリア。


 なるほど。言われてみればその通りだよな。攻略クランは固定メンバー5名で活動をしている。ソロで動くことはほとんど無いんだろう。となると家で撫でるのならタロウがいたらいいのか。そういう今もしっかりタロウを撫で回しているけどね。


「でもこのダンジョンのモフモフ情報は売れるわよ」


 そう言ったのはクラリアだ。85に到達して85以上の制限武器を装備できればこの3層までは降りてこられる。テイムできる可能性が高いだろうという。ダンジョンの魔獣がテイムできるのはモグラで証明済みだからこのダンジョンの情報を流せば多くのプレイヤーがやってくるだろう。


「ただ、いつ公開するかなのよね、タイミングを見ないと」


 情報クランとしてはダンジョンを攻略し終えてからその各層の情報をまとめて売りに出した方がずっと価値が高くなるのでとりあえず先が見えるまでは公開しないつもりらしい。


「それとだ、原生林の中にある果樹園については公開しないつもりなんだよ。隠れ里と同じで公開するものじゃないと思っている。一応果樹園のNPCには確認をするけどな」

 

 クラリアの後でトミーが言う。俺はその辺りの匙加減がよくわからない。プロがそう言うのだからお任せだ。



 階段でしっかりと休んだ俺たちは4層の攻略を開始した。ここは3層と同じで森の中に虎や狼がいるがそれ以外に獣人もいた。レベルは91に上がっている。獣人は他の2パーティに任せて俺たちは四つ足の魔獣を集中的に倒していった。タロウが猛獣系にここまで強いとは思っていなかったよ。相手が格上だろうがガンガン攻めていく。めちゃくちゃ格好いいんだよな。リンネの魔法もそれほどレジストされずにフルヒットが多いし。2体の従魔におんぶにだっこ状態だった俺。おかげでこのフロアを攻略してすぐに84にレベルが上がった。タロウとリンネも同じ様にレベルアップする。俺たちより7つももレベルが上の格上を倒しまくっているからなんだろうな。倒した時の経験値がかなり多いのだろう。


 85まであとレベル1つだ。


 4層の森を抜けるとまだ下に降りる階段があった。その階段の先には転送盤がある。

階段から見た5層は足場の悪そうな沼の風景だった。見える範囲で魔獣は徘徊していないのでレベルが見えない。


「ワニや蛇系の魔獣がいそうな雰囲気ね」


「足元が悪そうだ。ただ視界はそう悪くないな」


 沼地でプレイヤーの腰の高さ以下の草が生えていてところどころにポツンと木が生えているだけだ。見通しが良い中で魔獣の姿が見えないということはあの草の中にいるのだろう。これまた厄介なフロアだ。


 5層に降りた俺たちは転送盤に乗ると洞窟の入り口の横に飛んできた。飛んだ先には転送盤はない。一方通行なのかな。それはまた検証してくれるだろう。


 俺たちはそこからモンゴメリーさんの果樹園に戻って洞窟の報告をする。


「そうか。ダンジョンか。中から溢れ出てこないのなら大丈夫だろう。タクらはどうするんだい?」


 そう聞かれて後ろを振り返る俺。モンゴメリーさんとのやりとりは流れから俺が前に出てやっている。


「ダンジョンを攻略するつもりです。それで攻略したら他のプレイヤーさんもあのダンジョンの攻略でやってくると思うんですが構いませんか?」


 クラリアが言った。


「いいんじゃないか?ダンジョンの中には魔獣がいるんだろう?やっつけてくれるのならこっちは何も文句はないぞ」


「この果樹園の事は言わないつもりなんですよ」


 俺が言うとそうかと頷くモンゴメリーさん。


「まぁ、そうしてくれると助かるかな。あまり人付き合いが得意じゃないんでね。タクと従魔達、それと今ここにいるプレイヤーさんは別だけどな」


 トミーが言った通りだった。


「ありがとうございます。じゃあこの場所のことは言わずにおきましょう」


 頼むよという声を聞いて俺たちは踵を返して土の道に戻って台地を降りていった。そのまま試練の街に入ると全員が俺の別宅に来る。


 情報クランと攻略クランのやりとりを聞いている限り今日だけで結構な数の魔獣を倒して試練が進んだらしい。ライバルがいないのと魔獣を探す時間がほとんどないので効率的に動けたらしい。俺もその恩恵を受けて84に上がったからね。


「タクは明日もダンジョン攻略に行ける?」


 攻略クランの連中とやりとりをしていたクラリアが俺に顔を向けた。俺が言う前に頭の上から返事をするリンネ。


「行けるのです。主は強いのです。それにタロウとリンネがしっかりと主をお守りするのです」


「リンネちゃんとタロウに任せておけば大丈夫かな?」


「任せるのです。バッチリなのです」


 リンネはそう言い、タロウは尻尾をブンブンと振る。


「ただ朝は畑の見回りがあるからそれが終わってからになるよ」


 タロウとリンネがやる気満々なら俺はそれに乗っかるしか無い。ただ朝の日課だけは外したくない。

 

 俺の畑の見回りが終わってから再びダンジョン攻略をすることになった。今日の調子で行ければ85になるのが少し早まるかもしれないな。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] すごく細かい事なのですが前から読んでいてずっと気になっていてテイムとティムが混ざっているのはなにか理由があったりするのでしょうか?
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