表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
316/321

トミーが1人でやってきた

 ログインして畑の見回りをし、収穫した野菜を農業ギルドに持ち込んで買い取ってもらって自宅に戻る途中、開拓者の街の中を歩いているとトミーが声をかけてきた。クランとしての活動まで時間があるので俺の家に顔を出すつもりだったらしい。もちろん大歓迎だよ。自宅に戻ると縁側に座った彼にお茶を出す。


「相変わらず美味しいな」


「トミーはこのお茶の大ファンだよな」


 それを聞いていたリンネ。縁側に座っている俺の膝の上に乗ったまま言った。


「ランとリーファがお手伝いをしたお茶は美味しいのです。沢山飲んでもいいのです」


「そうだよな。沢山貰おうかな。リンネもお手伝いしているんだろう?」


「はいなのです。水やりはリンネのお仕事なのです。いつもバッチリなのです」


 尻尾を振って答えているよ。2人でお茶を飲みながらの雑談タイムだ。


 従魔達はトミーが来て俺がお茶を出したことでしばらく外に出ないと分かったのだろう。ランとリーファも入れて5体で庭やビニールハウスの中で遊び出した。


 新しい雪原エリアはかなり広い。情報クランと攻略クランはレベルが105に上がってまた活動範囲が広がっているが、いまだに森すら見つかっていないそうだ。俺は昨日103に上がったところだ。


「115に近づかないとダメなのかな?」


「そうじゃないかな。今のところ魔獣もずっとホワイトウルフでさ、こいつのレベルが上がっていっているだけなんだよ。ウルフがいるエリアを抜けないとな」


 彼らが倒しているホワイトウルフのレベルは108だそうだ。保護色になっていて素早いので簡単には倒せないんだよなと言っている。


「ただ今のところ俺たちが狩場にしている雪原ではライバルはいない。そして狩場は広い。おかげでストレスは感じないな」


 両クランはエリアの広さから、次の街はそう簡単には見つからないだろうという見方をしているそうだ。確かに今のところ東西の洞窟以外は何もヒントがない。その洞窟も次の街へというよりはレベル上げの狩場になっていると予想している。


「次の街、次の街と慌てて動く必要もないだろう。新しいエリアに来たばかりだし、新エリアを十分に楽しもうという気でやってるよ。それにいずれにしても115にならないと装備が更新できないしな」


 それでいいんじゃないかな。グラフィックだって綺麗だし、景色を楽しみながら攻略すればいいと思う。俺がそう言うと情報クランの連中も同じ考えだそうだ。


「強化石は出てるの?」


 俺が聞くと首を左右に振る。


「攻略クランにも聞いているが、彼らもまだこのエリアでは見ていないそうだ。雪原の街にやってきて、今まさにレベル上げをしているプレイヤーにも情報を求めているけど、強化石、あるいはそれに類する新しいアイテムがドロップしたという話はないんだよ。ドロップしているのは印章だけだよ」


 敵のレベルがまだ低いからなのかな。


 その後の雑談をしていると、クエストについての話題になった時にトミーが言った。


「このゲームはさ、もちろん次々と新しいエリアを見つけて攻略していくというRPGの王道の部分はある。ただそれ以外に、特にクエスト系については過去エリア、街にその攻略のヒントがあるって事も多いんだよ」


 俺は幸にしてというか農業で安定した収入があるので、クエストはどちらかと言うと積極的にこなしていない。せいぜいマップ作成くらいかな。ただ街の中にはいろんなクエストがあり、プレイヤーはそれをこなすことで報酬を得て金策にしているというのは知っていた。


 その多くのクエストの中で、それを達成するためのヒントが過去のエリアにあることが結構あるそうだ。しかも過去エリアが絡むクエストは成功報酬が高くなっているのだと教えてくれた。


「運営としてはクリアしたエリアが廃れない様にしているんだと思う」


 言われてみれば、この前、水の街から森の街に船に乗ったけど、どっちの街にもそれなりにプレイヤーがいたな。第3陣だと思っていたけど、その中にクエストをこなしている第2陣や第1陣のプレイヤーがいたのかもしれない。


 それにしてもだ、クエストをすると名声が上がる。でも俺はそれほどクエストをしていない。でもそこそこ名声がある。どういう事だろうか。


「タクの場合はワールドアナウンスの数が多いのが一番の理由じゃないか。あとこれは推測になるけど、依頼を受けてこなすクエスト以外に隠しクエストというのがあって、タクはそれを結構こなしているというのが情報クランの中での理解なんだ」


「隠しクエスト?」


「俺たちが隠しクエストって言い方をしているだけだ。たとえばその街でキーとなるNPCがいてそのNPCと接触しているとか、同じ様にキーとなる場所に出向いてNPCと話をしているとか。それを隠しクエストと呼んでいるんだ。タクの場合はその隠しクエストをこなしている数が多い。そしてその隠しクエストはポイントが高い」


 トミーが言っていることがよく理解できない。どういうこと?と聞き直した。


「まずテイマーギルドを見つけ、フェンリルを従魔にしたこと」


「そこからかよ」


「まあ聞いてくれ。そこから始まって、第3の街の公園でNPCから黒翡翠の欠片を貰った。渓谷の街の公園で知り合った子供に梨をあげたら、その子の親がやってるレストランで第5層の鍵を貰った。それ以外でも船に乗って移動中に土の街の煙を見つけたりしてる。他にもあるだろうけど、これらが加味されて名声が上がってるんじゃないかな。今回の加護の件もポイントに繋がってると思うぞ」


 情報クランは俺の名声が高くNPCから好かれている、好感度が高いという事実から逆にどうやったらNPCからの好感度が上がるのかということを話しあったことがあるそうだ。俺が積極的にクエストを消化していないのは彼らも知っている。その前提で色々と話をして今トミーが言った結論になったんだとさ。


 彼の説明に納得できる様なできない様な気分だよ。というのは俺はそれらは偶々だったと思ってるから。


「正解は運営しか知らない。ただそう考えるのが一番納得できるんだよ」


 クエストの話から俺の好感度の話までなっちゃったよ。でもこうやっていろんな話をするのがいいんだよ。ゲームだから攻略はするんだけど、攻略至上主義というかそればっかりしても面白くないと思うんだよな。特に俺の場合は別のゲームでそれだったから。


「まぁタクは今まで通りに好きなことをしていたらいいんじゃないか」


「最後のまとめ方が、超適当じゃね?」


「ゲームだしさ、いいんじゃない?」


「まぁね」


「ところでさ、加護についてはたまたま俺はソロでやっていたから一番乗りと言っても俺しかいなかったから俺がゲットしたけどさ、これがたとえば情報クランとか攻略クランの様に複数のプレイヤーでパーティを組んで倒していたらどうなっていたんだろう?」


「それについては2つパターンがある。1つは1人のプレイヤーだけが手に入れることができる。その場合は宝箱に端末を近づけた時点でウインドウが現れたと思うんだ。譲渡不可、換金不可のアイテムがありますがどのプレイヤーが所持しますか?とかな」


「なるほど」


「もう1つは参加していたプレイヤー全員が加護を入手できるケースだ。このどちらかだろう」


 彼によると、今俺が質問した件については情報クランの中で話題になったことがあるらしい。その時にみんなで話をした結論が今トミーが言った説明だそうだ。他のゲームでそう言う仕様になっているのがあるのだと教えてくれた。個人か全員か。PWLはどっちなんだろうな。


「トリガーNM戦の場合は特殊なトリガーを持っている人がアイテムをゲットできるのはタクも経験があるだろう?」


 確かに第5層の鍵とか、もっと前には黒翡翠の欠片とかいうのがあった。でもあの島のダンジョンではトリガーはない。だからどうなるのかと話合った結果ががさっき言った2つの内のどちらかじゃないか。となったそうだ。


 活動時間が近づいてきたとトミーが出ていくと、俺は工房にこもって週末のバザール用の焼き物を作る。リンネの尾が9本になってから焼いた従魔達の焼き物が好評でここ数回は売り切れが続いているんだよ。


 工房に入る前にエプロンを身につけると、それまで遊んでいた5体の従魔が皆一緒に工房の中に入ってきた。いつもの様に少し離れた場所に座ったタロウの背中に4体の従魔が座って大人しく作業を見る。相変わらず飽きないみたいだ。


 出来上がった焼き物を従魔達に見せる。

 

「主がどんどん上手くなっているのです」


 リンネ以外の4体も喜んでくれる。


「ありがとな」


 新しいデザインにしたせいか、窯業スキルが少し上がったんだよ。マイスターを狙う気はないけど1つでもスキルが上がるとそれが製品に反映されるし、焼成時間も少しだけだけど短くなるんだよ。この辺はスキルが上がった恩恵がしっかりと反映されている。


「これでまた主がウハウハになるのです」


「ガウガウ」


 今週末のバザール用に結構な数の従魔の置物を作ることができた。それらを端末に収納してバザールの準備は終わったぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ