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強制退出

 自宅でリフレッシュした俺は再び島のダンジョンに飛んだ。第5ワープが行き止まりだったことで、正解のルートは第6ワープから伸びている2つのルートのいずれかだ。


 第6ワープに飛んだ俺たちは例によって左側のルートを進む。進み出してすぐにわかった。こちらも第5ワープの奥と同じだ。坑道の中にいるカニやトカゲのレベル、配置は第5ワープの先と全く同じだ。これなら奥まで行けるぞ。第6ワープの左の奥まで行き、そこが行き止まりでまたREPOPしている敵を倒しながら第6ワープ地点まで戻ってきた。これでルートは1つに絞られた。


「次に行く坑道が正解のルートになるぞ。第6ワープから右、右だ。おそらく今度は行き止まりになっていなくて奥に伸びているはずだ。準備はいいか?」


 そう言うとタロウは尻尾を振りながらガウと吠え、クルミは任せておけとばかりにジャンプする。


「ばっちこいなのです。どんどん奥に行ってやるのです」


「よし、行こう」


 気合い十分な従魔達と一緒に右のルートを進み出した。相変わらず敵の配置は同じだ。97も3体固まっている。カーブを曲がるとその先に97が3体いる、これも同じだ。そしてその先に坑道が続いていた。

 

俺たちはその3体を倒すと奥に進んでいく。すると坑道の中央にカニが1体、通路を塞ぐ様にいる。レベルは98だ。トカゲだったのがカニになっている。


「固いカニ、しかもレベルが高いのをここに配置しているってことはこの先がダンジョンボスがいる部屋だぞ」


「分かったのです、あいつを倒して奥に行くのです」


「ガウ」


 魔法をかけ、蝉を張り直した俺たちは98のカニと戦闘を開始した。元々硬いカニだけどレベルが98あるということで相当硬い。片手刀の攻撃は当たるがダメージを与えられているのかどうか不安になる。97のトカゲ3体よりも98のカニ1体の方が強い。というか硬い。レベル90の俺たちだと本当にきつい。


 タロウが横から蹴りをしているがそれでも身体があまりふらつかない。ダメージソースはリンネの精霊魔法だ。


「リンネ、頼むぞ」


「はいなのです。リンネを頼ると間違いないのです」


 戦闘しながらも相変わらずのリンネで安心したよ。それにしても硬い。でもこれを続けるしかない。蝉を張り替えながら戦っていると突然カニがコロンと倒れた。クルミの反射壁でダメージが溜まっていたんだな。


 カニを倒して進むともう1体、98のカニがそこにいた。それを倒して進むと坑道の突きあたりに扉があり、その横に転送盤がある。乗ってみると脳内に声がした。


『ダンジョンボスの部屋に転送されます。ボス戦は人数が最大5名、制限時間は30分です』


 その声の後、ウインドウに『ボス戦に飛びますか?』その下に『はい』『いいえ』と選択肢が出た。一旦『いいえ』を選択して転送盤から離れるとその場に腰を下ろした。見る限りこの近くに敵がPOPする様子はない。腰を下ろすと従魔達が俺の周りに集まってきた。


「あの転送盤に乗るとダンジョンボスの部屋に行く。そこでこのダンジョンのボスと戦闘だ。さっき倒したカニがレベル98だっただろう?おそらくボスはそれよりもずっと強いぞ」


「関係ないのです。どんな敵でもとっちめてやるのです」


 リンネが言うとタロウも尻尾を振りながらガウガウと吠え、クルミはジャンプする。まぁお前達がここまで来て引き返そうなんて言うとも思っていないけどな。


 普通に考えたらレベル90でのボス戦はないだろう。最後の敵のレベルが98だったからこちらは最低でも95、96は必要だという設定のはずだ。いや、もっと上かも知れない。でもせっかくここまで来ているんだし勝ち負けはともかく一度ボスの顔を拝んでおくのも良いかもしれない。


「休んだかい?」


 俺が立ち上がると従魔達も地面から起き上がった。タロウは尻尾を振って身体を寄せてくる。うん、大丈夫だな。クルミもタロウの背中経由で俺の肩にジャンプしてきた。


「リンネもバッチリなのです」


 タロウの背中でそう言うリンネ。


「最初から全力で行くぞ」


「やっちまえなのです」


 俺は転送盤に乗って目の前に出てきたウィンドウで『はい』をタッチした。すると目の前の景色が揺れ、次の瞬間俺たちはボス戦のフィールドに飛ばされていた。


そこは洞窟の中の広場の様な場所になっているが円形の広場のどこにも通路、坑道がない。つまり逃げ道がない。俺たちは広場の壁際に飛んでいる。広場は直径20メートル程でその中心にボスがいた。


 巨大なヤシガニだ。今まで坑道で対峙して来たヤシガニの数倍の大きさだよ。見るからに硬そうな甲羅に覆われている。


 体長は2メートル以上あるだろう。色は濃い青色をしていて、身体を支えている足が4本、それとは別に体の前に大きな爪が4本伸びている。広場の中央にじっとしている。


 広場に飛ぶとすぐに何も言わなくてもリンネとクルミが魔法を唱える。俺も蝉を張って準備をした。


(ミント、あれがダンジョンボスだね)


(その通りです。ボスとの戦闘では勝利するか負けるか、あるいは時間切れか、そのいずれかでないとこのフィールドの外に出られません)


 当然だよな。


「最初からぶっとばすぞ」


 俺はそう叫ぶと広場の中央に駆け出した。

 俺たちが動き出すとボスのヤシガニが威嚇する様に上体を起こす。4本ある爪の内中央の2本を前に突き出し、左右の2本を上に振り上げた。ターゲットは俺だ。


 近づくとボスカニが四つ足でスルスルと動き出した。動きが速い、近づいたかと思うと左右の爪が自分を掴む様な動きをし、同時に上から2本の爪を振り下ろしてきた。ステップバックしてかわすが蝉が1枚剥がされた。全体の動きも、爪の動きも身体に似合わずにかなり速い。こっちは刀を振ることもできずに避けるしかなかった。


 俺がボスの攻撃を受けている間にボスの左側にタロウが陣取り、俺の右後ろにリンネとクルミが陣取った。そのリンネが雷の精霊魔法を撃つ。硬い甲羅に一瞬稲妻が光るがボスの挙動に全く変化はない。


 いつものことだが序盤は動きが変わらなくてもやり続けるしかない。2回目のボスの爪攻撃は躱すことができた。パターンの1つを覚えたぞ。左右の爪が少し横に広がったタイミングで左右と上から爪攻撃がくる。それを躱すと4本の爪が再び左右と上に広がる。その瞬間に爪の付け根に刀を振り下ろす。ただその間隔が短くて途切れない。


 時間を測っていないが、制限時間は30分だ。もう5分は過ぎているだろう。とりあえずやれるところまでやってみるぞ。


 タロウが横から硬い甲羅に蹴りを入れ、ジャンプをして上から足で攻撃する。どこが弱点かも分からないので好きに攻撃させた方がいい。リンネは言わなくても顔に精霊魔法を撃ってくれる。それが当たるとボスの動きが一瞬止まる。その隙に爪の間に入って左右の刀を振って、2回攻撃してすぐにステップバック。


 この攻撃を繰り返している俺たち。時間はもう分からない。それくらいに目の前の敵に集中していた。


 リンネの魔法が顔に命中した。今だと飛び出そうとしたらボスカニが口から泡を吹いた。やばい!と慌ててその場からステップバックするが分身が1体消えた。泡は口から2メートルほど飛ぶと地面に落下する。あれがどんな攻撃なのかは分からないがあのタイミングで吹いてきたことからやばい攻撃であるのは間違いない。しかも動きが一段と早くなってきた。これは狂騒状態か?それとも第二段階で狂騒状態はまだなのか?


「泡に気を付けろ!」


 ステップバックして声を出した。


「分かったのです」


「ガウ」


 気をつけろとは言ったが近づくと泡を吹かれるのではと思うと懐に飛び込めない。完全に俺をターゲットにして4本の足で近づいては4本の爪を上と左右から振ってくる。それらを躱しながらなんとか爪の先に刀を振るだけだがこれだと大したダメージを与えられないだろう。泡を吹く規則性もまだ分からない。


 俺の攻撃が当てにならないとなるとリンネの魔法とタロウの物理攻撃だけだ。雷遁の術を唱えるが刀よりもずっと与ダメが低そうだ。その間にも泡を吹いてくるボス。何度か分身を消されていた。


 近距離というか中距離からちまちまと攻撃をしていた俺たちだが、突然脳内に声がした。


『制限時間を過ぎましたので強制退出となります』


 次の瞬間、俺たちは島の北端、ダンジョンの入り口の近くの岩場に飛ばされていた。


「大きなカニさんがいないのです」


「ガウ?」


 周りを見ているタロウとリンネが言った。クルミも俺の方の上で身体を左右に振ってキョロキョロしている。


「うん、時間切れであの部屋から追い出されちゃったんだよ」


 そう言うとタロウもリンネも尻尾と耳を垂らせた。クルミも俺の肩から降りるとタロウの背中の上で同じ様に尻尾と耳を垂らせている。


「負けたのです?」


「そうだな。負けちゃったよ。でも俺たちがもっと強くなったら今度は勝てるぞ」


 そう言って3体の従魔達をしっかりと撫で回してやる。


「主、次回は勝つのです。リベンジなのです」


 うん、そのポジティブ思考はいいぞ。


「そうだ。強くなって次は勝とう」


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