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ここは主の出番なのです

 彼らが帰っていった後、俺はタロウとリンネとクルミを連れて山の街に飛んだ。夕刻の遅い時間だけどこれは早めに確認した方がいい。


 強化屋さんに入るとドワーフのジグさんが俺を見つけて手を挙げてきた。


「こんにちはなのです」


「ガウガウ」


 クルミはジャンプして挨拶をしてくれた。


「調子はどうだい?おや、新しい従魔かい?可愛いじゃないの」


「ありがとうございます。今日はちょっと相談があるんですけどいいですか?」


「もちろん。見ての通り今は誰もお客さんがいない。こっちに来てくれるか?」


 案内されたのは最初に特別引換券を黒の神魂石と交換した部屋だ。俺が椅子に座るとタロウはその隣の床の上に両足を下ろして横になり、リンネは膝の上に乗ってきた。クルミは左の肩の上だ。


「なるほど。この前のキャンペーンでタクがまた宝箱から黒の神魂石を見つけたのか。そいつは凄いな」


「ありがとうございます。それでこの石でここでバンダナを強化できますか?」


 相手はNPCだし、直球で聞いた。俺の言葉に首を左右に振るジグさん。


「申し訳ないがこれ以上の強化はここじゃ無理だ」


 予想はしていたがやっぱりできないんだ。俺が落ち込んだのを見たのかタロウやリンネ、クルミまで耳を垂れている。いや、お前たち、そこまで落ち込まなくてもと思うくらいだよ。


 俺がやっぱりかと頷いているとジグさんが俺に今どこの街にいるんだ?と聞いてきたので港の街だと答える。


「じゃあもう少し頑張ってレベルを上げるんだな。港の街から北西、いやそれよりもやや西寄りかな?とにかく北西の山のある方向に向かって進んだ山裾に街がある。その街まで行ければそこの強化屋で強化できるぞ」


 ん?街の情報がここで出てきた。それまで落ち込んでいた従魔たちも同時に顔を上げて、耳をピンと立てている。


「何という街ですか?」


「山辺の街。やまのべの街さ」


 ジグさんが教えてくれたのはその山辺の街にある強化屋では港の街で手に入れた装備を3段階強化できるそうだ。今までの街と同じでそこの強化屋では3段階まで、次の3段階はまた違う街だという。


「ただこの黒の神魂石は別だ。この石はそこで6段階強化できる」


「山辺の街で一気に6段階強化できるんですか?」


 その通りだというジグさん。3段階強化というのは神魂石を3個使うということだ。これを職人の立場から見ると同じ装備に3回変更を加えるということになる。1つの街で4回石を使うとその装備が破損するそうだ。


「何故そうなるのかは私らドワーフでも分からん。ドワーフの歴史がそう言っておる。ただこの黒の神魂石は別だ。1個使うだけで良いからの。それで6段階上がるのだ」


「だとするとこのバンダナはまだ1個の神魂石しか使って強化をしていないのでここで2個目は使えないのですか?」


「そう言いたい気持ちも分かる。だがそれは無理なんじゃ。黒の神魂石を使ったタクのバンダナのステータスはこの土の街があるこのエリアの上限に達している。これ以上ステータスを上げることはできない。これはこのエリアで6段階強化した装備についても言えることだ」


 エリアごとにレベルの上限があるのとは別に装備ごとのステータスの上限もあるのか。俺が言うとその通りだとジグさん。


「主、その山辺の街に参るのです」


 元気になったリンネが言った。


「もっとレベルを上げてからだよ。もう少しあとになる」


 この黒の強化石が次の街の強化屋で使え、6段階のステータスの上昇ができることはわかった。俺はふと思い出してジグさんに聞いた。


「HQの装備ってあるじゃないですか。あれって石を使って強化できるんですか?」


「できない」


 即答だよ。クラリアの予想通りだ。


「HQの装備ってのは最初から強化されている装備だ。なのでそれを強化石を使ってさらに強化することはできない」


「なるほど。NQは強化できる。HQは強化できない」


 俺がいうとその通りだとジグさん。


「NQを何段階強化したらHQ相当になりますか?」


「それはあんた達プレイヤー自身で確認してくれ」


 やっぱりそこは教えてくれないか。

 ただ結構な情報を手に入れることができた。新しい街の情報、HQ装備が強化できないこと。


「それにしても黒の神魂石をタクが2つゲットするとはな」


「ラッキーでした」


「運も実力の内と言うぞ。いずれにしても良かったじゃないか。使うのならそのバンダナが良いだろうな」


 ありがとうございましたとお礼を言って土の街の強化屋を後にした俺は自宅に戻ると、ログアウト前にこれらの情報をグループメッセージでいつもの4人に送信した。



 次の日、ログインするとそれを待っていたかの様に端末にメッセージが入ってきた。今から自宅に来るという。


「昨日メッセを受け取ってすぐに連絡しようと思ったらもうログアウトしてたのよね」


 自宅にいつもの4人が来るなりクラリアが言った。その時点で明日俺がログインしたら打ち合わせをしようと決めていたらしい。今日は真面目な話し合いだ。俺は4人を洋室に案内する。マリアもタロウを撫でずに部屋に入ってきている。


「トミーの一言で山の街に出向いて正解だったよ」


「それにしてもだ、すごい情報を取ってきたな。これもタクが黒の神魂石を持っていたからだろうな」


 スタンリーが言うと他の3人がそうだという。俺もそう思っている。黒の神魂石がなければそこまで教えてくれなかっただろう。


 クラリアがもう一度俺の情報を整理するわよと言って確認する。


・港の街から北西(大森林の小屋の北西?)の山の麓に山辺の街がある。

・山辺の街の強化屋で装備や武器の3段階の強化が可能。

・黒の神魂石はそこの強化屋で6段階の強化が可能。

・キャンペーンのNM戦で出たHQの装備は神魂石を使って強化ができない。(すでに強化済みという扱い)NQは強化可能。NQを何段階強化したらHQと同等になるのかはプレイヤー側で確認する必要がある。

・各エリアにはレベル上限と同時にステータスの上限がある。

・港の街があるエリアには山辺の街以外にもう1つ街がある(そこでさらに3段階の強化が可能)


「こんなところかしら」


 まとめたのを端末で全員に転送した。それを見てその通りだという。ジグさんが言っていた情報が全て入っている。


「HQの装備に関してはある程度予想していた通りね。でないと港の街で買った高い装備が無駄になるもの。と同時にキャンペーンで手に入れられなかった装備もNQを強化することでHQ同等になる」


「できるだけ不公平感を取り除こうとしてるわね」


 マリアが言った。


「タクの黒の神魂石だけは別だけどな」


「主は特別なのです」


「ガウ」


 膝の上のリンネと俺の隣にゴロンと横になっているタロウがほぼ同時に声を出し、吠えた。そしてタロウの上に乗っていたクルミはそのタイミングでジャンプしたよ。


「このタクの情報を見たので攻略クランもダンジョン攻略を一旦中断し、今日から合同で山辺の街を目指すことにしたの」


 山辺の街の周辺の敵のレベルが分からないので10名のアライアンスで大森林の小屋から北西の山裾をめざすそうだ。新しい街に到達した時点で黒魂石以外の情報を公開する。


「第2陣からはHQを持っている第1陣に対して不満の声が出てたのよ。彼らは港の街に来られないから無制限NM戦に挑戦できないってね。運営にメールをしたプレイヤーもそれなりにいるって話」


 運営にメールを出す気持ちも分からんでもないが、今まで運営がそれを見て対応をしてきたことはない。情報クランではHQの装備は強化できないという情報を出せば第2陣の不満も収まるだろうと言う見方をしている。


「自分で使っている感覚だとHQはNQを石3つか4つ強化した感じじゃないかな」


 トミーが言った。俺を含めた他のメンバーも同じ感覚だ。HQ装備といっても山辺の街の次の街で強化を完了したNQの装備よりも落ちるということになる。


「HQ装備は元々NM戦の戦利品だ。3つ目の街に到達し、NQを強化した後で店売りして現金化するプレイヤーが多く出るだろう」


 俺の上忍の装備もそうなるだろうな。2,000万で買って、それを1,600万で売ることになるだろうけど惜しいとは思わないよ。強化するまでの間、HQの装備で助けられるだろうから。


「そう言うことでタクも私たちと一緒に行かない?」


 突然クラリアが話を振ってきたよ。


「えっ?俺?」


「タクが取ってきた情報だ。それに黒の神魂石の検証もしてみたい」


 トミーが続けて言ってきた。


「ここは主の出番なのです」


「ガウ」


 従魔達は見なくても皆行く気満々なのが伝わってくる。

 レベル85の俺が彼らと一緒に行くことになっちゃったよ。



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