表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
317/319

久しぶりの釣り


 週末のバザールは相変わらず従魔達の置き物が売れて大好評だった。3時過ぎには持ち込んだ焼き物が全て売れた。開店直後から女性プレイヤーを中心に買ってくれた。結構作ったんだけどまだ足りなかったみたいだ。


「全部売れたのです。ウハウハなのです」


 リンネやタロウ、クルミは喜んでくれているけど、また買えなかったプレイヤーさんがいたので引き続き工房で作らないといけない。今日、従魔達の置物を買ってくれたプレイヤーに聞いたら、デザインが変わるたびに新しい置物を買ってくれているそうだ。しかもそんな人が多いらしい。彼女とその友人は従魔の置物をコンプします、なんて言ってたな。いやいや感謝ですよ。


 売るものがなくなったので閉店だ。閉店するとせっかくなのでバザール会場を見て歩くことにする。窯業エリアから始まっていろんなエリアを見て回る。どのエリアも最初の頃に比べたら出店しているテントの数が増えているそうだ。第2陣、第3陣のプレイヤーが出品しているからだろうな。


 どのエリアを歩いても俺の従魔達は大人気なんだよ。バザール会場に来ているプレイヤーはもちろん、出品しているプレイヤーからも声がかかる。その度に愛想を振りまいているタロウとリンネとクルミ。女性プレイヤーの多くがスクショを撮っている。


「主はお買い物はしないのです?」


 あちこちのテントを見ていると頭の上から声がした。


「いいのがあればね。でも見てるだけも十分に楽しいよ」


 木工エリアに出向くと、フクロウの木彫りを作ったケンが店を出していた。


「やあ、久しぶり」


「こんにちは」


「こんにちはなのです」


 俺たちというか従魔を見たケンが挨拶をしてくれた。彼のテントのテーブルの上には木彫りの製品が置いてある。動物の木彫りが多いがそれらが皆精巧に出来ているんだよな。あのフクロウを見た時から思っていたけど器用なんだろう。


「どれもすごく精巧に作られているね」


「そうかい?ありがとう」


「最近はまだ忙しいの?」


 フクロウの木彫りが大好評で、それをきっかけに多くのプレイヤーからオーダーメイドの注文を受けて忙しいと言っていたケン。


「少し前にやっと落ち着いてね。それからはこうして小物を作って売っているんだ」


「なるほど」


 テーブルの上には魚や熊、ウサギなどが並べられているがどれもがよくできている。

 俺はその中にあった魚の木彫りを手に取った。50センチ位の体長だけど本物そっくりだよ。鱗とか忠実に再現している。値札を見ると5万ベニーになってる。


「これ貰おうかな」


「おっ、買ってくれるのかい?毎度あり」


「お魚さんなのです」


「うん。よく出来てるよな」


「でも主が釣り上げるお魚よりは小さいのです」


 リンネがそう言うとケンが笑いながらこっちは彫刻だからねと言った。常に俺と比べて褒めてくれるんだよな。ケンが言ったけどこれは置物だからこれくらいのサイズでちょうどいいんだよとリンネの背中を撫でながら言うと納得してくれたよ。


「タクの方はどうなんだい?」


「うん、リンネの尻尾が増えて9本になったんだよ。なので9本の尻尾の新しい焼き物を作ったら、嬉しいことに好評でね。完売しているんだ」


「タクが作る従魔の置き物は大人気だって聞いている。それで完売して早々に店仕舞いをしてあちこち見て回ってるのか」


「そう言うこと」


 その後少し雑談をして、また自宅に邪魔するよというケンにいつでもOKだと返して彼のテントを離れると、あちこちを見て回ってからバザール会場を後にした。


 色々な品物を売っていて見ているだけで楽しい。一度出品側じゃなくて購入者になってゆっくりとあちこちのテントを見て回ろうかな。


 ケンの店で買った魚は自宅の和室に飾ることにした。和室に彫刻を飾ると外からランとリーファが飛んできて俺の両肩に座ると置いたばかりの木彫りの魚を見ている。


「ランとリーファはこれは初めて見ると言っているのです」


「そうか、ランもリーファも魚を見た事がないんだな。となるとだ、ちょっと待ってね」


 俺はその場でAIのミントに確認すると、タロウとリンネとクルミを呼んだ。ランとリーファは肩に乗ったままだ。


「ランとリーファは魚を見た事がない。なので今から釣りに行くぞ」


「やったー!なのです。大物を釣り上げるのです」


「ガウガウ」


 クルミもジャンプしているところを見ると喜んでいるのは間違いない。2体の妖精は俺の前でサムズアップをしてくれた。


 俺たちは自宅から水の街の別宅に飛ぶと、そのまま港の桟橋に足を向けた。俺は桟橋で釣るつもりだったんだけど、リンネとタロウが船を出せと言う。


「お船に乗って釣りをするのです」


「ガウガウ」


 従魔達が船に乗りたいっていうので桟橋から自作の船に乗った。クルミはそれまで俺のフードの中にいたけど、船に乗るとそこから出て船首にちょこんと座る。その後ろにタロウが座る。うん、何かあってもタロウが見てくれているから安心だ。リンネはタロウの背中に乗っている。


 船を桟橋から出して少し沖合に出たところで船を泊めて湖に竿を投げた。従魔達の顔がルアーと一緒に左から右に動く。これは磯釣りの時と同じだよ。


「主、大物を狙うのです?」


 ルアーが沈むとリンネが聞いてきた。


「いいや、今日はそこまで大物じゃなくてもいいんだよ。竿だってほらっ、これは大物狙いの竿じゃないだろう?」


「分かったのです」


 しばらくすると竿に当たりがきた。当たりが来ると従魔達が皆竿の先を見るんだよな。ここでバラしたら元も子もないと慎重にリールを巻き上げる。


 釣り上げたのは40センチ位のサイズだ。うん、このサイズが欲しかったんだよ。水槽に入れると3体がそれを覗き込んでくる。3体ともこれでもかと言うほど尻尾を振っているよ。


「この調子でガンガン釣るのです」


「おう、任せとけ」


 それから1時間ほどで5匹ほど魚を釣り上げた。サイズは30センチから50センチ程度の魚だ。全て食べられる魚だけど今日は釣りギルドには持ち込まない。


「これくらいでいいだろう。家に戻るぞ」


「はいなのです」


 船で桟橋に戻ってから別宅経由で自宅に戻ってくると、自宅の庭の中を流れている小川に釣った魚を放流する。5匹の魚が川を泳いでいるのを見たランとリーファが歓喜の舞をしてくれた。久しぶりに見たよ。


 俺が釣りをする前にAIのミントに確認したのは、釣った魚を庭の川に放流しても大丈夫かどうかってこと。ミントによると川も敷地の一部になっているので魚は敷地の外に出ていかない、つまり敷地内の川を泳ぐだけなので問題ないと言う事だった。


 万が一川に沿って敷地の外に出ていくのなら池を作らないといけないと思っていたけど、そうじゃないと聞いて安心した。ゲーム的に釣った魚は自分の所有という事なのかな。だから敷地の外には行かないんだろう。


 ランとリーファは川に浮かべている船に乗ってそこから魚を見たり、羽ばたいて上から魚を見たりしている。クルミもちゃっかり妖精の船の船首に座って川の魚を見ていた。間近で泳いでいる魚を見るのは初めてだろう。魚が泳ぐ姿を真剣に見ているよ。


「ランとリーファは初めて本物のお魚を見て大喜びなのです」


 頭の上に乗っているリンネが言った。隣でタロウもガウガウと言いながら大きな身体を寄せてくる。


「うん、よかったよ」


「ガウ」


「主はいい人だとタロウが言っているのです。リンネもそう言うのです」


「そうか。ありがとな」


 そばにいたタロウとリンネをしっかり撫でてあげたよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ