雪合戦は楽しいのです
「なかなかエリアボスが倒せないらしいね」
「スタンリーから聞いたのかしら?その通りなのよ。ボスのレベルが下がったと言ってもまだまだ体力が多いし特殊技もあるからね」
「エリアボスに挑戦して負けたプレイヤーが、アイテム狙いで島のダンジョンの攻略に方針を変更した。その話が広まって今はエリアボスよりも島のダンジョンに挑戦しているパーティの方が多いんだよ」
「それって情報クランが攻略方法の1つとして紹介したんだろう?」
俺が言うと2人がその通りと声を揃えて言った。
「俺たちはエリアボス戦が厳しいのならこう言う方法もあるよ。という紹介をしているだけで、決してダンジョンボスを倒さないとエリアボスが倒せないとは言ってない」
でもダンジョンボスも簡単じゃないよなと俺が言うとその通りだという2人。
「皆苦労してるわ。中にはエリアボスの難易度を下げろって運営にメールを出しているプレイヤーもいるみたいなの」
「嘘だろう?マジでそんな事やってるの?」
自分がクリアできないのを棚に上げてレベルや難易度を下げろと文句を言っている奴がいるなんてびっくりだよ。誰も勝てないのならともかく、俺たちはレベルが高かった時のボスを倒している。そこからボスのレベルが10下がっている。初戦は負けるかもしれないけど、何度もやれば相手の攻撃のパターンが見えてきて攻略の難易度は下がる。ゲームなんだから何度も挑戦したらいいじゃないか。
「まあ、数万人のプレイヤーがいる。中にはいろんな人がいるだろう」
苦笑しながらトミーが言った。
その話が終わるとこのエリアの話になる。情報クランも街の中にある武器屋や防具屋から装備のレベルとそれらを強化をして強くするという話を聞いている。
「次の街に行けば強化ができると考えるのが普通よね」
「神魂石はドロップしてるのかな?スタンリーらは見てないと言ってるし、今日短時間だけど俺も外に出て一角ウサギを倒したけど出なかった」
「俺たちもまだ見ていない。なので街周辺の一角ウサギじゃなくて別の魔獣がドロップするか、あるいは敵のレベルによるのかもしれない」
渓谷のエリアの水牛と同じだな。あの時は45以上の水牛からドロップ率が上がった。
「レベル115で装備が買える。とりあえずこの街に腰を据えて活動だな」
今俺たちは全員レベル99だ。レベルが上がれば上がるほど次のレベルに上がる為に必要な経験値が多くなる。俺は今までのペースでやるつもりだけどね。
「テイマーギルドで聞いた話だと俺たちが入ってきた南門以外の門の外は雪原で、その先のどこかに森もあるって」
俺が言うとその話は彼らも街の中から情報として入手していた。彼らの情報の方が詳しく、森は雪原の北の方角だそうだ。ただその森に行く為にはそれなりにレベルを上げないと厳しいと言われたらしい。それはテイマーギルドで聞いたのと同じだな。
「タクがまたすごい情報を取ってくれるだろうと期待してるんだよ」
「勘弁してよ」
トミーが無責任な事を言ってるよ。俺が行く場所なんて限られているんだからさ。
「タクもこの街でレベル上げ?」
「そうなるかな。とりあえず100には上げたいよね。99って中途半端だし。あとはいつも通りだよ。そっちは?」
聞くともちろんレベル上げやするけどバンダナ狙いで木のダンジョンに挑戦すると言っている。クラリアの盗賊はジョブ帽子が優秀だけど全てのステータスが上がるあのバンダナはいくらでも欲しい所だそうだ。ジョブ帽子で思い出した。忍者の帽子というか頭装備のことを忘れてたよ。俺がそう言うとトミーとクラリアが同時にもういらないだろう?と言ってくる。
「タク。バンダナと帽子は同時に装備できない。そしてタクのバンダナは12段階強化済みでレベルで約10レベル分アップしている。どう考えてもバンダナの方が優秀だぞ」
「そうそう、どんな効果があるのか見たいという目的で狙うのならわかるけど、おそらくそれを手に入れても装備する機会はないんじゃない?12段階強化済みのバンダナより上の装備なんてないわよ」
「確かにそうなんだけどさ、クラリアが言った様にどんな効果があるのかは見たいんだよ。まぁすぐにって訳じゃないので、また時間があるときにでも挑戦しようと思っているんでそのときはお手伝いを頼むよ」
印章80枚のNM戦、人数は10名。流石に俺と従魔3体だけだと厳しいだろう。
「そっちが4枠だろう。俺たちが協力するからそんときは声かけてくれ。9枠で行けるだろう」
「ありがとう」
翌日からは午後に雪原の街に飛んで外で一角ユキウサギを相手に経験値稼ぎをする。今日は西門から外にでた。雪が積もっている草原を歩いているとタロウやリンネが気配を察知してくれるので助かるよ。タロウが顔を左に向ける。と同時に頭の上から声がする。
「主、敵がいるのです」
そう言うとリンネは俺の頭の上から雪の上に降りるし、クルミも肩からタロウの背中に乗るとすぐに魔法壁をかけてくれる。分身は出しっぱなしなので最初に不意打ちを喰らっても大丈夫なんだけど、それでも不意打ちは喰らわない方がずっといい。
レベル103のウサギはツノを突き出してジャンプしてくるんだけど、そのスピードが結構早いんだよ。ウサギだと思ってナメているとやばい。ただ、来るのがわかっているとしっかり準備できる。今もウサギのジャンプを躱しながら刀で傷をつけ、そこにタロウの蹴りとリンネの魔法で倒すことができた。まだライバルがいないこともあるのでそれなりの頻度で接敵する俺たち。
「ガンガン倒してやるのです」
「ガウガウ」
戦闘大好きな従魔達。俺が帰ろうと言わないとずっと外で敵を倒したがるんだよな。
「そろそろ帰ろうか」
「主、お家に帰る前に雪合戦をするのです」
「ガウ!」
そう言われると転移の腕輪を使う訳にはいかない。敵を倒しながら雪原の街の東門に戻ってくると門の近くで雪合戦だ。
とは言っても従魔は後ろ足で雪を蹴ってくるだけなんだけどね。それを避けながら俺は小さな雪を固めて彼らに投げる。元々俊敏性の高いタロウやリンネはひょいひょいと避けるんだけどそれが楽しいらしい。クルミもタロウやリンネと一緒になって雪の上を走り回っている。
それにしてもこの雪原の街、東門と西門の2つの門から外に出てみたけど景色がほとんど同じなんだよ。若干起伏のある丘が草原エリアでその草原には雪が数センチ積もっている。次の街を見つけるにしてもどっちの方向に進めばよいのか見る限りだと分からない。今までのエリアは、なんとなくあっちの方かなというのが分かる様になっていたんだけどな。明日は北門から外に出てみよう。それでもし他の門と同じ景色だったらおそらく街の誰かからヒントをもらう仕様になっている気がする。当然ある程度のレベルは必要になるだろうけど。
「主、どうしたのです?」
「ガウ?」
気がついたら3体の従魔達が足元に集まっていた。考え事をしていて雪を投げなかったからかな。
「ごめんごめん、ちょっと考え事をしていたんだよ」
そう答えるとクルミが肩に乗ってきた。リンネも頭の上に乗ってくる。
「考え事をするのならお家ですると良いのです。ランとリーファも一緒に考えてくれるのです」
頭の上に乗ったリンネが言った。
「家に帰るのはいいけど、お前達は沢山遊んだのかい?」
「ガウ!」
一声吠えると身体を押し付けてくるタロウ。
「タロウは明日も雪合戦をしようと言っているのです。今日の雪合戦は終わったのです」
従魔達がいつも気を使ってくれるんだよな。
「そうか。じゃあ、ランとリーファが待っている家に帰ろう」
年内の更新はここまでです。1年間ありがとうございました。
みなさま、よいお年を。




