島のダンジョン攻略 その5
次の日の午後、俺たちは港の街に飛んだ。そこから船に乗って島に渡ると桟橋から転送盤を使って小屋に飛び、そこからダンジョンに向かった。
「この前見た時よりも強くなっているな」
ダンジョンの前にいる島のヌシが俺たちを見て言った。
「ありがとうございます。行ってきます」
そのまま第6ワープまで飛ぶと、通路にいる敵を倒しながら奥に進んでいく。前回よりも討伐がずっと楽だ。レベルが上がっているし装備も充実しているから当たり前なんだけど、それでも難易度が全然違うよ。ずっと楽になっている。
予定より早い時間でダンジョンボスの部屋の前に着いた。ここで一旦休憩する。情報クランと攻略クランは勝利したかな?ここはパーティ単位での攻略になる。端末を見ると彼らが今いる場所が提示されて、それからある程度推測がつくんだろうけど見ない事にする。今は目の前のボス戦に集中だ。
「しっかり休んだか?」
「ガウガウ」
「タロウもクルミもばっちりなのです。もちろんリンネもばっちりなのです」
3体を見る限り問題はなさそうだ。俺は尻尾を振っているタロウに顔を向けた。
「タロウ、俺が言うまで王者の威圧はなしだ。いいかな?」
「ガウ」
王者の威圧は最後の最後にタゲをとってもらう時まで温存だ。できればそれ無しで勝ちたい。
「よし、じゃあ行こう」
立ち上がって扉に近づくと目の前にウインドウが現れた。
『ダンジョンボスの部屋に転送されます。ボス戦は人数が最大5名、制限時間は30分です』
その声の後、ウインドウに『ボス戦に飛びますか?』その下に『はい』『いいえ』と選択肢が出た。
『はい』を選択するとその場から転送された。
飛んだ先は前回と同じだ。すぐに蝉を詠唱する。その間にクルミの反射壁、リンネの魔法がかかった。
「全力で行くぞ」
30分制限だ。1秒でも惜しい。準備ができると広場に飛び出した。すぐに大きなダンジョンボスのヤシガニが突撃してきた。それを避け、躱しながら固い腹や爪に刀を振る。装備を強化したことでこの前よりはダメージが出ていると信じたい。
俺が刀を振ると同時にボスの横に陣取ったタロウが蹴りを入れ、リンネは約束通り氷の魔法をボスの顔にぶつける。確かにこの前よりもダメージがありそうだ。それが証拠に前回は魔法が顔に当たっても挙動を変えなかったが、今リンネの魔法が当たると一瞬動きが止まる。1秒もない、コンマ数秒だろうけど、そのタイミングで俺も刀を顔に突き出してダメージを与えることができる。左右の爪の攻撃はサイドステップと蝉で回避だ。
蝉の残枚数とリキャストタイムを管理しながら攻撃する。リキャストタイムが0になって蝉がまだ2枚以上残っているので上体を低くしてボスに突っ込むと刀をその下腹に突き出した。刀が肉に食い込む感触がある。4本の爪を振り翳してくるので全ての爪の攻撃は躱しきれない、あっという間に分身が消えたがその時はステップバックしていた。すぐに術を詠唱して分身を4体出す。今のはやばかった。
前回の失敗から今回は秘密兵器がある。というかこの前はそれを使うのをすっかり忘れていたんだよな。
俺はボスのヤシガニの顔に煙玉を投げた。ヤヨイさんのアドバイスで、港の街のサツキさんの店で買った煙玉だ。
投げるとダンジョンボスの顔に当たり、黒い煙が立ち上った。それを払おうと爪を顔に持ってくるので身体が反った。
そのタイミングで俺が下腹に刀を振り、リンネがボスの腹に氷の魔法を撃った。俺の刀よりも大きなダメージがあったみたいでボスの身体が震える。もう一度俺の刀とリンネの魔法そしてタロウの蹴りが入る。
「リンネ!タロウ、大丈夫か」
「はいなのです」「ガウ!」
声を聞いて安心したよ。
煙玉の有効時間は短いが十分に効果はある。リンネが次のタイミングを伺っているのを見て俺はもう1個煙玉を投げる。
リンネが再び腹の下をに氷の魔法を腹にぶつけた。同時にタロウの蹴りも入る。すると顔を上に持ち上げたボスが口から泡を吹いた。狂騒状態になったがこれはチャンスだ。
タロウとリンネは言わなくても下腹に何度も攻撃を加える。俺も突っ込んで両手に持った刀で下腹を切りつけた。すぐにステップバック、そして蝉詠唱。狂騒状態になったので1分後にまた泡を吹くはずだ。それまで攻撃をなんとか躱していく。タロウとリンネもそのタイミングをじっと伺っているのが目に入ってる。本当によくできた従魔達だよ。
「来るぞ!」
ボスが再び顔を上に反らせた。そのタイミングでさっきと同じ様に下腹に攻撃する。泡は蝉で回避しながら刀を振る。左右からは魔法と蹴りが下腹に集中する。俺たちの攻撃で腹が大きく避けたかと思うと身体を仰け反らせたままボスが動きを止めた。ボスから離れて様子を見ると動きを止めた数秒後、ボスの身体がドスンと床に落ちた。
「よし!やったぞ」
「勝ったのです。やったのです」
「ガウガウ」
(ダンジョンボスとの戦闘に勝利しました。戦闘時間は27分40秒です)
27分台後半か。煙玉は効果があったな。あれで狂騒状態になる前のリンネが2度撃った精霊魔法が大きなダメージを与えることができた。俺の刀も含めて、狂騒状態の前に魔法と片手刀で下腹にダメージを与えたのが良かったんだろう。クルミの15%のダメージバックも相当蓄積されただろうし。もちろんタロウの蹴りのダメージもレベルが上がって強くなっている。うん、皆が頑張ったから勝てたぞ。
ボスが消えるとその場に大きな宝箱が現れた。それを見て大喜びする3体の従魔。俺がその宝箱に端末をかざすと宝箱が消えて転送盤が現れた。
「まずはここから出よう」
転送盤に乗って飛ばされたのは時間切れで飛ばされた先と同じ、ダンジョンを出たところの岩場だった。この前は強制退出だったが今回は勝利して出てきたぞ。
岩場に出るとリンネとクルミがすぐに俺の頭の上と肩の上に乗ってきた。タロウはそばに来て大きな身体をぐいぐい押し付けてくる。
「主、何が入っていたのです?ワクワクなのです」
「ガウガウ」
「よし、見てみるぞ」
端末を見ると宝箱には複数のアイテムが入っていた。
・ランドトータスの靴(パラディン、ウォリアー、マスターモンク、盗賊、ハンター、上忍)
・ランドトータスのスカーフ(神官、魔法使い)
・ランドトータスの指輪(全ジョブ)
・ランドトータスの加護
・50万ベニー
お金は分かるとして他の4つがどういう効果があるのかわからない
(ミント、ランドトータスの靴の効果は?)
(はい。その靴を履いているプレイヤーの持っている武器の攻撃力がアップします。一方で移動速度がダウンします)
なるほど。移動速度ダウンの代わりに攻撃力アップか。
(武器にはパラディンの盾も入るの?)
(はい。両方の手に持っている武器や盾に同じ効果があります。両手で持っても片手だけでも移動速度ダウン率に変化はありません。盾の場合は防御力がアップします)
これはパラディンにとっては神装備じゃないの?元々どっしりと構えるから移動速度が遅くても不利にならないだろうし、盾の防御力と武器の攻撃力の両方がアップするんだぜ。
あとはハンターにも有効かも。離れたところから弓を射るハンターもそう移動しないだろうし、矢の威力がアップするのならメリットがでかい。俺は残念ながらあまりメリットがなさそうだ。避ける、躱しながら戦闘をしている上忍で移動速度ダウンは困る。
(ランドトータスのスカーフはどんな効果があるの?)
(はい。装備した神官、魔法使いの魔力量の総量アップです)
これは神官、魔法使い共に必要だろう。魔力量アップはでかいよ。
(ランドトータスの指輪とは?)
腕輪じゃなくて指輪なんだよ。何だろう。
(はい。装備すると時間に応じて体力が回復します)
ん?回復の腕輪のことかな?そう思ってAIのミントに確認してみる。
(効果は同じですが回復の腕輪よりも時間当たりの回復量はこちらの方が大きくなっています)
なるほど。回復の腕輪の上位版の位置付けになるってことか。指輪だしこれは俺も装備できそうだ。
(ランドトータスの加護については?)
(それについては情報を持ち合わせておりません)
教えてくれないんだな。次のエリアで使えるのかも。指輪以外上忍として使えそうな装備はないが俺たちはダンジョンボスを倒したぞ。それにしても加護って何だよ。
アイテムの内容が分かると俺は大人しく待っていた従魔達にドロップしたアイテムとその効果を説明する。
「ガウガウ」
「主がまた大金持ちになってのです」
50万ベニーが出たので喜んでくれているよ。装備品についてはどうするか考えよう。情報クランと攻略クランの連中も間違いなく勝利しているだろうから、彼らと相談してみるかな。ドロップ品が違っている可能性もあるしな。




