少し楽になった
ダンジョンから自宅に戻ってグループメッセージを送ると、しばらくしてこの日の活動を終えたクラリアとトミーが自宅にやってきた。情報クランの連中はおそらくまだ活動中なのだろう。久しぶりに彼らと会うよ。
「帰ってきてすぐにお邪魔して悪いわね」
自宅の庭に入ってきたクラリアが言った。
「大丈夫だよ。今日の活動は終わってのんびりタイム、クールダウン中だからね」
実際その通りだ。ちなみに従魔達も今はリラックスして思い思いの場所にいるよ。ランとリーファは俺の肩に乗っているけど、クルミとリンネは精霊の木の枝の上にいるし、タロウはその精霊の木の根元で横になっていた。
縁側に座った2人に梨とお茶を出す。これもいつもの事だ。
「相変わらず美味いお茶だよ。それにしてもクルミのダメージバックが15%になったのか。そりゃすごいな」
「島のヌシの神獣のランドトータスによるとカーバンクルが本当に強くなるのはこれからだと言っていた。どんな風に強くなるのか、楽しみなんだよな」
そう言うとダメージバック以外に何か特別なスキルがあるんじゃないかと言う2人。俺もそう思っている。でないとヌシがあんな言い方をしない。何にしてもクルミが強くなる事はソロの自分にとってはでかい。クルミは自分の事が話題になっていると分かったのだろう、枝の上で何度もジャンプしているよ。
彼らは山辺の街の南北の門の奥にある広場で活動をしているらしく、レベルが94になっていた。聞くと情報クランも同じ94だそうだ。
「坑道の先の広場の奥には通路があって96のトカゲがいる。今はそこでやってるんだけど、魔獣のレベルの上がり具合から見て、次の街があの奥にあるとすると山辺の街から近すぎるのよ。なので最後の街はやっぱりこのエリアの北側のどこかにあると見てるの」
街から街への移動中には大抵セーフゾーンがある。ただ今のところ坑道とその奥の広場にセーフゾーンはない。まだ奥の坑道を調査した訳じゃないけど、普通に考えたらその場所よりも街の前の森がある広いエリアの北側、北の山の近くと考えるのが自然だと言っている2人。
「当初の見立て通りあの奥の坑道は経験値稼ぎの狩場として用意されたと考えるのが一番すっきりする」
「となるとこれからは街から北を目指すのかい?」
俺が聞くとそうなると2人が言った。広場から坑道の探索は情報クランの別のパーティが担当するそうだ。これは攻略クランにも言えることだけど、人材が揃っているよな。
翌日、ログインして畑の見回り、収穫を終えると俺たちは島のダンジョンに飛んだ。レベルが90になり、クルミの能力がアップしたので奥への攻略の再開だ。
島のヌシに挨拶をしてからダンジョンに入り、転送盤で第5ワープに飛んだ。すぐにリンネが強化魔法をかけてくれ、クルミが15%にアップした魔法壁を作る。俺が蝉をはると準備完了だ。
「左側を進むぞ」
「レッツゴー、なのです」
今のレベルは90。12段階強化したバンダナもある。前よりは奥に進めるだろう。ワープ付近の93、それから95、96と危なげなく倒せる。3体固まっている96のトカゲも以前よりもずっと楽に倒せる様になっていた。タロウやリンネ、クルミも見ている限り全く危なげない。
奥に進んでいくとレベル97のトカゲが2体固まっていた。前回はこれを倒すのがギリギリだったけど、今回はずっと楽に倒せたよ。クルミの15%のダメージバック、たった2%と思うかもしれないけどこれが効いているんだよな。少しずつ敵の体力を削っているので一気に追い込んで倒すことができる。
「ここから先は初めてだ。気を抜くんじゃないぞ」
「ガウ」
「任せろ!なのです」
「クルミも頼むぞ」
通路は依然として一本道で分岐がない。進むとまたレベル97のトカゲが3体通路に固まっていた。それを倒すと進んだ先で右に曲がっていて、それを曲がるとすぐその先が行き止まりになっているが、そこにも97のトカゲが3体固まっていて、俺たちを見ると攻撃してきた。大丈夫、こっちはしっかりと準備しているよ。危なげなく倒したところで奥の行き止まりまで行った。
「主、ここではないのです。宝箱も見当たらないのです」
「ガウ」
行き止まりであっても宝箱が従魔達も嬉しいんだろうけど、何もないのが普通なんだよ。
「うん、このルートじゃないな。よし、敵を倒しながら戻ってワープから右に進もう」
「進もうなのです」
進んできた坑道を戻りながらREPOPした敵を倒して第5ワープまで戻ってくると、今度はそこから右のルートを進んでいく。ワープの先はさっき攻略した左ルートと全く同じ、敵のレベル、配置も変わっていない。ルートを覚えている、そして97の敵を倒すことにも慣れてきたのもあってさっきより短時間で進むことができたが、3体固まっていたのを倒すと坑道が先で曲がっており、曲がるとそこはさっきと同じく行き止まりになっている。曲がったところには97のトカゲが3体いるのも同じだ。ただ違うのは3体の奥、行き止まりになっている壁の前には宝箱が見えていた。
「主、宝箱なのです」
「その前に目の前の敵をやっつけるぞ」
「ガウ」
宝箱を見てモチベが上がったのか従魔達が本気モードだよ。いつも本気モードでやって欲しいんだけど。とにかく短時間で3体を倒すことができた。自分も何度も戦闘をしたせいか慣れてきた。
戦闘が終わるとクルミが一目散に宝箱の前に駆け寄るとその場で何度もジャンプする。クルミに続いてリンネとタロウが宝箱に近づいた。俺が一番最後になちゃったよ。端末をかざすと宝箱が消えた。
「主、中身は何が入っていたのです?」
うるうるした目で俺を見つめてくる3体の従魔達。端末を見ると宝箱の中身はベニーだった。20万ベニー入っていた。
「お金だ。20万ベニー入っていたぞ」
「ガウ!」
「やったーなのです。お金持ちになってウハウハなのです」
クルミもジャンプして喜んでくれている。装備できないアイテムよりはお金の方がずっといいな。ただお金は嬉しいがここも正解のルートじゃなかった。そうなると第6ワープのどちらかになる。
「これで一度戻ろうか」
「はいなのです。出直しなのです」
REPOPした敵を倒しながら第5ワープまで戻ってから入り口に飛んだ。午前中のダンジョンの活動で結構な経験値を稼ぐことができた。
「お休みしてからまた来るのです」
入り口から出るとリンネが島のヌシに言ってくれた。
自宅に戻るとまずはお留守番をしてくれていたランとリーファのお相手だ。俺たちが転送盤から現れるといつも木の枝や船から飛び立って俺の両肩に座ってくれるんだよ。癒されるわ。
2体の妖精を肩にのせたまま端末でダンジョンの様子をグループメッセージで送った。ランとリーファはしばらくすると肩から飛んで精霊の木に向かった。そこには休んでいるタロウとリンネとクルミがいる。5体の従魔達が精霊の木の周りで遊んでいるのを見ているだけでほっこりするよ。
俺は立ち上がるとエプロンを身につけた。それを見て遊んでいた従魔達が俺よりも先に工房に向かう。
「庭で遊んでいていいんだぞ」
「皆、主のお仕事を見るのが好きなのです」
「そうか。それならいいんだ」
従魔達の焼き物が出来上がるたびに喜んでくれる。お皿を焼いても喜んでくれる。ここまで喜んでくれるのなら作り甲斐があるよ。
バザールに備えてそれなりの数の従魔の置物やお皿を作ることができた。
「よし、これくらいにしておこう」
「しておこうなのです。これで主がまたがっぽりと儲けるのです」
「そうだぞ、がっぽりと儲けるぞ」
「ガウ」




