リンネにも聞くのです
皆が開拓者の街にいたので、そう時間を置かずにやってきた。最初はいつもの4人かと思っていたが、それぞれのクランのパーティ全員、合計で10名がやってきた。もちろんこちらは大歓迎だよ。
「大人数でごめんなさいね。いろんな意見を聞いた方が良いと思って」
入ってくるなりクラリアがそう言った。
「こっちは問題ないよ。クラリアが言う通り沢山の意見を聞いた方が良いよ」
お茶と果物を配ると皆お礼を言ってくれる。こっちは自分が作ったものを食べたり、飲んだりしてもらうのが嬉しいんだ。ランとリーファが手伝ってくれるので、自宅の畑で獲れるものは全て評判がいい。
和室や縁側に思い思いに座ったところで打ち合わせが始まった。縁側の端に司会役のクラリア、その隣にスタンリーが立っていて他のメンバー、俺たちは縁側に座っている。ちなみに俺はタロウの背枕で庭に座っていて、膝の上にクルミ、頭の上にリンネ、両肩にはランとリーファが座っている。
ダンジョンの中に入るとまずは第5ワープを見つけてそこで登録をしてから奥に進んでいった彼ら。途中の敵については倒せたけれども正直きつかったと言っている。
「レベル94で96のトカゲ3体や97の2体を相手にするのはきつかった。レベルが95になって少し楽になったよ」
ルートはわかっているので集中力が切れることなくボスの部屋の前まで辿り着けたそうだ。それについて皆からお礼を言われたよ。
「主にお任せすると安心なのです」
久しぶりにリンネのそのセリフを聞いたぞ。
「ダンジョンボスとの戦闘だけど、正攻法でやったの。狂騒状態になって泡を吹いてきてそれをリックがまともに浴びたの」
えげつないな。聞いているとわざと浴びた様に聞こえる。そう思っているとスタンリーが庭に座っている俺に顔を向けて言った。
「うちも同じだ。ジャックスがわざと浴びた」
やっぱりそうなんだ。あの泡の正体を知るにはそれが一番だよな。
「それで、あの正体が分かったのかい?」
俺が聞くと2人が大きく頷いた。
「あの泡を浴びると行動が遅くなる」
「遅延効果がある泡なのか」
そう答えると実際に浴びたリックが声を出した。
「その通り。これはジャックスともさっき確認したけど10%ほど動きが遅くなる。効果は1分間。それが切れるタイミングで再び泡を吹いてくる」
なるほど。それにしても厄介だな。10%のスロウはでかいよ。よく死ななかったもんだ。
「遅くなった瞬間にトミーに横に並んでもらったんだよ。聞くと攻略クランもスタンリーが前に出てリックの隣に並んだそうだ」
2人が盾になって攻撃をしのいだということか。流石にトップクランだな。瞬時に最善の方法を見つけてくるし、それが同じ方法になる。
「残念ながら弱点は見つかってない。ただタクも言っていたけど精霊魔法の通りはいいわね」
「その精霊魔法だけど、雷よりも氷の方がダメージが大きいのよ」
「えっ!そうなの?」
思わずマリアに顔を向けたよ。俺はリンネに雷の精霊魔法しか打たせてなかったよ。
「マリアの言う通りだよ。俺も色々魔法を撃ったけど、氷の魔法が一番良いダメが出てた」
情報クランの魔法使いのワビスケもそう言う。彼らは今回は勝ち負けよりもボスの挙動を調べるということを目的にしてボス戦に臨んだそうだ。それでも30分の間にボスの弱点は見つからなかったと言っている。2人の魔法使いもしっかりと自分達の仕事をしているんだな。見事だよ。
「あのボスでもどこかに弱点はあるはずなのよ」
「あるとしたら固い甲羅のない腹の下の部分じゃないか?」
「あそこは柔らかそうだったけどさ、どうやって攻撃する?」
メンバーが思い思いに発言する。これが大事なんだよな。好きな事を言い合うことで突破口が見つかる事があるから。
「こっちのレベルが上がると通常攻撃と魔法で倒せないか?」
「いや、レベルを上げたとしてもボスは相当硬いぞ」
「タクは泡を蝉で受けたんだろう?」
攻略クランのマスターモンクのダイゴが俺に聞いてきた。
「受けたというかステップバックして蝉で避けたと言う方が正しいよ。それでも分身が剥がされたけどね。でも俺が思うにジョブ特性で勝てる設定にはしてないはずだよ」
特定のジョブがいないと倒せない。そうはしていないはずだ。俺がそう言うと確かにその通りだとスタンリーが言い、周りも頷いている。
「皆が言っている様に腹の下は固くは無さそうだ。ただそこをどうやって攻めるかだな」
「爆弾は使ってないの?」
俺が聞くと今回はわざと使わなかったそうだ。
「今回は勝ち負けよりも挙動の確認と泡が何かを調べる事、あと弱点を見つけることに絞ったの」
「なるほど」
「主、リンネにも聞くのです」
突然頭の上からリンネの声がした。
「うん、リンネ、言いたいことを言っていいぞ」
「はいなのです。青くて大きいカニさんは口から泡を吹くときに体が起き上がるのです。その時にお腹丸出しになるのです」
そう言うとここにいる10名がリンネに顔を向けた。リンネは俺の頭の上からタロウの背中にジャンプするとそこで前足を上げて身体を反るポーズをする。俺にも見せてくれているんだな。優しい子だよ。
「上半身が起き上がるってことだな」
リンネの格好を見ている俺。
「はいなのです、お腹を狙うのならその時が良いのです」
「ガウガウ」
「タロウもクルミもその通りだと言っているのです」
ポーズを終えたリンネがまた頭の上に乗ってきた。
「確かにそんな格好だった。俺たちは泡が来ると思って下がったけど逆にそのときに攻撃をすればいいんじゃないか?」
皆戦闘の時の様子を思い出している。俺は泡が来ると思ってステップバックしていた。ただそれじゃあダメなんだ。そのときに逆に前に出て武器や魔法でお腹を狙ってみたらどうだろう。
そこが弱点と決まったわけじゃないが、見た限りお腹には甲羅がない。ダメージが通りそうではある。
「先に装備を6段階強化した方がいいわね。特にパラディンは6段階強化することでボスの爪の攻撃のダメージも減らせるかも」
「その通りだ」
4本の爪で襲いかかってくると正面の2本を受けるだけで左右からのは身体を動かし避けるが、どうしてもダメージを喰らう。その度に神官がヒールシャワーで回復していたそうだ。彼らはまだ風の街に行っていない。なのでHQ装備をしている。これがNQの6段階になるとそちらの方が上になる。喰らうダメージが少しでも減るかもしれない。少し少しの積み重ねが意外と効いてくるんだよ。このボス戦はパラディンの強さ、硬さが鍵になりそうだ。俺は蝉で対処しよう。
「まとめるわよ。まずやることは装備の強化、合わせてレベルも上げる。そしてボス戦では泡を吹くタイミングで皆がお腹に攻撃をする」
クラリアの話を頷きながら聞いている俺たち。
「次はこの作戦で行きましょう。再挑戦の前に新しい街で強化をする必要があるわね。ということでタクお願い」
俺は庭で立ち上がると山辺の街を出て森の中を東に進んでから真っ直ぐに北上し、北の山の山裾に着いたらそのまま東に移動したら山辺の街と同じく、山裾がえぐれて凹んでいる場所に風の街があったと報告をしてから続けた。
「俺たちは森の中をショートカットみたいに動いて北上したけど、おそらく正解のルートは山辺の街を出てから山裾に沿って北上するのだと思う。多分途中にセーフゾーンがあるはずだよ」
移動時間の話をすると確かにセーフゾーンがあるはずだという結論になる。
「まだ風の街を全部歩いていないんだけど、街では別宅は買えないが、コテージを借りることができる。それと今日見た限りでは武器屋、防具屋はなくて強化屋はあった。俺はそこで強化をした」
強化については1つの強化屋で3段階の強化ができるので山辺の街で3段階強化していなくても問題ないという話をした。意外にこれは知らなかったみたいで皆なるほどと言っているよ。
「コテージは借りたの?」
クラリアが聞いてきたので、ちょうど大きめのコテージが2つ並んでいるその後ろのこじんまりとしたのを借りた話をする。もちろん転送盤の話もしたよ。
「じゃあその大きめのコテージを2つ攻略クランと情報クランで借りよう。そうしたらまた内密の話をタクのコテージでできるぞ」
スタンリーが言うと皆内密の話は大事だぞ。そう言って笑った。
「街の近くの敵のレベルは97。どちらのクランも問題なく街まで行けるよ」
「エリアボスの情報はまだよね?」
「まだだね。ただなんとなくだけど街から東側、海側にボスに通じる何かがあるんじゃないかと思うんだ。俺たちは北の山裾についてから西から東に移動して街を見つけた。その移動の途中には洞窟はなかったし、敵のレベルも96だったからね」
「なるほど。となると街の中の北側の山の中か、街の外の東側のどちらかになりそうね」
その後の話で彼らもまずは風の街を目指すことになった。移動途中で経験値は稼げるし、上手くいけば神魂石も貯まる。それで装備の強化をしつつ次のダンジョンボスへの挑戦の準備をするそうだ。それは俺も同じだ。レベルを上げ、外で敵を倒して神魂石を集める。簡単に攻略できるダンジョンボスじゃないから、しっかりと準備をしないと。




