雪原で戦闘
新しい雪原の街のマップ作成クエストが終わったのは3日後だった、ギルドで報酬を貰い、別宅で休んでいると隣の庭からマリアとスタンリーが入ってきた。2人とも戦闘着姿だ。
外は寒いから部屋にはいろうかと言ったが2人は外で大丈夫だと言う。まあリアルと違って震える程の寒さじゃないしね。ポンチョのフードが大好きなクルミも今は庭でリンネと遊んでいるよ。タロウもマリアが撫で終わると雪が積もっている庭で他の従魔達と一緒に遊び出した。
2人が教えてくれたが、最初に来た俺達以外でまだこの雪原エリアに来たパーティはいないそうだ。
「攻略クランの他のメンバーもそうなの?」
「そう。情報クランも同じ。皆エリアボス戦で負けてるのよ」
「レベルが下がったと言ってもだ、ボスは体力が多い上にのしかかってくる特殊技がある」
エリアボスに勝つ為には、まず島のダンジョンをクリアしてそこでスカーフと靴を手に入れて、それからボスに挑戦する流れになっているそうだ。これは情報クランが公開した攻略方法の1つだが、皆それを倣っているという。もちろんダンジョンボス戦に煙玉が有効だということも公開している。エリアボス戦では靴とスカーフがあるとないとでは難易度が変わるだろう。それくらいにパラディンと神官の負担が大きい。
「ただ準備が不十分だとダンジョンボスを倒すのも簡単じゃないだろう?」
スタンリーが言う通りなんだよな。あのダンジョンボスも簡単じゃない。エリアボスと違ってレベルが下がることもないし。しかも1パーティで30分制限だ。攻略クランの他のメンバーも自分たちでダンジョンボスとエリアボスを倒して街に来るので待っていてくれと言っているそうだ。彼らなら早晩どっちのボスにも勝利してここにやってくるだろう。しっかりと準備、強化をすれば勝つ確率があがるよ。
「ところで街の中は回ったかい?」
「ああ、忍具店に行ったらレベル115からだって言われたよ」
俺が言うと2人がそうなんだよなと頷いている。武器屋、防具屋でも同じ事を言われたらしいが、そりゃそうだろう。ジョブで差別はしないよな。
「それでまた強化するって話よね。神魂石を使うのかしら」
「どうかな。このエリアで神魂石がドロップしたらそうなるだろうけど」
この街には強化屋はない。スタンリーらのパーティは街の外、雪原で戦闘をしたそうだ。相手は真っ白で大きな角があるウサギ。レベルは103。今のところ倒しても何もドロップしていないと教えてくれた。
「保護色になっているので見つけにくい。しかも大きくて結構強いんだ。雪の中から突然飛び出してくる。経験値稼ぎにはいいんだろうけど常に四方八方を警戒しないといけない。森の中で敵を倒すのと同じ感覚だよ」
「タクならタロウちゃんとリンネちゃんがいるから平気じゃない?」
「どうかな」
自分たちの名前が出たからか、従魔達が集まってきた。俺は今2人から聞いた話を3体の従魔にする。
「問題ないのです。タロウとリンネがバッチリ敵を見つけてやるのです。クルミも主をお守りするので大丈夫なのです」
尻尾を振りながらリンネが熱弁している。俺が基本従魔頼りなのは間違いない。
「どちらにしてもまずはレベル115を目指して経験値稼ぎってことだ」
「115と言っても相当な経験値が必要になるわな」
「確かにね。俺は従魔達とのんびりやるよ」
2人と別れてから街の外に出てみようと俺たちはテイマーギルド近くの東門から外にでた。街の中は雪が降っていなかったけど、外にでると細かい雪が降っている。確かに一面真っ白だよ。
門を出たところに積もっている雪を蹴っ飛ばして遊んでいたタロウだけど、俺がポンチョを脱ぐと周囲を警戒する仕草になった。クルミもタロウの背中に乗っている。リンネは頭の上だ。
雪原と言っても雪はうっすらと積もっているだけなので移動するのに支障はない。緑の草原が白い草原になっている感じだよ。草原を歩くとサクサクと雪を踏む音がするんだ。めっちゃリアル。足跡はしばらくすると消える。
歩いていると雪原が盛り上がってそこから角を生やしたウサギがこちらに突進してきた。ただ雪原が盛り上がる前にタロウとリンネが気がついていたので問題ない。それにしてもスタンリーが言っていたが大きい。リアルのウサギの倍以上あるぞ。クルミよりも大きいな。
(ミント、これは?)
(はい一角ユキウサギです。レベルは103です)
街を出たところの魔獣のレベルが103か。こっちは99だから4違うんだな。バンダナもあるし加護もある。問題ないだろう。
このエリアで敵と初遭遇したが問題なく倒す事ができた。今のウサギとの戦闘で気がついたけど、敵というか魔獣は雪の上を歩いても足跡が残らないんだな。足跡がないからどこにいるのかが見つけにくい。スタンリーが言っていた通り森の中と同じで常に周囲を警戒する必要がある。
その後しばらく街の周辺で一角ユキウサギを相手した俺たちは一旦雪原の街に戻ってきた。ポンチョを着ると待ってましたとクルミがフードに飛びこ込んだ。
街の中を歩いているとレストランがあるが、寒い場所にある街でもありテラス席がない。困ったなと歩いていると通りから路地に入っているところにあるレストランの前にコックの格好をしている人族のおっちゃんが立っていた。
「こんにちは」
「おっ、プレイヤーさんかい。どうだい?うちのレストランに来てくれよ」
「従魔は大丈夫ですか?」
隣にいるタロウをポンポンと叩きながら聞いた。
「もちろん。この街は寒いからね。どのレストランも外で食べる席はないんだけど、逆にどこの店でも従魔と一緒でもOKになってるんだ」
それはありがたい。タロウもブンブンと尻尾を振っているよ。
「ありがとうございます。俺はタク、従魔はタロウとリンネとクルミです」
「初めまして、なのです」
「ガウガウ」
「おう、俺はこの店の経営者をやってるエルギン。よろしくな
エルギンさんは経営者兼コックだ。彼に続いて店の中に入った。店の名前は『スノウディア』雪鹿?
店の中には床の上にテーブルが置かれているが、ゆったりとしている。テーブルとテーブルの間隔が広い。これなら問題ないな。そう思って見ていると壁際の席に案内された。
なるほど。店に入ってすぐに左側に移動するから中央のテーブルに座っている人たちの横を通る必要がないんだな。
「ここは従魔達を連れているお客さんの席だよ。ここならゆっくりできるだろう?」
「確かに。ありがとうございます」
「ガウガウ」
「ありがとうなのです」
俺がテーブルに座ると早速タロウが床の上で横になった。リンネはタロウの背中の上に乗ったがクルミは俺の肩の上に乗ったままだ。
「お勧めの料理は何ですか?」
「鹿肉と雪の下の野菜の料理だな」
なるほど。それで店の名前に鹿があるんだな。納得した俺は鹿肉のステーキと雪の下の野菜のスープを頼んだ。これが美味しかったんだよ。すっかり満足しているとエルギンさんがテーブルにやってきた。
「すごく美味しかったです」
「そうかい、そりゃよかった。他のプレイヤーさんにもしっかり宣伝しておいてくれよ」
そう言って声を出して笑っている。このゲームのレストランのNPCは豪快な人という設定になっているのかな。
「この雪原の街っていつも雪が積もってるんです?」
「そうだよ。年中こんな感じだな。雪がなくなる日はないね。でも住めば都さ、いい街だよ」
俺たちはまた来ますと言って店を出た。すぐにクルミがフードに入ってきた。別宅まで街の中をぶらぶら歩くけど本当に他のプレイヤーがいない。別宅に入ろうとしたら向かい側の建物から情報クランのメンバーのリックが出てきた。俺たちに手を上げると聞いてきた。
「街の外に出てたのかい?」
「一角ユキウサギ相手に少し経験値を稼いできたよ。それから飯を食ってきたところ。そっちは?」
「俺たちも外でウサギを倒してきた。打ち合わせが終わって解散したところでね、これから飯でも食おうかと思ってたところなんだ」
どこで飯を食ったと聞かれたのでたった今食べてきたレストランの場所と店の名前を伝える。もちろん美味しいというもちゃんと言ったよ。聞いていたリックがじゃあ行ってみるかと歩き出したところで情報クランの玄関からトミーが出てきた。挨拶を交わすとトミーが言った。
「クラリアと2人でそっちに邪魔してもいいかい?
「こっちは問題ないよ」
「ないよ。なのです」
「ありがと。彼女を呼んでくる」
俺たちが庭で待っていると2人がやってきた。




