実践で検証する
従魔の能力のアップについて4人にグループメッセを送っていたので次の日の夕方、4人が自宅にやってきた。
「クルミのスロウの魔法はNM戦やボス戦でかなり有効になるぞ」
縁側に座っている4人。お茶を一口飲んだスタンリーが言った。
「5%で効果2分、リキャスト10分だっけ?スタンリーの言う通りで長期戦だとかなり有効ね」
「タロウとリンネもすごいな。ついにリンネも九尾狐になったんだな」
「はいなのです。リンネも立派な九尾狐になったのです」
俺の膝の上に乗っているリンネが9本の尻尾を彼らに見せている。自分で立派になったと言うところがリンネらしいよ。
「タロウの威力が増えたのもでかいよな、ジャンプと合わせるとかなり強烈なダメージになるだろう」
「しかも従魔の敵対心が低いのよね」
トミーとクラリアが言った。その通り。うちの従魔達は敵対心が低い。なので序盤からガンガン攻撃してくれるんだよ。大助かりだ。
「それでタク、隠れ里には報告に行ったのかい?」
「行ってきた。リンネの両親に話をしたよ。もっと世界を回って経験を積んでこいと言ってくれたので当分リンネと一緒に行動できる」
俺が言うとそりゃ良かったと皆言ってくれた。聞いていたリンネも尻尾をブンブン振っている。その後で、大主様から聞いた加護の話を4人にすると全員驚いた顔になった。
「バンダナと同じく全ステータスアップだろうな」
「聞いている限り、そんな感じだった。加護だから特定のステータスだけってことはないだろうし」
「その話だと他にもどこかに神獣がいて加護をくれそうね。それで感覚的に加護でレベル幾つ上がったかわかる?」
クラリアが聞いてきた。
「あくまで感覚だけど2レベルくらいかな」
そう言うとそれは大きいなと4人が言った。あくまで感覚だよ。
「バンダナで10レベル、加護で2レベル、実質12レベル上ってことか」
「タクがトッププレイヤーで間違い無いわね」
マリアが言うと皆間違いないぞと言う。
「主は一番なので当然なのです」
膝の上でミーアキャットポーズにになったリンネが言った。
俺の従魔と加護の話が終わると新しいエリアの話になる。依然としてプレイヤーは来ていないが、いくつかのパーティが島のダンジョンをクリアしているのでもうすぐエリアボスを倒して新しいエリア、雪原の街に来るだろうと言っている。
「ただボス戦の25名を集めるのは簡単じゃないみたい」
フレンド繋がりで25名を揃えられるケースもあるがそうじゃないケースもあり、その場合はギルドのホールで募集をかけて人を集めてエリアボスに挑戦する。その話は俺も以前に聞いたことがあるので知っている。野良募集ってやつだ。
エリアボスは2度目の挑戦からはレベルが10下がる。一方でプレイヤー側の条件は変わっていない。25名制限だ。つまり実力がないパーティが混じっていたとしても他の20名、4パーティがしっかりしていれば弱体されたボスに勝って新しいエリアに来ることが出来た。今まではそうだったらしい。
ところが今回のエリアボスのシロクマは体力が多く、のしかかりという特殊技がある。装備関係がしっかりしていないとボスのレベルが10下がったとは言っても簡単に倒せなくなっている。今までのエリアボスとは違う。
どうやら募集をかけた時に所謂地雷パーティが入ってきて、その結果クリアができないと言うことが起こっているそうだ。
地雷パーティで一番多いのは武器や防具を6段階強化せずにボス戦に参加してくるパーティだそうだ。レベルだけ99に上げて強化やダンジョンボスを倒していないパーティが混じるとまず勝てないという。
「ひどい話だな。まるで寄生じゃない」
俺がそう言うと皆その通りだと言った。
「なので最近の人集めは主催者側が条件つけてるわね。全ての装備が6段階強化済みのパーティに限るとか、島のダンジョンボスのドロップ品を持っているパーティに限るとか。もちろんこの両方の条件をつけているケースもあるの」
「タクも分かると思うが地雷パーティの情報はプレイヤー間で広まる。あいつらのパーティはやばいぞとなる。そいつらが主催で声をかけても誰も集まらない。となるとそのパーティは自分たちできちんと強化をし、ドロップ品を装備するまでは誰も相手にしなくなる」
「言い方は悪いが、今回のエリアボス戦でそのやばいパーティが炙り出されたんだよ」
トミーとスタンリーが言った。ただそのやばいパーティの数はそう多くないらしい。大抵はしっかり準備をしてから挑戦する。なので今、島のダンジョンに挑戦しているパーティが多いそうだ。うん、準備はした方がいいよ。
「装備をきちんと強化して普通のPSがあれば勝つ確率が高いボス戦になってるの。もうすぐ雪原の街に新たにプレイヤーが着いて活動をすると思うわ」
クラリアが言っていた通り、翌日から雪原の街にプレイヤーの姿がちらほらと現れ始めた。皆無事にボス戦に勝利してやってきているんだな。後で聞いた話だとほとんどのプレイヤー、パーティは島のダンジョンをクリアし、装備を充実させてからエリアボス戦に挑戦しているそうだ。
新しい街が賑やかになると、多くのプレイヤーが動くことで新しい情報が取れる。情報クランも仕事が進むんじゃないかな。
俺は相変わらず午前中は自宅にこもっていて、最近はバザール用の焼き物を作っている。リンネの尾が9本になったので新しい置物を作っているんだよ。
タロウの上にランとリーファが乗って、その隣、中央にクルミ、右側にリンネ。その3体の従魔の足を土台で繋げて1つの置物にしている。クルミは実際よりも大きめのサイズで作ってみた。
「どうだ」
焼き上がった新しい従魔の焼き物を手に取って工房の中にいる従魔達に見せるとランとリーファは飛び上がってサムズアップをし、クルミはその場でバク転、タロウは尻尾を振りながらガウガウと吠えた。耳が後ろに垂れているから機嫌がいい。
「主、でかしたのです。リンネの尾っぽもちゃんと9本あるのです。これでまたウハウハになるのは間違いないのです」
「皆が気に入ってくれたのならよかったよ。ウハウハになるためにもっと作るぞ」
「作るぞ、なのです」
午前中工房で焼き物を作った俺は、一旦ログアウトして午後にインすると今度は自宅から雪原の街に飛んだ。
街の中にプレイヤーの数が増えてきた。北門から外に出るとそこにも多くのプレイヤーがいたので引き返して東門から出た。こっちはまだマシだ。
従魔達のレベルアップがあり103の一角ユキウサギの討伐は何も問題ない。ということで敵を倒しながらさらに東に進んでいく。最悪転移の腕輪で戻れるという気楽さがある。
一角ユキウサギのレベルが104になった。雪原は起伏がある上に、常に細かい雪が降っているので視界が悪い。タロウとリンネがいないと相当苦労しそうだ。
結局街の外で3時間ほどレベルが104の一角ユキウサギを倒して経験値を稼いだところでそろそろ帰ろうかと従魔に言うともうちょっとやりたいと言う。
「今はノリノリなのです」
「ガウガウ」
ノリノリなのか。確かに新しい力を得たから使いたいよな。そう言うと3体が大きく頷いてくる。
「分かった。もう少しやろう」
「レッツゴーなのです」
さらに104のユキウサギを倒しながら東に進んでいるとウサギよりもずっと大きな真っ白な魔獣が現れた。
(レベル105のホワイトウルフです)
105が出だした。しかも種族が変わったぞ。となるとドロップも期待できるかも。俺がそんなことを考えている間にも従魔達は自分の仕事をするんだよ。クルミは俺に魔法壁を張るとそのまま近づいてくるウルフにスロウの魔法を撃つ。と同時にリンネの精霊魔法が狼に直撃する。そこにタロウが蹴りを入れて俺が刀を振るとホワイトウルフが光の粒になった。
「いい感じだぞ」
「主もいい感じなのです」
「おう。ありがと。」
危ない場面もなく倒せたけど何もドロップしない。敵のレベルがまだ低いのか、俺に運がないのか。多分敵のレベルがまだ低いのだろう、そう思いたい。
門を出てからずっと東に進んでいるが雪原に積もっている雪の深さは変わらない。草原の上に数センチの雪が積もっていて、見渡す限り白い世界だ。細かい雪も降り続いているが雪はそれ以上積もらない。これもゲームだな。俺たちは草原で小高い丘になっているところの上に立ってぐるっと周囲を見たけど一面雪化粧だ。
このエリアも相当広そうだよ。しかも今までと違って視界が悪い。簡単には攻略させてくれないな。
レベル105のホワイトウルフを倒していると時々ウルフの攻撃が止まることがある。リンネによるとタロウが猛獣系の頂点に君臨しているのでそれで攻撃を躊躇うことがあるのですとの事だ。毎回じゃないけど、こうして敵の動きが止まると楽になる。
「タロウ、すごいぞ」
「ガウガウ」
撫でてやると身体を寄せてくる。タロウもリンネももう立派になっているはずなんだけど相変わらず子供なんだよ。
雪原でそれなりに倒したところで転移の腕輪で自宅に戻ってきた。タロウとクルミとリンネも満足したのかリラックスしているよ。ランとリーファは俺の肩の上、タロウは縁側に座っている俺の隣でゴロンと横になっている、クルミはポンチョのフードの中、そしてリンネは縁側に座っている俺の膝の上だ。
「主、明日も雪の上で狼さんをやっつけるのです?」
リンネの背中を撫でていると顔をあげて聞いてきた。
「そうだな。午前中はランとリーファと一緒に畑仕事をしてから工房、午後から雪原の街に言って白い狼を倒すか」
「明日も沢山倒すのです。なので今日はゆっくりと休むと良いのです」
「うん、そうするよ」




