強化が完了しました
風の街についてから3日後、市内のマップ作成を完了してギルドに顔を出すとそこのホールに情報クランと攻略クランのパーティメンバーが座っていた。少し前に無事にこの風の街に着いたそうだ。マリアはタロウを見ると椅子から立ち上がって近づくと撫で回している。
「こんにちは。無事に到着したみたいだね」
「こんにちはなのです」
俺に続いてリンネが俺の頭の上から言った。クルミは肩の上に乗りながら器用にジャンプしている。挨拶の意思表示なんだよな。
彼らはアライアンスを組んで進んできたのではなくてそれぞれのパーティで山裾を進んでこの街にやってきていた。経験値稼ぎと神魂石集め、それを考えるとアライアンスよりもパーティ単位で行動した方が良いよね。
彼らが座っているテーブルの隣に俺が座るとタロウは俺の隣の床の上に座るとゆっくりと尻尾を左右に振る。いつものポジション、いつものリラックスモードだよ。
「タクの予想通り途中にセーフゾーンがあったわ」
クラリアが俺に顔を向けて言った。聞くとセーフゾーンは山裾を北に進み、東西に走っている山にぶつかると、そこから東に進んだすぐの場所、山裾から森の中に入ったところにあり、小屋とかはなくて周囲を柵に囲まれているエリアだったそうだ。山裾に沿って森を注意しながら歩いていると見える場所にあるらしい。
「タロウとリンネがいるからタクらは森の中でも普通に移動できるんだろうが、森の中はかなり視界が悪いな」
両クランともセーフゾーンを起点にその周辺を歩いてみたそうだ。獣人のレベルは96なのだが視界が悪いので不意打ちを喰らうことがあったという。
「大森林の小屋の周辺よりも木々が多い。あのセーフゾーンはレベル上げの狩場になるかな」
「狩場というよりは移動中の休憩場所、避難場所的な意味合いの方が強そう」
2つのクランのメンバーがそんな話をしている。俺たちはそこを知らないが、確かに森の奥は木々が多くて視界が悪い。プレイヤー側に不利になっているであろうことは想像できる。
「セーフゾーンから山裾に沿って東に進んできたんだけど、確かに今まで感じなかった北風や海からの風を感じるわね」
「今のところフィールドでの戦闘や攻略で風の影響はないが、これから先では風の影響が出てくる可能性はあるな」
トミーの言葉に頷いている他のメンバー。確かにこれまで雨や風といった気象条件はダンジョンの中でしか感じられなかった。今後もそうだとは限らないよ。しかも彼らによるとこの大きな森は南部よりも北部、山側の方が東西の幅が広くなっているそうだ。山裾を北に進んでいくが実際には北西の方角に進むらしい。
彼らはこれからコテージを借り、手分けして街の中を調査した後で情報を公開する。攻略クランも今日はコテージを押さえるのと街の中の様子を見て強化屋で強化できる武器、防具を強くし、具体的な活動は明日からになると言っている。新しい街に来たらやることがてんこ盛りだよ。
「タクはこの街を中心にレベル上げかい?」
「そうなるね。神魂石を集めつつって感じ」
防具を強化しないとダンジョンボスに再挑戦できないからね。しばらく腰を落ち着けてやろう。こっちはソロプレイヤーなので好きな時間に好きな事ができる。
コテージを借りて街の中を見てくると言って2つのクランの連中がギルドから出て言った。
ギルドのホールにいるのが俺たちだけになると従魔達が顔を俺に向けた。クルミもタロウの背中に乗ってこちらを見ている。
「主、これからどうするのです?」
リンネが聞いてきた。
「街の外で敵をぶっ倒すぞ」
戦闘だと聞いて尻尾をブンブン振る従魔達。風の街には来たとは言ってもこっちのレベルはまだ91だ。もっと上げる必要があるし、石を集めて強化もしないといけない。
街の外に出ると風を感じる。俺たちは街を出ると真っ直ぐに森に入ってそこから東を目指して進んでいく。森に入ると風は感じないがその代わりに97の魔獣や獣人がいる。3時間ほど森で敵を倒しているとレベルが92になった。皆大喜びだ。クルミの身体は光らないが気にしていない。15%のダメージバックがあるからね。
神魂石もこの3時間で赤、白、茶色、そして緑とゲットできた。一旦風の街に戻ると強化屋に顔をだしてNQの防具2つの強化をお願いした。これでNQの防具がSTR、AGIのどちらも4段階強化できた。
「主がまた強くなったのです」
「ガウ」
リンネとタロウが言うとタロウの背中に移動したクルミがそこでジャンプしてくれる。
「ありがとうな」
ギルドのホールで彼らにも話したけど、当面は風の街の周辺で経験値を稼ぎつつ石狙いだ。
俺のレベルは92だが俺よりもレベルが高いプレイヤーが多くいる。彼らが次々と風の街に到着していて、日々風の街にいるプレイヤーの数が多くなっていた。
風の街の東側と西側には山の中に伸びている坑道が2つある。西側は今でも採掘をしているのでプレイヤーは入れないが東側は入れるそうだ。情報クランによるとこの坑道も基本山辺の街と同じ様にプレイヤーのレベル上げの場を想定しているらしい。坑道は広くて入り口付近の敵のレベルは97。ただし中にいるのはトカゲ以外に魔法や弓を使うオークの上位種であるトロルが徘徊している。
「レベル以上にきつい敵だぞ」
俺の家にお茶を飲みに来たトミーがそう言っていた。
「山辺の街と同じだったら、坑道から奥に行くと広場があるって感じなのかな」
「たぶんな。ただひょっとしたらその奥に続いているかもしれない。そこまではまだ調査というか行けていないんだよ」
街にやってきているプレイヤーも視界の悪い森ではなくて坑道での経験値稼ぎが多いそうだ。俺たちは坑道じゃなくて森でやるよ。
街の外で敵を倒していると3日後に93になった。神魂石もそれなりに溜まったので山辺の街と風の街で強化する。やっとNQ装備がどちらも6段階強化できた。
NQ装備が5段階目になったところでHQと比較してみたんだけど、強化したNQ装備の方が優れていた。これはAGI、STRのどちらでもそうだ。そのNQ装備がやっと6段階の強化ができたよ。今までお世話になったHQ装備は端末に収納する。店売りしてもいいんだけど幸いにお金には困っていないからね。2度と出ないキャンペーンのドロップ品だし、記念に持っておくつもりだよ。
この日活動が終わって夕方に自宅に戻ってクールダウンしていると、いつもの4人が家にやってきた。俺が93になってしばらくしてから彼らのレベルが97になったそうだ。彼らは坑道や街の外の山裾沿いで経験値を稼いでいる。山裾沿いで活動をしている時はエリアボスに続く道か坑道を探しているがまだ見つかっていないらしい。
「街の東西にある坑道の全てをチェックした訳じゃないんだけど、今のところ次のエリアに続くであろうルートは見つかっていないのよ」
港の街のエリアで街が3つあった。今までの例から見ると街は風の街が最後で次はエリアボス戦になるだろうと4人は見ているし、俺もそう思う。
「まさかダンジョンクリアが条件とかないよね?」
俺が思いつきで言うと、それも考えたそうだ。
「あのダンジョンボスを倒すと新しいルートが出てきてそれがボス戦に続くかもしれないとう事も考えたんだよ。ただそうなるとダンジョン攻略の条件になっている1パーティ、5名制限というのがな」
確かにそうだ。今までだと25名とかのアライアンス前提のボス戦だ。5名制限だとソロで活動している人たちはかなり厳しい。となるとやっぱりボスは別の場所にいるんだろうな。
「ここはまた”持っている”タクに期待だな」
「いやいや、ちょっと待ってよ、こっちはまたレベルが93だからね。装備だってまだフル強化してないし。期待しないでくれよ」
スタンリーが言った言葉に返事をすると、膝の上からリンネの声がした。
「主に任せるのです。安心なのです」
リンネがまた安請け合いしているよ。




