主はいつも一番なのです
自宅の畑の見回りや合成もしつつ3日かけて山辺の街のマップクエストを終えた。その頃には情報クランと攻略クランのメンバー達も皆この街に到着し、今はそれぞれ分担して周辺の敵を倒しながら探索し、情報を収集している。彼らはレベル90になっていた。
強化屋で得た情報はその翌日に情報クランには話をした。バンダナとレベルの関係を聞いていたクラリアとトミーが驚いた顔をしていたよ。聞いた時は自分も驚いたんだからそうなるよな。
「12段階の強化プラスバンダナのステータスでレベルで10程上がるのか。おそらく最初の黒の神魂石で6段階強化した時点でレベルで5つ近く上がっていたんだな」
「つまり85の時点ですでに90近いレベルがあったことになるわね。タクと従魔だけでこの街に来られたんじゃない?」
後から考えるとそうなんだけどな。でもあの時は俺と従魔たちで新しい街に行けるなんて考えもしなかったよ。
「それにしてもさ、やっぱりバンダナは神装備ね。感覚的には分かっていたけど、強化しなくても実質のレベルアップになるって言って裏が取れたわ。私たちもまた木のダンジョンに挑戦しないと」
クラリアが言うとトミーもその価値は十分にあると言っている。情報クランのメンバーもバンダナの話を聞いて、木のダンジョンに再挑戦して取ろうという話になっているそうだ。
この日自宅から山辺の街に飛ぶと、ギルドのホールに情報クランのメンバーがテーブルの周りに座っていた。彼らの他にプレイヤーの姿はない。
「こんにちはなのです」
「ガウガウ」
俺がホールに入ると顔見知りの連中が挨拶をしてくる。リンネとタロウもしっかりと挨拶を返してから彼らが座っている隣の空いているテーブルに座ると、タロウは椅子の横の床の上、リンネは膝の上、そしてクルミは肩の上と定位置に座った。
「タクから聞いた情報の中で、バンダナ以外の装備について、神魂石を使った時のステアップとレベルの関係については、皆感覚的に強さを実感しているだろうけど、NPCから情報が取れたということで公開する予定なの」
俺のバンダナと黒の神魂石の強化は余りにインパクトが強いのと、その強化をしたのが誰なのか、バンダナを持っているプレイヤーの数が少ないために該当者を絞りやすいこともあり、今は公開するつもりがないと言っている。確かにバンダナを持っているのは10名いないだろう。それに今公開すると該当者がスタンリーかトミーか俺の3人に絞られる。他のプレイヤーはまだ山辺の街に来ていないのだから。
「情報の公開についてはプロにお任せしますよ」
「お任せしますよ。なのです」
俺の膝の上から声がした。
彼らは5名全員もっている65装備、NQの防具の1つを3段階強化したらしい。NQの装備を何段階強化するとHQの装備と同等になるのかを検証するのだという。
「この街で3段階の強化をした防具と各自が持っているHQの防具を使い分けながら坑道でトカゲ、それと街の前の森の中で魔獣や獣人相手に戦闘してみた。メンバー5名の認識は3段階の強化では、まだHQの方が優れているということだ。ただその差はかなり縮まっている。次の街で4段階目か5段階目を強化した時点で同等になるんじゃないかという見方をしているんだよ」
トミーがそう教えてくれた。
「つまりNQ装備を6段階強化したらHQよりも上の品質になるということ?」
俺が聞くとその可能性が高いと言ったあとで、あくまで俺たちの予測だけどなと付け加える。
「言えることはこの街ではまだHQの方が良い装備ということだ。そしてこれはまた予測になるが、今回強化した後の感覚ではHQはNQよりも2レベル前後で上じゃないかと。ただこれはタクがさっき言った1つのステータスだけど伸ばしているだけなのでトータルのレベルから見るとその上昇率は低いと言うことに関連するので、具体的にレベルいくつ相当だという表現の仕方はせずに、山辺の街で3段階強化した装備よりも無制限NM戦でドロップしたHQ装備の方がまだ上位装備になるという表現になると思う」
トミーの説明の後でクラリアがこの検証は攻略クランにもお願いして、彼らも自分たちと同じ感覚だったのだと教えてくれた。
流石に情報クランだな。プレイヤーが欲しい情報を先読みして検証してくる。
彼らはすでにこの新しい山辺の街の情報を公開している。ただ街の周辺の魔獣のレベルが93であることと、敵が森から攻撃してくる事などを同時に公開しているそうだ。
大森林の小屋には到着しているパーティがそれなりにいるそうで、今日か明日になったらこの街にやってくる。これらの情報はこれから街にやってくるプレイヤーには貴重な情報になるだろう。それに加えて強化石でのステアップとレベルとの関係、そしてHQ装備とNQ装備の関係も今日か明日には公表する予定だそうだ。
そんな話をしているとギルドの奥から攻略クランのメンバーがホールにやってきた。
「こんにちはなのです」
「ガウガウ」
マリアはホールにいたタロウを見つけると直ぐにその横にしゃがみ込んで撫で回しているよ。タロウも尻尾をブンブンと振って喜んでいる。他のメンバーは俺たちが座っている隣のテーブルに座った。まだ人が少ないからどこでも好きな場所に座れるのがいいね。
「今、攻略クランと話をしていたことをタクに言っていたんだよ」
トミーが椅子に座ったスタンリーに言った。
「なるほど。それにしても聞いたぞ、12段階強化すると10レベル程実質レベルが上になるってな。やはり全ステータスが上がるバンダナは優秀な装備ということになるな」
そう言ったスタンリー。俺も真面目に黒の神魂石を作るかなんて言ってるよ。他のメンバーもその話は聞いていた様でどうりでレベルが俺たちよりも低いのを全く感じさせなかったんだよなとか言っている。
「主はいつも一番なのです」
リンネがそう言って俺の膝の上から頭の上に移動した。すると待ってましたとばかりに今度はクルミが俺の膝の上に移動してきた。普段は肩の上に乗っているのであまり撫でてやれない。こう言う時はしっかり撫でてやるよ。
「ところで北門か南門の坑道には入った?」
クルミの背中を撫でながら俺が聞くと両クランとも南北両方の坑道に行ったそうだ。どちらも最初の敵が93のリザードで同じだったらしい。経験値稼ぎの場として用意したのだろという。俺と同じ見方だ。街の外にも93の魔獣が森の中にいる。そのまま森の中で経験値稼ぎをするとなると東から北方面になる。中にいるトカゲを相手にする方が視界が悪い森の中でやるよりは坑道の方が楽なのかもしれない。そこは各自の判断だな。
「タクはこれからどうするんだい?」
「とりあえずこの街のマップは作成した。持っている石で強化はした。そしてこの街には忍具店はない。ということでライバルが来るまでは坑道で経験値稼ぎをしようと思っている。レベルが上がったら今度はダンジョンかな」
ダンジョンはパーティ単位なのでライバルと敵を取り合うことがない。自分のペースでできるのがいいんだよ。
「第2か第3のどちらかが正解のルートに続いている。できれば調査も兼ねて欲しい。お願いしていいか?」
「もちろん」
情報クランも攻略クランもしばらくはこの街を中心に北門と南門の坑道の奥、それからこの街の北側の森を探検しながら経験値稼ぎをするそうだ。確かにここなら移動が楽だ。
ホールでの打ち合わせというか雑談が終わると攻略クランは北門、情報クランは街の外の森を北上してみると言うので俺は南門から坑道に入った。坑道と言ってもそこはゲーム、中に入ると洞窟と言っていいくらいの広さがある。幅も高さも10メートル以上だ。
坑道にいるレベル93のトカゲを倒しながら3時間程経験値を稼いだところで俺たちはその場から開拓者の街に帰った。自宅に戻るとお留守番のランとリーファがやってきた。タロウやリンネ、クルミも自宅に戻ってリラックスしているよ。ガッツリと戦闘をしたからだろうな。本当に戦闘大好き従魔達だよ。それなりに経験値を稼げたので俺も満足だ。




