コンビニでお買い物をしたのです
2日後、風の街の郊外、森の中でレベル上げをしているとクラリアから連絡がきた。ボス戦に勝利したそうだ。俺たちは彼女から連絡が来る少し前にレベル98に上がっていた。風の街のコテージにいるということなので俺たちも一旦街に戻ることにする。
それにしても昨日、今日と今までよりも身体の動きがいいし、刀のダメージも出ていた気がする。これはひょっとして加護効果なのか。だとしたらこれはでかいぞ。バンダナと同じでステータスがアップして、実質レベルアップしているのと同じかも。
風の街の北側の丘陵にあるコテージに戻ると、2つの大きなコテージから2人ずつ、4人がほぼ同じタイミングでやってきた。俺たちが帰ってきたのを見ていたのかな?
彼らが来ると庭にあるテーブルに座る。従魔達もいつものポジションに腰を下ろした。
「やっつけたんだろう?おめでとう」
「3度目だったしな」
「回数は関係ないよ」
2つのクランとも俺がした様に狂騒状態になる前に目眩しをしてから下腹に攻撃をしたそうだ。
「煙玉が有効だった。神官もパラディンも前回よりも楽だったと言っている」
スタンリーが言うとクラリアもうちも同じよと言っている。被弾上等で懐に飛び込まないと時間切れになるボス戦だという認識だ。聞くと情報クランが27分8秒、攻略クランは27分3秒で倒したそうだ。俺よりも早いよ。どちらのパーティも戦闘能力が高いからな。
「ドロップは固定みたいね。ランドトータスの加護は出なかったけど、それ以外のドロップは同じだったわ」
2つのクランとも、スカーフは神官が装備することにしたらしい。回復魔法が切れるのが一番やばいからだという理由だ。指輪はパラディンが装備し、彼らがそれまで使っていた回復の腕輪はウォリアーが装備する。つまり目の前にいるスタンリーとトミーが装備することになった。突き詰めていくとトップクラスの連中は大抵同じ結論になるんだよな。
「靴の効果については、2人のパラディンが装備してみたの。感覚的には移動速度は10%、1割ほど遅くなっているって。ただ攻撃力や盾の威力は間違いなく10%以上は上がっているという話。2人とも同じ感覚よ」
ジャックスとリックというパラディンで上位のランク、いやもっとはっきり言うとPWLで1番、2番のパラディンの彼らが同じ事を言っているのならそうなんだろう。移動速度ダウンというデメリット以上に攻撃力や盾の威力が増すのならボス戦やNM戦の前に履き替えればいい。
こっちは従魔3体と俺という変則的なパーティなので参考にはならないだろうが、この2つのクランは勝利したことを踏まえて情報を公開するそうだ。
「ボス戦までのルートや宝箱の位置について情報を公開、それとは別にボス戦についての情報を公開するの」
ルートは自分たちで見つけたいというプレイヤーもいるそうで、分けて公開することにしたそうだ。
「正直煙玉がないと、あのダンジョンボスの攻略は簡単じゃないと思うよ。いや、煙玉があったとしてもそう簡単じゃない」
トミーが言っているが俺もそう思う。ボスの弱点や癖がわかったところですぐに倒せるほど簡単じゃない。アイテムはもちろんだけど、それ以外にプレイヤーの戦闘のスキルもそうだし、装備関係も充実させる必要がある。俺が言うと皆その通りだと言ってくれたよ。
「武器、防具、これらを6段階強化するのは必須。それに加えて実際ボスと対峙した時のPS。初見で勝つのは相当難易度が高いよ」
「タクの場合はレベル97で勝ってるけどね」
マリアが冷かしてきた。
「俺の場合はね、何と言っても従魔達が超優秀だし」
そう言って膝の上に乗っているリンネを撫でてやる。8本の尻尾をブンブンと振って喜んでくれているよ。そういえばリンネの尻尾はいつ9本になるんだろうか。8本に増えてから結構時間が経ってるぞ。
彼らは落ち着いたらまたボス戦に挑戦してもいいかなと言っている。後衛用のスカーフは唯一の首装備だし、狩人がいれば靴も有効な防具になる。指輪もしかりだ。
俺はもういいかなと思ってる。指輪をもらったし、加護ももらっている。スカーフは装備できないし、靴は速度ダウンの時点でノーだ。使わない装備だから使う?と言ったが彼らは自分達で取るから大丈夫だと言う。
「勝って手に入れる方がずっと嬉しいだろう?」
確かにそうだ。
「記念品で持っておけばいいんじゃない?」
クラリアにそう言われたよ。
彼らは明日からはまたエリアボスを探す活動をすると言っている。こっちはまずはレベルを99まであげることだ。とは言ってもそれだけをする気はない。バザールもあるし釣りもある、もちろん畑仕事もある。やることがてんこ盛りだよ。
俺が今日の外での戦闘について話をすると4人がそれって間違いなく加護の効果だよと言う。
「また実質レベルが上がったんじゃないか?」
「トミーの言う通りでね。俺もそんな気がしているんだ」
俺が言うとやっぱりと言う。
「加護の効果はトミーやスタンリーが言う通りと私も思う。でもその情報は公開しないでおくわね」
「そうしてくれると助かる」
次の日、俺たちはリンネの両親がいる隠れ里を訪ねた。ダミーの岩を抜けた通路の先にユズさんが待っていた。
「こんにちは」
「こんにちはなのです。主、リンネは父上と母上の下に参るのです」
「うん、行ってこい」
「はいなのです」
ユズさんに挨拶をしたリンネ。俺の頭の上から飛び降りると両親がいる祠に一目散に駆けていった。俺たちはユズさんと一緒に村長の家にお邪魔をする。
村長のクルスさんにイチゴのお土産を渡してから雑談だ。
「プレイヤーの方はあちこちに移動する。大変ですね」
「強くなるためですからね。大変というか楽しんでますよ」
ひょっとしてと思って島のヌシの話をしてみたが、村長は知らないと言う。となると当然加護についても知らないよな。その後も少し話をして村長の家を後にすると、タロウとクルミと一緒にリンネの両親がいる祠というか神社に足を向けた。
参道の先にある階段の上にはリンネと両親のキツネ2体が俺たちをまっていた。まずはイチゴをお供えする。
「主、父上と母上に強くなったなと褒められたのです」
そう言って俺の頭の上に伸び乗ってきた。クルミは左の肩の上に乗っている。
「よかったじゃないか」
そのまま大主様の夫婦に顔を向けた。
「いつも頑張ってくれているので大助かりです」
「んむ。リンネが頑張っている様で何よりだ」
「リンネもちゃんと主のタクのお手伝いができているのね」
「はいなのです」
「お手伝いどころかリンネもタロウもクルミも無くてはならないメンバー、仲間になっています」
そう言うと九尾狐の夫婦、リンネの両親が大きく頷いた。実際そうだからね。
「リンネよ。これからもしっかりと主のタクのお手伝いをするのだぞ」
「わかりましたなのです」
リンネの両親に港の街のエリアのことを聞いてみたが、その街については知らないと言うことだった。知っていたら加護について聞こうと思ってたけど知らないのなら仕方ない。
また来月お邪魔しますと祠を後にすると最後に村のコンビニだ。キクさんにイチゴと梨とポーションを渡して沢山の野菜をもらう。いつもの物々交換だよ。
「相変わらずあちこち動いているのかい?」
もらった野菜のお礼を言うとキクさんが聞いてきた。
「ええ、今は港の街があるエリアにいます。海がある場所です」
「港の街かい。ここにたまにやってくる商人から名前だけは聞いたことがあるよ」
なるほど、商人ルートで情報が入るという設定なんだな。そう納得しているとキクさんが続けて言った。
「タク、この店にあるフード付きのポンチョコートを買わないかい?最近入荷したんだよ。寒い時に着ると暖かいよ」
キクさんが唐突に言ったよ。
「寒い時?」
「そうだよ。確かそこのエリアには風の街ってのがなかったかい。年中北風が吹いてるって話を聞いたことがあるよ」
「その通りです」
これも村に出入りしている商人情報という事なんだろうな。
「プレイヤーさん達は皆元気だから要らないかもしれないけどね。でもあんた達なら収納があるから持っても邪魔にならないだろう?万が一に持っておきなよ」
NPCなんだけど普通に商売が上手いんだよな。毎回野菜を沢山もらっているし。
俺はキクさんが進める濃い茶色をしたフード付きのポンチョを買った。キクさんによればテイムしている従魔は元々寒さに強いので要らないそうだ。
お礼を言って店を出ると、その場でタロウとリンネとクルミが俺にポンチョを着ろという。着ると3体とも大喜びしてくれた。クルミはタロウの背中の上でジャンプをするし、タロウは尻尾を振ってガウガウと吠えている。
「格好いいのです。似合っているのです」
リンネも褒めてくれたよ。そうかと答えているとクルミがタロウの背中から俺に飛び乗ってきたかと思うと首の後ろに垂らしているフードの中に身をいれた。
「クルミがそこから外を見ているのです。この場所が気に入ったと言っているのです」
俺からは見えないが背中のフードに身体を入れて上半身だけ出して覗いているってことか。まあ、クルミが気に入ってくれたのならよしとしよう。
ちなみにリンネはどうなんだ?と聞いたら俺の頭の上が良いらしい。
せっかくだからとポンチョを着たまま転移の腕輪を使って従魔達と一緒に自宅に戻った。自宅に戻るとランとリーファもサムズアップしてから歓喜の舞をしてくれた。
従魔達はポンチョが好きなのかな。
何よりキクさんが言った様にこれ、暖かいよ。普段着として使えそうだ。




