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ショートカットしよう

 ここしばらくは薄暗いダンジョンに篭っていたから外の景色は新鮮だよ。この日畑の見回りを終えると俺たちは山辺の街に飛んだ。転送盤からギルドの中に入ると多くのプレイヤーがそこにいた。ずいぶんと賑やかになっているよ。


 従魔達は有名なのでギルドのホールにいたプレイヤーの視線を浴びながら俺たちはギルドハウスから街に出た。今でもあの視線には慣れないんだよな。外に出ると東門を目指して歩いていく。久しぶりの山辺の街だけど、広い通りにプレイヤーが多い。多くは今ここを拠点にして活動しているんだな。


 通りを歩いていると、「タロウちゃんよ」「リンネちゃんよ」に加えて最近は「クルミちゃん、可愛い」という声も聞こえてくる。


「主は有名なのです」


 頭の上からリンネが言った。


「俺じゃないだろう?有名なのはお前達だよ」


「ガウ」


「タロウは違うと言っているのです。クルミもリンネも違うと言うのです。主が一番強くて有名なのです」


「はいはい。ありがとね」


 これが始まるとキリがないんだよ。なので最近はそれ以上突っ込まずに軽く流す事にしている。


 東門から出ると目の前は草原でその先に森が見えている。山裾は左右に伸びてそれから南北に伸びていた。


「山裾を左、北方向に敵を倒しながら進むぞ」


「ガウ」


「敵をぶっ倒しながら進むのです」


 街の外の敵のレベルは93。獣人もいれば魔獣もいる。左は山裾、右は森。敵が攻撃してくるのは右側だけなので最初は山裾を歩いていたが、それよりも森の中を突っ切る様に北に進んだ方が早いんじゃないか? こっちはタロウとリンネというレーダーがある。森の中でも突然襲われることはないだろう。それに山裾沿いはすでに情報クランがある程度探索しているはずだ。


 森から出てきた獣人を倒したところで俺は従魔達に森の中に入って、それから北を目指すと伝えた。


「分かったのです。探索はタロウとリンネにお任せするのです」


「頼むぞ」


 方針を変更して森の中に入る。木々が生い茂っていて鬱蒼としているがその中をしばらく東に進んでから北を目指して進んでいく。タロウとリンネが敵の気配を察知してくれるので不意打ちを喰らうこともなく進んでいった。街を出たところでは93だった敵のレベルが94、95と上がってきた。ただこれくらいなら俺たちにとって脅威にはならない。


 山辺の街の洞窟で一番高い敵のレベルは96。となるとこの森で96の敵が出だしたら次の街は近いということなのかな。


 森の中で敵を倒していると印章はもちろん、神魂石もドロップする。ダンジョンでは印章は落ちたが神魂石は落ちなかった。確か木のダンジョンもそうだった気がする。


 95になると敵が固まっていることがある。カニが2体であったり、トカゲが2体とか。獣人は基本1人だが魔法か弓を使って遠隔攻撃をしてくるのがほとんどだ。ゲームならではなんだろうが、森の中でも獣人が放つ弓矢や魔法は木に当たらずにまっすぐにこっちに飛んでくるんだよ。こっちのハンターや魔法使いだと木に当たる仕様になっているんだよな。不公平と思うがそれがゲームだよ。

 

 方向感覚を間違えないタロウがいるので北に向かっているのは間違いない。木々が生い茂っているので北の山が見えないので山まであとどれくらいの距離があるのかはわからないが進んでいくだけだ。セーフゾーンがあるのか、ないのかも知らない。ただ接敵する相手のレベルからそう遠くないところに山裾があるだろうとあたりをつけて、敵を倒しながら俺たちは北に進んでいった。


 今もいきなりリンネが魔法を撃ち、同時にタロウが森の中をかけて行った。後から追いつくと獣人とタロウが勝負している。そこにリンネの魔法、俺の刀でレベル96の獣人を危なげなく倒したところだ。


「リンネ、タロウ、クルミ。疲れてないか?大丈夫か?」


「ガウガウ」


「タロウは問題ないと言っているのです。クルミもリンネも問題ないのです。主、このまま進むのです」


「よし、行くぞ」


 その後も森の中を進んで行くが、結構な頻度でレベル96の魔獣、獣人と遭遇するが、戦闘大好きタロウとリンネが先に見つけては先制攻撃をするので危ない場面がほとんどない。


 山辺の街を出てからどれくらいだろう?戦闘の合間に端末を見ると6時間以上が過ぎていた。そろそろ何か変化があっても良い頃ではある。その後も森の中で敵を倒しながら進んでいった俺たちの目の前に97のヤシガニが1体現れた。97は初めてだ。今までのカニと姿形は同じで少し硬いくらいなので危なげなく倒すとレベルアップした。91だ。クルミに変化はない。


「主、また強くなったのです」


「ガウ」


 敵を倒したところだったので地面の上でリンネとクルミが尻尾をブンブン振って大喜びしている。隣ではタロウも同じ様にしていた。


「その通りだ。皆強くなったぞ。このまま頑張ろう」


 さらに97の敵を倒して進んで行くと、木々の間から山裾が見えてきた。俺たちはそのまま森を抜けた。そこから上を見ると高い山が聳えていて、上の方は万年雪を被っている。港の街から見ていた北の遠くの山々が今目の前にあった。


 さて、これからどっちに行くか。東の海側か山裾に沿って西に行くか。東に行くとしてもすぐに海に到達する感じじゃない。森の中を北に上がってきているが、実際には森の西側を北に進んで来たという感覚だ。となると西側よりも東側に進んだ方が山辺の街から遠くなる。端末を見ると山辺の街を出てから8時間経過している。予想だけど山辺の街から山裾をずっと歩いて行ったとしたら途中でセーフゾーンがあるんじゃないかな。俺たちは森の中をショートカットしてきているからそこを通ってない。


 そう考えると山辺の街から遠い方に進むべきだ。自分の予想が間違っていれば転移の腕輪を使ってまた明日以降に出直せばいい。そう思うと気が楽になったよ。


「よしこのまま東に進もう」


「進もう、なのです」


「ガウ」


 東に進み出してから気がついた。森の中にいたときは感じなかったがこの北の山裾を歩いていくと東風が結構吹いているのが肌で感じられる。向かい風だよ。風を感じたのは島の北の岩場で釣りをした時くらいかな。あの時は風が心地よかったんだよね。今はあの時よりも強い風だ。


 さらに時折山の上からも冷たい北風が吹いていて、東風と北風が吹く山裾を東に進んでいく。森の中から出てくる魔獣はレベル97で変わらない。こっちは91に上がったこともあり、そのレベルなら問題なく倒せるぞ。


 山からの吹き下ろしと海からの風、それらを受けつつ敵を倒して進むこと2時間ちょっと。山裾が抉れたところの奥に街が見えた。山辺の街と同じ様に山裾が抉れているところに頑丈そうな木の柵に囲まれている街がある。その前がちょっとした草原になっているのも山辺の街と同じだ。


「ガウ」


 タロウが顔を上げて吠えた。


「主、目的地に着きました。なのです」


 同時に頭の上から声がした。


「おう、音声案内を終了してくれ」


「案内を終了します。なのです」


 ノリがいいな。それにしてもよく知ってるな。


 街の門に向かって草原を歩き出すと山が迫り出しているおかげで東風はなくなったが、代わりに山からの北風が強くなった。歩けない程じゃないけど今まで訪れた街では風なんて意識したことがなかったから気になる。


 港の街よりも北にあることともあるだろう。万年雪が積もっている山から降りてきている風が冷たい。隣を見ると歩いているタロウの体毛が北風で後ろに流されている。


「風が吹いているのです」


「そうだな。北風だ。ちょっと冷んやりする」


 風に逆らう様に歩いた俺たちは開いている門から街の中に入った。これもゲーム仕様なのか、街の中に入ると風が弱くなっている。街の造りは山辺の街と同じで丸太を組んだログハウス風の建物が並んでいた。


 街は山裾、緩やかな斜面に沿って造られていて、街の奥の方は入り口よりも高くなっている。ここも綺麗な街だよ。


 門を入ったところにいた狼族のNPCが俺たちを見て声をかけてきた。


「プレイヤーさんかい?風の街にようこそ」


「ここは風の街と言うんですか?」


「そうだよ。この街は1年中街の背後の高い山から北風が吹いている。だから風の街と言う名前なのさ」


 なるほど。


「みんな、新しい街、風の街に着いたぞ」


「ガウ」


「着いたぞ!なのです。主が一番乗りなのです」


 リンネがそう言うとタロウの背中に乗っていたクルミがジャンプして回転して喜んでくれる。タロウも尻尾をブンブンと振りまくりだよ。


 一番乗りか。確かにそうだ。まあ順番は気にしてないんだけどね。とにかく俺たちはこのエリアで3つ目になる新しい街、風の街にたどり着いた。


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― 新着の感想 ―
やはり言葉で意思疎通できるリンネは神だな
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